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木とのはなし

お隣さんの敷地内に幹が太く枝っぷりも良いとても立派な栗の木がある。
立派過ぎて強風や台風の度に、お隣さんは枝が落ちてくるんじゃないかヒヤヒヤしてしまっている。
たまらず、山仕事を生業としているたっちゃん(夫)に「伐っちゃってください。」とお願いをした。

ある春先の週末、
ブォ〜〜〜ン!!というチェーンソーの大きな音、
そして、
ミシッメリメリメリ、、、ドッドォ〜〜〜ンっと、栗の木が倒れた。

倒れた後、枝を揃えて土手の邪魔にならないところに処理するのは私の仕事。木が大きいほど、枝っぷりが良いほど枝の処理には時間がかかる。黙々とあばれる枝と格闘しながら、揃えては運びを繰り返した。
「ふぅ〜〜!のどが渇いてきたな〜そろそろ休憩しよう。」と休む場所を探す。ふと、目に入ったのは倒した栗の木の切り株。

「あそこに座りたい!」

座ってみると、座り心地良く思っていた以上に大きな切り株だった。
「何才の木だろう?」と気になる。たっちゃんが、年輪の輪を内側から「1、2、3、、、、」と数える。
「32!32才だよ。」

私:「32才、まだ若いね。でも本当に凛々しい立派な栗の木だったね。」

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林業を生業としている夫を持つと、たまにご近所から「倒れそうな木があるから伐ってくださいな。」とお願いをされる。
土手の斜面に覆い被さるように生えた木、茶畑の中に生えたカシの木、母屋の真上に生えたヒノキ。
私は枝処理要員でお手伝いするたびにたっちゃんにあらゆる木について教わる。

カシの木は硬いから、ナタやクワなどの道具の柄に使われているんだよ。
クスノキには樟脳(ショウノウ)が含まれていて、防虫効果があるんだ。ほれ、匂い嗅いでごらん。
栗の木は腐りにくいから昔は家の土台に使われていたんだ。

木一つ一つの特性を聞くたびに、「ヘぇ〜ほほぉ〜〜!」と感心してしまう。

春から夏にかけ、木は地中から水分を吸い上げるので木によっては、切った後水が染み出てくる。太いツルを切った時、水がドボドボとしたたり落ちた。
「おぉ〜すごい!木々は、地中からこんなにも水を吸い上げているんだね。」
とその時期、木が地中から水を吸い上げる力に感動をした。

季節とともに自然は循環している。と、改めて思い知らされる。

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里山での暮らしや木のお手伝いをしていく中で、自分と「木」の存在が近くなって行き、「木」がどんどん好きになっていった。

旅先でたまに数百年、数千年という樹齢の巨木に出会う時がある。
レッドウッド国立公園のジャイアントセコイアの森、ハワイのボタニカルパークの恐竜の足のような巨木、戸隠神社の杉林、そして、何にも載っていない、ふと、生えている巨木。
規格外の巨木の大きさに圧倒され、見とれながら気が遠くなるような永い時間をこの巨木はここに居続け、世の中を見てきたんだな〜と思う。
「数百年前の時代はどんな時代だったのかな?」その巨木がなが〜いストーリーを語ってくれているようでロマンを感じてしまう。

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我が家の裏山は、さすがに何百年という巨木の森ではない。けれど、一本一本の木々は種類も大きさも生え方も違う。この杉、ヒノキ、カシ、シイ、竹、クワの木、と毎回挨拶するように木々の存在を感じながら山歩きをする。

めぐる季節の中で、木々たちの違う表情を見ながらの山歩き。

そんな山歩きの時間が私はとってもとっても好きなのです。

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