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「専門分野を深めることが社会貢献につながる」サツダイ生が語るラオスのアグリツーリズム

札幌大学経済学専攻3年の伊藤蓮さんは、日本政府(外務省)が推進する国際交流事業「令和5年度対日理解促進交流プログラム『JENESYS2023』ASEAN諸国の大学生・大学院生派遣プログラム」に選出され、2023年11月14日(火)から21日(火)までの期間、ラオスの首都ビエンチャンを訪問しました。このプログラムでは、伊藤さんを含む日本の大学生・大学院生9名が、ラオス国内の「アグリツーリズム」関連施設の視察や学校交流、ホームステイなどを行い、文化や暮らしについて理解を深めました。

この度、ラオスでの約1週間の滞在を終えた伊藤さんにインタビューし、このプログラムを通して学んだことや今後の抱負などを伺いました。

アグリツーリズムとは
アグリツーリズムは、英語の「Agriculture(農業)」と「Tourism(旅行)」を掛け合わせた造語で、主に農場や農村など自然豊かな場所に滞在し、農業や周囲の環境、生活・文化を体験し、そこに住んでいる人々とその土地ならではの交流を楽しむ余暇スタイルのことを指します。もとはヨーロッパで始まった休暇の過ごし方ですが、近年は地域活性化に貢献する側面にも注目され、日本でも積極的に推進されています。本学経済学専攻でも関連科目として、西村直樹教授による「グリーン・ツーリズム論」が開講されています。


「令和5年度対日理解促進交流プログラム『JENESYS2023』ASEAN諸国の大学生・大学院生派遣プログラム」に申し込んだ理由を教えてください

このプログラムのことは、当初学校のアイトス配信(札幌大学の総合学生支援システム)で知りましたが、日本の中でもわずかな人数しか選ばれないということで「難しそうだな」と半ば諦めていて。そんな時に武者先生から「外国に関心があるなら応募したら」と改めてお知らせいただき、チャレンジしてみようと思いました。直前に武者先生の「旅行業界演習」の一環で海外のクルーズ船に乗船し、海外の方と交流した経験も後押しとなりました。

このプログラムは、日本とASEAN諸国とのつながりをより強固なものにする目的で行われています。我々日本の学生とASEAN諸国の学生が一緒に学んだり文化交流したりしながら、互いの国についての理解を深めます。私が参加した「アグリツーリズム」プログラムの他にも、SDGsや剣道などの多彩なテーマ設定があり、さらに訪問する国もラオスだけでなくさまざまでした。私は経済学を専攻しているのでテーマとしてはアグリツーリズムが最適だと思い、このプログラムに応募しました。

選考から派遣まではどのように過ごしましたか?

まず書類選考があり、志望動機や滞在中の過ごし方、滞在後の展望などについてレポートを提出しました。滞在中のプログラムは決まっていましたので、それらの項目を自分の中でどう深めて学びにつなげていくか、またそういった体験をどのように発信していくかという観点を問われました。

その後このプログラムの企画と運営を担当しているJICE(一般財団法人日本国際協力センター)の職員の方とオンライン面接がありました。私は経済学専攻で、これまでツーリズムを主軸に学んできました。面接では「経済的な観点からアグリツーリズムを研究したい」と伝え、そのやる気を評価していただいたのかなと感じます。また、わずかな時間でしたが面接官の方と意気投合してとても仲良くなりました。人とのつながりを大切にできるという点で、私の気さくさも選考にプラスに影響したのかもしれません。

無事選出された後は、オンラインでのプレプログラムに参加し、ラオスの文化や経済状況などについて一緒に渡航する8名の学生たちと学びました。プレプログラムは数週間おきに3回実施がありました。ラオスについてのレクチャーを受けるだけでなく、現地で自分たちが行うプレゼンテーションの準備も行いました。プレプログラムと次のプレプログラムの間に、情報を集めたりまとめたりしなければならず、プレゼンテーションを一緒に担当した他大学の学生の方とリモートでやり取りしながらなんとか完成させました。おかげでその方と渡航日に成田空港で初めて会った時にはお互いすっかり打ち解けていました。

私はこのプログラムに参加する前は、経済学専攻の食・観光プログラムを受講し、北海道のDMOである小樽観光協会を取材するなど観光全般について学んでいたものの、アグリツーリズムについてはとくに知識はありませんでした。このプレプログラムを通して日本の農業の課題や将来性などについて考える時間を持つことができ、さらにラオスと日本の共通点として米の重要性について気が付くことができました。また、プレプログラムでは、ラオスの宗教や伝統料理などについても知ることができ、事前知識として大変有難かったです。

ラオスではどのように過ごしましたか?

前半は、在ラオス日本国大使館やラオス青年同盟への表敬訪問、ラオス国立大学などへの学校訪問、独立行政法人国際協力機構(JICA)ラオス事務所での講義など、忙しく過ごしました。ラオス国立大学では、プレプログラムで準備していたプレゼンテーションの発表を行いました。日本の農業の歴史やこだわりについて説明した後、ラオスと日本の農業の共通点である「米」に着目し、日本における米農家の課題やツーリズムとの組み合わせによる解決策についての提案を行いました。

プレゼンテーションは図やイラストなどを多く用いたり、日本の米や米菓子の実食体験も織り交ぜたりと、ラオスの方々に興味を持っていただけるように工夫しました。同じ米でも、ラオスの主食はもち米なので、日本のうるち米とは異なる食文化があります。このプレゼンテーションを通して、日本の米食文化の魅力を伝えることができたかなと思います。

後半は、農園の視察やホームステイなどを体験し、最終日に報告会を行いました。私たち9人は、①日本とラオスの関係を深め②ラオスで学んだこと(アグリツーリズム)を発信するという二つの目標に向けてのアクションプランをまとめ、それぞれがラオスと日本との懸け橋になれるような活動を行うこととしました。例えば、SNSでの日本語のレッスンを行ったり、国内のラオス文化交流イベントへ参加したりすることなどを予定しています。また、今回海外で過ごす時間を通して改めて日本を見つめなおすことができましたので、ラオスで学んだことに加えて自分が感じた日本の魅力についても発信していきたいと考えています。

今回のプログラムの中でとくに印象に残っていることは?

テーマであるアグリツーリズムからは離れてしまいますが、やはりホームステイでラオスの日常生活を体験できたことです。ホームステイ先のご夫婦と息子さんはとても温かく受け入れてくださり、日本語や日本文化に対してもたくさんの興味や関心を寄せていただきました。とくに18歳の息子さんは同じプログラムで日本へ渡航した経験を持っていたので、年齢が近いこともあり、日本語や英語でたくさん話しました。一日限りのホームステイでしたが、ブッダパークなどの観光スポットへ連れて行ってもらったり、リュウガンというラオスの珍しいフルーツを食べさせてもらったり、またラオス式の盛大な結婚式にお招きいただいたりと、本当にたくさんの経験をさせていただきました。

ラオスにはフランス植民地時代の名残があり、街中にはフランス風のカフェも多く見られました。またタイやベトナムなどの隣国の影響も強いらしく、お土産屋さんに行ってもタイのものばかり。ラオスのお土産を探すのが大変でした。想像していたラオスとは異なる一面を見ることができたことも良い学びになりました。

今後の抱負をお聞かせください

今回のプログラムを通して、まずはラオスが大好きになりました。ラオスはまだまだ経済発展の途上にありますが、素晴らしい伝統や独特の魅力的な街並みを持つ国です。そこの農業政策について学んだり視察したりしたことで、途上国の秘める可能性を目の当たりにし、今後自分の専攻分野を深めていく上でとても大きなモチベーションになりました。

また、一緒にこのプログラムに参加したメンバーにも影響を受けました。日本各地の大学や大学院から集まったメンバーでしたが、地域性だけでなく専門分野やバックグラウンドも異なる中で一致団結してプレゼンテーションを行ったことはとても意義深く楽しかったです。私の専門である経済学という分野で今後きちんと成果を出し、将来的に彼らのような素晴らしい人たちと一緒に大きなプロジェクトにチャレンジしたいという夢ができました。

さらに、語学の習得にも励んでいます。ラオスから帰国後、英検(実用英語技能検定)の準1級にチャレンジし、無事合格することができました。今は1級取得を目指しています。

秋田県にある私の祖母の家は米農家です。子供たちの農業体験など(アグリツーリズムと言えるほどの規模ではありませんが)訪れる人たちに農業の魅力を伝える活動を行っていました。今回アグリツーリズムについて知識を深めたので、第一次産業の現場とツーリズムをつなげることに面白さを感じるようになりました。自分の専門分野である経済学の観点から地元に貢献できるような活動も将来的にできたら良いなと意識するようになりました。

一般財団法人日本国際協力センター(JICE)国際交流プログラムについて


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