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僕がプロレスにハマるまで(4)[黄金の恋人編]

今、プロレスが再ブームでプ女子なる者たちが会場に溢れているらしい。

平成も終わりに差し掛かる春にそれは僕の耳に入ってきました。
あー、あれね、刀○女子とかそーいうのね、うん、いいと思うよ!
事態を軽くみていた僕のところにその波が訪れるのはそう遅くありませんでした。

「大阪城ホールに新日本プロレス観に行ってくる」

殿方の裸体を拝みたいというハレンチ極まりない知り合いの女性グループによりそれは決行されようとしていました。

当時僕が知っている現役選手といえば、ライガー、天山、名前だけ知っている棚橋。
そしてもう1人、一度も試合を見たことないけど気になってる選手がいました。
テレビゲームの魔界村を十数時間遊びすぎて腱鞘炎になったというアウトな男、飯伏幸太。
そんな彼から大航海時代を11時間ぶっつ続けで遊んだことのある僕がシンパシーを感じるのは当然でした。
あたしおっさんだけど、女じゃなくても胸に埋まりたいと思えるその肉体美にも惚れ込んでいました。

僕男子「飯伏、棚橋、天山、ライガー出るの?」
プ女子「知らね」
僕男子「観たら絶対感想聞かせてね」
プ女子「あい」

当時僕は現地観戦には行ったことがなかったのですが、プロレスからだいぶ遠ざかってたこともあり感想を聞かせてもらえば満足だろうくらいにしか考えていませんでした。浅はかでした。

ゴールデンラヴァーズ vs ヤングバックス

しかし運命の日はその数日後にやってきました。
プ女子「今、Abema TVで新日本プロレスやってるってよ」

もしかしたらこの時、十数年ぶりに観たのが偶然この試合でなければ、もしかしたらプロレスにハマるどころか、大枚叩いてタレントやアイドルを追いかける人たちの気持ちを理解することは一生無かったかもしれません。

ゴールデンラヴァーズ( ケニー・オメガ 、飯伏幸太)
vs
ヤングバックス(マット・ジャクソン、ニック・ジャクソン)

それがこの試合でした。

この中で知っているのは飯伏幸太のみ。
それどころか試合しているところを見るのも初めて。
あとの3人も外国人レスラーでさっぱりだったのですが、それはゴングと同時に杞憂に終わりました。
試合が始まってすぐにアクロバティックな技の掛け合いが始まり「プロレスってこんなに進化したんだ!」と感心。
コーナーからムーンサルト、トップロープからトペコンヒーロー、アクロバティックな合体技。
ライガーが出てきたころの軽量級の選手しかやらなかったような技を重量級のこの4人は試合開始直後からバンバン繰り出していました。

ストーリー性の進化。

そして何よりも惹きつけられたのが前述の技を魅せる部分だけではなくストーリー性の進化

この試合はバレットクラブというヒールユニットでの内紛ストーリーの一幕で、もともと同じユニット内で仲の良かったケニーとマットが内紛のどさくさで仲違いしてしまい、孤立してしまったケニーの元に旧来の親友、飯伏幸太が駆けつけ、タッグマッチで白黒つけよう!という、某友情・努力・勝利のテーマに勝るとも劣らないストーリー展開なのです。

それは試合後半に起きました。
ヤングバックスを追い詰めたゴールデンラヴァーズ。
ケニーオメガがフィニッシュ技である【片翼の天使】をマットジャクソンに決める体制に入ります。
あとはマットジャクソンをリングに叩きつけるだけ。
しかし、ケニーの動きが止まります。
「くっ…友達にこんな事はできない…!!」
ケニーの一瞬のためらいで【片翼の天使】は失敗に終わります。
駆けつけた飯伏幸太が戦意を失いかけているケニーオメガの体を揺さぶり訴えかけます。
「ケニー!【片翼の天使】を決めるんだ!やらなきゃいけないんだよ!」

とまあセリフはたぶんに想像に頼る部分が多いのですが、こんなドラマティックなストーリーがリングという舞台の上で繰り広げられていたのです。

僕は一瞬、格闘技を見せられてるのか演劇を見せられてるのか不思議な感情になると同時にこう叫びました(実際に叫んだ)。
そのどちらでもなくどちらでもある、
「これがプロレスだ!」と。

<つづく>

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