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【わたしと藻嶺#10 橋堀悠杜さん】

氏名:橋堀悠杜(はしぼりゆうと)
職業:市立札幌清田高等学校英語科教諭(2023年6月現在)
卒業年:2021年
学群・専攻:地域共創学群・英語専攻


プロフィール

▲英語科教諭 橋堀悠杜さん

北海道有珠郡壮瞥町出身。中学生の時にフィンランド・ケミヤルヴィ市へ公費で渡航(壮瞥町の友好都市交流事業の一環として行われたもの)。大学3年次にイギリスのロンドンでの短期語学研修に参加。2021年度より市立札幌清田高等学校の英語科教諭として勤務する。

札幌大学在学中の思い出

Q:どんな学生でしたか?とくに心に残っていることなどがあれば教えてください。

予習・授業・復習の三本立てで英語学習を究めた学生時代

高校時代に英検を取るなど英語は得意だったので「英語では負けない!」という気持ちとともにサツダイへ。しかし、同期に帰国子女の学生が一人と、帰国子女ではないけれど私よりかなり英語が得意な学生がいて、入学早々、鼻柱を思いっきりへし折られました。「二番手はあり得ない」という闘争心で基礎から英語を勉強し直しました。

幸い先生方に恵まれました。とくに英語科の佐藤美希先生には大変お世話になりました。よく「君たちには難しいと思うけど」と言いつつ、私たちが理解できるギリギリより少し上くらいのレベルの問いを投げかけて下さいました。ここでもまた闘争心を刺激されましたね(先生の思うつぼだったのかもしれません)。その分、褒める時はしっかり褒めてくださいました。高校での指導経験をお持ちの先生なので、実際の教育現場でのお話もたくさん聞かせてくれました。

そうして私は(佐藤先生曰く)「大学4年間で英語オタクと化したサツダイでは珍しい学生の一人」となりました。実際は「英語オタク」なんてまだまだ言えませんが。今も日々勉強中です。

オールイングリッシュで挑んだロンドン語学研修

大学3年生の夏季休暇を利用し、イギリス・ロンドンでの短期語学研修に参加しました。たった二週間の研修でしたが、間違いなく私の大学生活の中で一番楽しかった思い出です。

▲テムズ川の風景

平日は現地の語学学校に通い、年齢も国籍も異なる学生と一緒に英語を学びました。土日はフリー。とにかく現地の人たちにたくさん話しかけました。テムズ川の川辺に座っている人、ボートを漕いでいる人、街中を歩いている人など。初めて見る景色ばかりだったので、じっくり観察して日本との違いを確認したりしていました。

▲歴史を感じるロンドン塔

私の目的は二つありました。まずは自分の英語力を試すこと。研修中は日本語を使わないと決め、現地の方とのコミュニケーションはもちろん、一緒に行った学生や先生にも英語で話していました。語学学校でも積極的に手をあげ「日本人なのに珍しい」と言われました(笑)。

二つ目は、海外での英語教育についての知見を深めること。語学学校に通う日本人以外の学生たちにアンケート調査を行い、彼らがどのように英語を学んできたのかを調べました。この結果は、帰国後レポートにまとめました。驚いたのは、公教育で英語を学んでいないという学生が一定数いたこと(しかし、彼らは文法が間違っていても伝えようとする意欲が強いので、どうにかしてコミュニケーションが取れているのです)。また、20代より上の年代の方であっても留学にチャレンジする姿に感銘を受けました。

日本人は小・中・高と公教育で英語を学ぶのに、英語に対して苦手意識を持つ人がとても多いですよね。語学研修とその後のレポート作成を通し「公教育で英語を学んでいない国の人々よりも、公教育で英語を学ぶ日本人の方が話せないのはなぜか」という問いが生まれ、それが「日本の英語教育はこのままで良いのだろうか」という疑問へと膨らんでいきました。

キャリアについて

Q:大学を卒業されてから現在までのご経歴や、現在のお仕事の具体的な内容を教えてください。

橋堀流の英語指導法

▲現在勤務される市立札幌清田高等学校にてお話を伺いました

まず、英語に対する苦手意識を減らし、間違えることの大切さを教えるようにしています。教員として働くようになって今年で3年目ですが、ロンドン語学研修で感じた疑問はその後もずっと自分の中にあったので、生徒には「間違えていいからまず声に出したり、書いたりしてみなさい」と言い続けています。

また、とにかく英語に触れる時間を多く作ることが大事だと思います。生徒には「1日15分でいいから英語に触れる時間を作って」と言います。授業中は、教科書の音読にはじまり、コミュニケーションゲームなどを取り入れながら生徒にたくさん喋らせます。

アクティブラーニングも心がけています。一方的な指導ではなく、生徒同士が話し合う中でひらめくものを大切にしています。私はというと、教室中をひたすら歩き回り、生徒の様子を観察し、必要な時にヒントを出します。そもそも私が教員を志すようになったのは、高校の時、同級生に勉強を教えたことがきっかけです。その友人から「教えてもらってよくわかった」「ありがとう」と言われたことがとても嬉しかったのです。人は他人に説明できるようになって初めて本当に理解していると言えます。私自身もそうでしたから。

ICT時代の英語教育、変わったこと、変わらないこと

この学校は各教室にスクリーンとプロジェクターが設置されているので、私は黒板ではなくスクリーンを使います。板書の時に生徒に背を向ける時間が惜しくて。iPadとプロジェクターを無線でつないで授業する今のスタイルだと、教室内のどこにいても手元で書き込めますし、スライドを使ったプレゼンテーションもできます。生徒の活動を見たり生徒と対話したりする時間は格段に増えましたし、iPadなどのICT機器を使うと教材研究も効率化できる点は時代の恩恵ですね。

一方で、単語を覚えたり書き取りをしたり、昔ながらのスタイルで英語学習を進める部分ももちろんあります。ただ、一人一台端末環境があるので、分からない単語は辞書ではなくクロームブックで調べる生徒が多いですね。私個人の意見ですが、あまりICT機器ばかりを使うのではなく、辞書や参考書の良さも取り入れながら学んでほしいと思っています。

札幌大学の後輩に向けたメッセージ

Q:札幌大学の後輩や同窓生に向けてメッセージをお願いします。

学校に行こう、授業に出よう

私は、第一・第二志望の大学から合格をもらえず、第三志望でサツダイに入学しました。高校時代の恩師から「お前が大学を選ぶわけじゃない。最終的に大学側がおまえを選ぶわけだから選んでくれたところに行きなさい。そこがお前の運命だよ」と背中を押してもらい、4年間一生懸命頑張りました。今では自分を最大限引き上げてくれた大学だったと思いますし、こうして卒業後も声をかけて下さり、先輩後輩や先生方、職員の皆さんと繋がれていることに感謝しています。

自分が置かれた環境で精いっぱい努力し、そこで何を得られるかが大事です。今大学に通う皆さんへのメッセージとしては、シンプルに「学校に行き、授業に出なさい」ということ。そのためには、生活習慣を崩すようなアルバイトはおすすめできません。授業に集中しましょう。勉強が大変なら、先生に頼りましょう。色々なことに疑問を持ち、自分の好きな学問を究めてください。

教職課程で学ぶ学生さんへ

学校の先生は大変やりがいのあるおすすめの職業です。「なりたい」と思っているなら絶対なった方が良いです。ただし、「なんとなく役に立ちそうだから」と資格だけを取るという方にはおすすめしません。

先生になるには、教科を教えたいという覚悟と子供の未来に対しての責任が必要です。世間で言われるように、教育問題の多様化や長時間労働など、教職には大変なことも多々あります。しかし社会人は大変で当たり前。大変さと向き合い、自分の至らない点は改善しようと努力を続けることが大切だと思っています。そのために必要なのは、めげない精神と探究心です。その二つがあれば、時代がどれだけ動いたとしても十分対応できるでしょう。

個人的には、専門科目や指導法についての勉強だけでなく、教育そのものの制度や歴史、評価法などについてもっと勉強しておけば良かったと後悔しています。今知識不足で苦労しているので。学生の頃はあまり実感がなく興味を持てませんでしたが、現場では必要な知識です。今教職課程で学ぶ方には「将来役立つからしっかり勉強した方が良いよ」と伝えたいです。

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