矛盾の宇宙

自分が自分として生きていくことの、なんと不幸なことか。皆が右側を歩く中、ひとり逆であることのなんと心許ないことか。

もはや遺伝子がそれを恐るるがごとく、私を慄かしむる恐怖!
孤独!背は冷え、耳は熱くなり、筋肉は、内臓はギユッと収縮し、石のようである。そして粘ついた汗が出る。

それだというのに、なんたること!私は人と同じである事を何より嫌っているではないか!

どこまでも我儘な俺よ。エゴよ。馬鹿め!お前はなんと浅ましいやつだ!

ああ染まりたい。人と同じでいたい。ああ嫌だ、誰があんな愚鈍な奴等と同じだというのか。

世に矛盾満ちたりといえども、何といって私たちの中にある矛盾ほど「正しい矛盾」というのも無かろう。

ある宗教が人の中に宇宙ありと言うは、この余りに大きな正反対の力の衝突が生んだものであろう。矛盾のビッグ・バンが人宇宙の正体に違いない。

さて「私たち」と言ったが、まさか君は、私と違うつもりなどとは言うまいな?

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