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私の魔女修業~1~

 4年前、地域おこしの一環として「里山の魔女ルカ」というグループを立ち上げた。魔女のルカさんではない。マジョルカなのだ。某化粧品会社に「マジョリカ・マジョルカ」というブランドがあるが、ここからいただいた。見る人を引き付けてやまない魔法の力。それこそがまちづくりには必要であると感じ、地域に魔法をかけてみんなを元気にしたいと思ったのだった。おかげさまでこのアイデアはみんなにウケて、地元では初めてのマルシェを開催することとなったのだが、それはまたの機会においといて・・

 魔女を名乗る以上は魔女らしきことをせねばならない。かといってホウキに乗って飛ぶこともできないし、呪文を唱えることもできない。だが、待てよ。魔女というのは薬草を用いていろいろな薬をつくることができる。薬はつくれないけど、薬草・・草なら周りにいっぱいある。雑草と呼ばれ、いなかでは忌み嫌われているものだ。しかし、この雑草がみんなの役に立つものになったらとても素敵ではないか!そんなふうなことを考えていた時、ヨモギのバームをつくろうというワークショップが岐阜市で行われることを知り、参加した。詳しい作り方は忘れてしまったが、確かにヨモギを使ってバームは完成した。断っておくが、バームとはバームクーヘンではない。軟膏のことである。女性にとっては最大の関心事ともいえる基礎化粧品。これまで化粧品とは買うもので、自分でつくれると思ったことはなかった。それができる!と分かった時、魔女修業への道は始まったのである。

 薬機法(旧薬事法)という法律がある。正しくは、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」という。化粧品やせっけんの製造・販売に関してはこの法律をクリアしなければならないし、美容等に関する広告に関しても使ってはいけない用語などがある。まず、効果をうたってはいけないし、よく目にするbefore/afterの写真などはNGである。すなわち薬事法をクリアしなければ、自分でつくった化粧品などは販売できないのだ。私のはあくまで自分でつくって自分で使うためのものである。

 3月になり暖かくなると、それまでロゼッタ状になって地面にへばりついていた草たちはがぜん勢いを増す。ツクシ、オオイヌノフグリ、ナズナ、タンポポ、カキドオシ、スミレ、そのほか名も知らない草たちがいつのまにか芽を出し、庭を覆う。そして初夏、田んぼでカエルたちがゲコゲコ鳴き出すころには真っ白なドクダミの花が咲き始める。

 ドクダミというかわいそうな名前を与えられたこの野草は別名十薬ともいう。昔から一種類で十もの薬効があるといわれているからだ。花が咲く時期になると全草を収穫して洗って陰干しにしたものを煎じて飲むのがドクダミ茶だ。ドクダミは生葉の時は強烈な匂いがして、とても臭い。しかし、乾燥させると匂いはほとんど気にならなくなる。古代に中国から渡って来たらしいが、虫刺されや虫よけ、できものやニキビなど肌の炎症を抑える効果があるとされ、盛んに民間薬として利用されてきた。漢方の生薬でもある。余談だが、子どもたちが学校に行っているころ、夏休みの宿題でドクダミを採って干して学校に持っていくという宿題があった。どこかの漢方屋がドクダミを買い付けてくれたそうで、学校は生徒たちが集めてきたドクダミを売って得たお金で、卒業式の時に歌う歌のCD作成費用に充てていたようだ。

 ドクダミはとにかく繁殖力が旺盛で、ほかの草花を駆逐してしまうからとかく嫌われものだ。ほっておくと、庭中ドクダミだらけになりかねない。しかし、血液浄化作用やデトックス、利尿作用、解熱効果などのほか美肌効果(ここ大事!特に女性は)も期待できるとされ、いろいろな薬の原料にもなっている。他にもチンキというものをつくることができる。ドクダミの真白な花だけを摘み取り、ホワイトリカーにつける。アルコール度数高めのもののほうが良いそうだ。高濃度のアルコールに漬けることで水では溶けださないドクダミの成分がアルコールの中に溶けだす。要するにドクダミ酒だ。本来はティンクチャ―という。

 チンキは薄めて化粧品にもできるし、入浴剤としてお風呂にいれることもできる。いちおう酒なので、経口摂取することもできるが、私はまだドクダミ酒を飲んだことはない。人によって肌に合う、合わないがあるようなので、使う場合は最初にパッチテストをした方が良い。

 すでに去年つくった一年もののドクダミチンキはティートゥリーやユーカリなどのアロマオイルを入れて虫よけのルームスプレーとして使っている。ただ服にはかけないように注意したほうがいい。漬け込んで2、3日すると次第に酒が茶色になってくるのでうっかり服にかけようものなら色がついてしまうからだ。

 今年はラベンダーとヘビイチゴ、ユキノシタ、タイム、そしてローズマリーをすでに漬けた。ラベンダーはリラックス、ヘビイチゴは虫刺され、ユキノシタはメラニンを抑制する作用があるようだ。ローズマリーはアンチエイジングとして有名なハンガリアンウォーターの原料である。すでにずいぶん色が変わってきているので、成分がしみだしているのがわかる。そのうち、化粧水とバームをつくりたい。

 コロナは怖いし、自粛生活も大変だが、思考する時間と政治について考えることの大切さを教えてくれた。魔女の修業もまだまだ続く。

※チンキを作る前にはビンは煮沸消毒。できれば遮光性のビンの方が良い。




 


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