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株式投資のリスク(損失)を最小化する投資手法

前回のnoteでは「株式投資はプラスサムのゲームである」というお話をしました。

「経済が成長を続ける限り、株式市場も拡大する」というのが前回のnoteのメッセージでしたが、それでもやはり「損するのは怖い」と思う方は多いと思います。

そこでバリュー投資実践マニュアルの第2回である当noteでは「株式投資のリスク(損失)を最小化する3つの方法」を紹介します。

前回と今回のnoteではバリュー投資を始めるための前提となる基礎知識を解説しています。基礎的な内容ではありますが、投資上級者の方でも新しい気付きはあると思います。

それではさっそく、リスク最小化の手法を見ていきましょう。

リスク最小化の手法①ドルコスト平均法による時間分散

1つ目のリスク最小化の手法は「ドルコスト平均法による時間分散」です。

「なんだよ、ドルコスト平均法ぐらい知ってるよ」と思った方。ちょっと待ってください。

ドルコスト平均法にどれぐらいのリスク低減効果があるのか、ちゃんと考えたことはありますか?ドルコスト平均法が資産運用をする上でいかにリスクを下げることができるのか、しっかりと解説をするのでぜひ読み進めてください。

結論から先に言っちゃいますが、ドルコスト平均法で投資をすると、例えばバブル絶頂期という最悪のタイミングで投資を始めた人ですら、最終的には利益を出すことができるんです。


ドルコスト平均法とは?

まずは投資初心者の方向けにドルコスト平均法について解説します。

ドルコスト平均法とは「定期的に一定金額の株を購入する投資手法」です。株が上がっても下がっても、購入する金額は同じです。例えば毎月1万円を投資すると決めたら、株価がどんなに動いても毎月末に必ず1万円分の株式を購入します。

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ドルコスト平均法を実践すると、株価が下がったときは1株当たりの価値が下がるので、同じ金額でより多くの株を買うことができます。一方で株価が上がったときは同じ金額でより少ない株を買うことになります。株価が上がっている時の突っ込み買いを減らし、株価が下がったときに多く買うことで、平均取得単価を下げることができます。


ドルコスト平均法による効果を実際に見てみる

下のグラフは、実際にドルコスト平均法で日経平均を買った時の資産推移のグラフです。バブル絶頂期の1989年12月に株式投資を始めるというとても残念な人のケースで、どれぐらい利益が出るのかを試算してみました。

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青い線がドルコスト平均法で日経平均を買った場合の試算のグラフ、オレンジ色のエリアが元本です。青い線がオレンジ色のエリアよりも下にある時は含み損で、上にある時は緑のエリアの分だけ利益が出ていることを意味しています。

バブル絶頂期から積み立て投資を始めたケースだと、20年以上の長い間は含み損に苦しむことになりますが、2019年10月時点では資産が567万円になります。その時点での投資元本は359万円ですので、なんと200万円以上(37%)のリターンとなります。

しかもこれは配当がまったくない場合の試算です。仮に毎年2%の配当をもらう場合で計算をすると、なんとリターンは2倍で400万円以上となります。

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ちなみに、米国株投資だともっとすごいリターンになります。米国株投資で最悪のケースであるリーマンショック直前(2007年10月)に積み立て投資を始めた場合、以下のような損益グラフになります。

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バブル絶頂期や金融危機前に投資を始めるという最悪のケースでも、これだけのリターンが出るのがドルコスト平均法のすごいところです。プロでもマーケットのタイミングを読むのは非常に難しいので、ドルコスト平均法による時間分散でそのリスクを取らないのは賢い選択だと思います。


【超重要】個別銘柄への投資でも時間を分散する

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上では日経平均やS&P 500などの指数に投資するケースで考えましたが、ドルコスト平均法による投資は個別銘柄に投資をする場合でも活用できます。

というか、個別銘柄に投資する時の方が時間分散の考え方がより重要になると思います。

バリュー投資では市場であまり好かれていない銘柄に投資をするので、株価が下がっているところでの逆張り的な投資になることが多いです。ですが、どこが株価の底になるのかを予測するのはとても難しいです。

なので投資する企業を決めても一度にすべての資金を入れるのではなく、少しずつ時間を分散して購入するのがおすすめです。

最初に少額を投資して、しばらく様子を見ます。さらに下がったり、自分の投資アイデアの確信度が高まったら追加で資金を投入します。

少額を投資した後すぐに株価が上がってしまうかもしれませんが、それはリスクを下げるためのコストですのでしょうがないです。それは潔く諦めましょう。

個別銘柄への投資における時間分散は、意外とできていない人が多いと思います。基礎的なことが多く書かれている今回のnoteですが、この考えは上級者の方もぜひ実践してみてください。

バリュー投資のリスク(損失)が少なくなり、パフォーマンスの安定へとつながるはずです。


リスク最小化の手法②十分な安全域を作る

安全域というのは「バリュー投資の父」とも呼ばれるベンジャミン・グレアムが著書「賢明なる投資家」の中で使っている言葉です。英語では「Margin of safety」といいます。

安全域とは、企業の本質的価値から今の株価へのディスカウント幅のことを指します。例えば本質的価値が1,000円の企業の株価が700円の場合、300円分の安全域があることになります。

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安全域はバリュー投資において最も重要な概念であり、十分な安全域がある企業の株式を買うことで、投資のリスクを下げることができます。

安全域がない企業の株を買ってしまうと、投資リターンの期待値は市場平均並みかあるいはマイナスになってしまいます。しかし十分な安全域がある企業に投資をすることで、過小評価された企業の株価が平常化する過程で、高いリターンを得ることができます。

さらに、安全域は自分の考えが間違っていた時のバッファーにもなります。

企業の本質的価値を計算する時はいろんな推定をするので、自分の予想が間違うことはしょっちゅうあります。市場ですでに高く評価されている会社は安全域がないので、悪材料が出た時に株価は大きく落ちてしまいます。

しかし、市場からの評価が低く株価に十分な安全域があると、すでに悪材料が十分に織りまれているので、株価が落ちてもダメージは大きくなりません。

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グレアム氏の「賢明なる投資家」の中でも、安全域について以下のように書かれています。

・安全域の本質的な働きとは、正確な将来見積もりを不必要とすることだ
・安全域は、計算ミスや運の悪さを十分に吸収する効果がある

要するに、正確な将来予測はそもそも難しいので、安全域が十分にある(本質的価値よりも株価が十分に割安な)企業を買うことで、自分の予測が間違っていた時のダメージを吸収することができるんです。

ここまで読んだら当然、「それじゃあ本質的価値はどうやって算出するの?」って疑問を持つと思います。この部分はとても重要なので、この講座の第5回~第7回あたりで詳しく解説する予定です。

ちなみに余談ですが、賢明なる投資家はKindle Unlimitedで無料で読めます。

ウォーレン・バフェットの師匠であるグレアム氏が遺した、バリュー投資の最高傑作とも言える本です。これまでにたくさんのバリュー投資の本が出されていますが、バリュー投資の理論はすべてこの「賢明なる投資家」から始まっています。

無料で読めるのでかなりおすすめです。


リスク最小化の手法③分散投資

最後のリスクを下げる投資手法は、シンプルに分散投資です。

1つの企業に自分の資金をすべて投じてしまうと、その投資アイデアが間違っていた時の損失が大きくなります。しかし複数の企業に投資先を分散すれば、1社の株価が下がっても他の企業でそれをカバーしてくれます。

ETFがもっとも分散された投資先になりますが、個別株への投資であっても10社ぐらいに分散すれば十分な分散効果を得ることができます。

ただ、分散投資をする時は1つだけ注意が必要です。

それは、自分のポートフォリオの中で極端な偏りが生まれないように投資先を選ぶことです。

例えば投資先がすべて自動車関連の企業になってしまうと、自動車市場が悪化した時にすべての企業の株価が下がってしまい、分散効果を得ることができません。

なので、投資先を分散する時は、投資先している企業の事業内容や地域も分散されるように意識しましょう。

10社以上に投資先を分散するとして、以下の項目で偏りが生まれないようにバランスの良いポートフォリオ構築を目指してください。

分散投資のチェックポイント
・事業内容・業界
・景気敏感株とディフェンシブ株
・為替影響
・国・地域別の売上高


株式投資でリスク下げるためのチェックリスト

今回のnoteではリスクを最小化する投資手法を3つ紹介してきました。

・ドルコスト平均法による時間分散
・安全域を十分に設けた投資
・分散投資

かなり基本的ものばかりですが、意外とこれらすべてをちゃんとできてる投資家って少ないんじゃないでしょうか?

特に、「個別銘柄に投資する際の時間分散」や「安全域を十分に設けること」、「事業内容や銘柄タイプに応じた分散投資」を徹底してできている人はかなり少ないと思っています。

このようにリスクを下げる努力をすることで、損するリスクを最小限に抑えながら「プラスサムである株式投資のゲーム」に参加することができるんです。

最後に、株式投資でリスクを下げるための方法をチェックリストとしてまとめます。このリストはぜひ見える場所に保存しておいて、実際に投資をする時に忘れないようにしましょう。

株式投資でリスクを下げるためのチェックリスト
① 一気にすべての資金を投じない
② 最初は少しずつ投資して、株価が下がったり自分の自信度が上がったら追加で資金を投入する
③ 自分が試算した本質的価値よりも十分に割安な価格(できれば3割以上)で投資をする
④ 10社以上に分散投資する
⑤ 事業内容、業界、銘柄タイプ、地域を分散する


バリュー投資の具体的プロセスとは?

第1回と第2回の講座では、誤解されがちな株式投資の本質的な部分と、リスクを最小化するための基本的な考え方を紹介してきました。

そしていよいよ次回のnoteでは、「なぜバリュー投資は勝てるのか?」というバリュー投資の本質的な部分と、具体的なバリュー投資のプロセスについて解説しようと思っています。

予定よりも執筆が進んでいるので、できれば12月1週目には出したいです。

皆様のご支援がnote更新のモチベーションになっているので、ぜひいいねや拡散をよろしくお願いします。


バリュー投資 実践講座の目次

以下は、バリュー投資 実践講座の目次ページです。


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