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つまり、佐藤の本棚。

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今まで読んできた本にまつわる「記憶」の記録です。
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2017年3月の記事一覧

読書の記憶 五十二冊目 「心理試験 江戸川乱歩」

子供のころになりたかった職業のひとつが「スパイ」だった。なぜ、この職業に魅力を感じのかというと簡単で、家にあった「スパイのすべて」のような、子供向けの本を読んだからである。 その当時の僕がスパイに抱いていたイメージといえば「暗闇の中で、裏から世の中を動かす」とか「誰にも読めない暗号などを解読し分析する」というものだったと思う。とりあえず当時から、表舞台ではなく裏で静かに活動することに関心があったことがわかる。 つづきを読む(無料)五十二冊目 「心理試験 江戸川乱歩」

読書の記憶 五十一冊目 「あしながおじさん ジーン・ウェブスター」

手紙を書くのは時間がかかる。ああでもない、こうでもない、と考えてようやく書き上げる。それでも、最近はメールになったから、だいぶ楽になった。 手書きの時などは、一時間くらいかけてコツコツと書き終わったと思ったところ、誤字に気がついて最初から書き直すことになったり、これでは字が下手すぎるもう一度ていねいに書き直そう、なんてこともあった。書き直しで疲れてしまって、手紙を書くのを諦めてしまったこともあったと思う。 そんな風にして、数時間かけて書いた手紙も読むのは数分だ。 つづき

読書の記憶 五十冊目 「風の又三郎 宮澤賢治」

小学校2年生の時に「転校生」になったことがある。親の仕事の都合だった。その時は、特に嫌だという感情はなかった。ある日「引っ越しをする」と親に言われ、気がついたら別の小学校に通うことになっていた、という程度の記憶しかない。いや、その時の担任の先生が苦手な感じの先生だったので、むしろ好ましく思っていた部分もあったかもしれない。 転校初日。職員室で新しい担任の先生に挨拶をした。「今から一緒に教室へ行きますよ。みんなの前で挨拶をしてもらうから、元気にね」と、いうようなことを言われた

読書の記憶 四十九冊目 「ライ麦畑でつかまえて J・D・サリンジャー」

大学受験生だった時の話。友人達と、受験の際に提出する「自己紹介」について考えていた時のこと。S(仮名)が「愛読書の欄には『ライ麦畑でつかまえて』と書いておくといいらしい」と口にした。なぜ、と誰かが質問した。Sは「誰でも知っている『青春小説』で、やや個性的な印象をアピールできるから」と答えた。 その時、僕はまだ本書を読んでいなかったので、ああ確かに、と思った。「ライ麦畑でつかまえて」というタイトルの印象から、さわやかな青春小説だと思っていたからだ。たぶん、そこにいた他の友人達