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其の六【わたしと落語と】落語会

毎日興行している寄席の定席とは違って、ライブや演劇公演のようにあらかじめ決まった演者・場所・日程で行われるものを「落語会」と呼んでいる(と思う)。大きなホールからカフェやレストランまでその規模はさまざま。落語というのはミニマムな芸で、高座(敷物をしいた台)と座布団があれば小さな会場でもできてしまう。小規模な会場の良さはなんといっても噺家さんとの距離の近さだと思う。細かな表情、息づかい、会場のすみずみまで通る声、大きなホールでは味わえない臨場感がある。そういう良さもある一方、本来想定されていない場所に呼ばれる噺家さんの方は何かとご苦労があるらしい。しかし、客側としても寄席や大きなホールで聞くのとは違った困りごとがあるのだ。

小さい会場では自由席であることが多い。少しでも近くで観ようと最前列に座ってしまったことがある。そうすると長い噺の途中で集中が途切れたときに……困る。なぜって演者側からこちらが見えてしまうから!相手はプロなので視線が合うことはないが、視界には入っていると思われるので「聴いてますよ、楽しんでますよ」というポーズを一瞬たりとも崩せない。落語を観に行っているつもりなのに「見られているかも」という過剰な自意識と戦って疲れてしまうのです。

Twitterにて連載している『わたしと落語と』のシリーズをテキストつきで掲載しています。Twitterは毎週水曜日の朝に更新しています。ぜひチェックしてみてくださいね!


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