2019「国立奥多摩物語～10月のオーロラ～」ごあいさつ

「国立奥多摩物語～10月のオーロラ～」

 

●会期：2019年
10月5日・6日・12日・13日・14日・19日・20日・26日・27日
（12～20時）
●会場：〒198-0171　東京都青梅市二俣尾5－157
●参加作家：永畑智大・和田昌宏

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ごあいさつ：

何時、何処で、何を見て、何を思い、何を心に留め、何を成そうと生きるのか。「何か」と「何か」が出会い、その間に意味や関係を見出した時、そこにはいつも「物語」が生まれている。全ての人間は、自分が見聞きし出会ってきた物事を背後に抱え、日々様々な「物語」を紡ぎ、その中で生きている。そして、それらの小さな「物語」は、泡の如く刹那的に生まれては消えてを繰り返している。しかし、この世界には、その儚い泡のような「物語」を意識的に留め集め、他者と共有しようと試みる人達がいる。そこで用いられる「術」こそが「美術」なのではないかと私は思っているのだが。さてこのたび「国立奥多摩美術館」では第4回目の展覧会「国立奥多摩物語～10月のオーロラ～」を開催いたします。ここにも、日々自らが出会う「物語」を留め集め共有しようと試みる、和田昌宏・永畑智大という2人がいます。主に和田は映像を用い、永畑は彫刻・漫画を用い。そして今回は、彼らが留めた「物語」をただ見てもらうだけでなく、来てくださる方々と共に、そこでその場で「物語」を作っていきたいと思っています。どんな展覧会になるのか。どんな「物語」が生まれるのか。「オーロラ」を見に行く様な心持で、足をお運び頂けましたらば幸いです。皆さまのご来場を心よりお待ち申し上げております。（佐塚真啓 / 国立奥多摩美術館館長）

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●和田昌宏の紹介

数年前から和田は「映画」を作ろうとしている。「美術作品・映像作品」はいくつも作ってきた和田にとって「映画」とはなんなのか？国立奥多摩美術館では2016年夏「映画とは何か？」をテーマに『国立奥多摩映画館～森の叫び～』を企画した。その時から私は、映画が映画である所以は何処にあるのか、を考えてきた。その中で思い至ったのが、「1人で作らない。1人で見ない。1人で完結しない。」という単純な事だった。そもそも映画が発明された時、映像制作には莫大なコストが掛かり、とうてい1人で作れるような代物ではなかった。だから多くの人間が関わり交わり協力し合い作られ、鑑賞された。しかし今現在、映像は、ポケットの中の物で、だれでもいつでも、1人で制作する事が出来るモノになった。観る事も同じく。そして、そんな風に作られ、見られ、閉じているモノを、そこにはそこの面白さがあると認めつつも、きっと私は「映画」とは言わない。この和田の「映画を作る」という言葉は、1人で粛々と作品を作り続けてきた作家の「今回は１人では作らない、より多くの色々な人と交わり、作品を作り、届ける。」という宣言なのだと私は思っている。和田の「映像作品」を「映画」にするのは、関わってくれる多くの他者なのだと私は確信している。だから今回こんな展覧会を企画したのだ。(佐塚)

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●永畑智大の紹介

永畑の作品を見る時、私はいつも「これらは何処から生まれるのだろうか？」と思う。作品は、作り手である作者の「頭」の中から生まれる、と考えるのが自然だろうか。しかし、彼の作品は、頭で計画を立てるよりも先に、作品を形作る「手」と、その材料である「物」の出会いから始まっている様に思うのだ。手で物を触りながら、動かしながら、形作りながら、その瞬間瞬間を愛でるような。「手」と「物」の出会う物語を、「頭」が愛おしく見守り、作品が生まれてくるとでもいうような、そんな印象を受ける。頭が、手と物の作品が生まれてくる物語を、全肯定している様を私は感じる。「永畑の頭の中はどうなっているのだろうか？永畑の目から見た世界はどう見えるのだろうか？」幸いにも、美術という「術」を使う術者達からは、その答えの断面を見せてもらう事が出来る。１つの作品を見るとは、それが生まれた瞬間の、その人の頭の中と、その目や手を見るに等しい行為なのだ。そして、優れた作品からは、強くそれらを感じる事ができる。私はいつも、そんな全肯定感を感じられる彼の作品を見る事が、大きな喜びである。もしかしたら、きっと私が誰よりも、今回の永畑作品を一堂に会してみれる、この展覧会を楽しみにしているのかもしれない。(佐塚)

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