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詩:ビリー・ジャクスン


あれ、あの星。
あれってビリー・ジャクスンっていうのよ。



――へえ。

でも、ほんとはね、
なんとか座の、これまたなんとか星っていうらしいの。

――ん? なんだそれ

むかし読んだ小説にそう書いてあったの。
あの星はなんとか座の、
これまたなんとか星なんだけど、
その話の主人公は
それをビリー・ジャクスンって呼んでるって。

――それって女だろ?

わかる?
ま、そんなこと言いだすのは女の子よね。
実際はどうかわからないけど
小説ではそうだわ。

でも、私、
その話あまりよく憶えてないのよ。

ただ、
薄暗い、井戸の底みたいな部屋に
その女の子は住んでるの。

天窓があって、
彼女はいつもそこから
ビリー・ジャクスンを見てるの。

その子はね、
貧乏だけど、すごく素敵な子なの。
まあ、
主人公ってそういうもんでしょ。

ただ本当に貧乏なの。
悲しくなるくらいにね。

それでね、
その子は病気になっちゃうの。

ううん、違ったかな?
でも、まあ、倒れちゃうのよ。

――それでどうなるんだ?

言ったでしょ?
私、その話ちゃんとは憶えてないのよ。
ただ、
なんとか星をビリー・ジャクスンって呼んでる
貧乏な女の子の話としか。

でも、思い浮かべてみて。

真っ暗な部屋の中で
ギシギシいうベッドに身体を横たえて
天窓を見上げている女の子を。

部屋は薄汚いわ。
鼠とかもいるかもしれない。
そんな中で、
彼女は天窓から空を見ているの。

星を探してるの。
ビリー・ジャクスンをよ。

たくさんある星の中から、
その子は
ビリー・ジャクスンだけは
見つけ出すことができるの。

私が憶えてるのはそれだけ。

結末なんて知らないし、
知る必要もないわ。

だって、
けっきょくはお話なんだもの。

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