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新刊『ウジョとソナ 独立運動家夫婦の子育て日記』についてご紹介します。

7月15日発売。里山社では初めてとなる韓国の翻訳書です。

「国や民族の幸福のために努力しながらも、けっしてそのために個を犠牲にしてはならない。全体は個でなりたつが、個なくしては全体はない」

本書の原作である日記を綴った、ヤン・ウジョが遺した言葉です。すべての時代の、すべての国の人に響く言葉ではないかと思います。
いつの世もどの国にも普遍な、親子の話です。
それでいて、アジアの中の日本の存在がしっかりと描かれている本です。

時は1930-40年代。祖国・韓国は日本の植民地下。この本の主人公は、独立を夢見て中国に亡命した大韓民国臨時政府夫妻、ウジョとソナ。そしてその娘のジェシーです。夫婦が中国に渡ってすぐに、日本は中国大陸に戦争を仕掛け、日中戦争に突入します。

本書は、彼らが我が子の成長と、日常となってしまった戦火の日々を綴った実際の日記をもとに、グラフィックノベル化した本です。植民地下の韓国からの独立のため活動していた、日本ではあまり知られていない人々の存在が生き生きと描かれています。

私たちが子供のころ、学校で教えられた「戦後の平和教育」は、「二度とこのような悲劇を繰り返してはならない」と、当時の日本の被害を説いてきました。それはもちろん大事なことばかりで、私もその通りだと感じ、大人になりました。今もその思いは変わりません。

しかし、すっぽり抜け落ちていたのが、外からの視点、つまり、当時、アジアの国々へ日本がしてきた数々のことででした。この視点が決定的に欠けていること、それが、今の日本にも大きな影を落としている気がしてなりません。「外からの日本」を知るためにも、韓国の本にどんなふうに日本が登場するのか、それはとても大切なことのような気がします。

里山社ではこれから、あらゆる角度から「外からの視点」から現在の日本の私たちの生活を見つめなおす、そんな本を出していきたいと考えています。


本書は、2018年、ソウル図書館が選ぶ「今年の10冊」、そして2019年、韓国の文化庁にあたる省庁が、「優秀文化商品」として選出されました。

この本を読んだとき、日本人の戦争の記憶について、生活者の視点から描いた映画『この世界の片隅に』を観たときと近いものを感じました。思い切って片渕監督に帯コメントをお願いしたところ、とても真剣に読んでいただき、素敵なお言葉を頂戴しました。本国の出版社の方も感激していました。

片渕監督のコメントと共に、表紙をご紹介します。

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本書の一部をこちらに公開します。ぜひ、読んでみてください。

とにかく、こども、カワイイのです…。まずはそんなところから、この本に興味をもっていただけたら嬉しいです。