うまくいかないフレーズの練習方法例
(旧サイトの「オンラインレッスン」のコラム記事のアーカイブです。 2018-04-03の記事です。)
ここでは、単に楽譜通りに吹く、の繰り返しではなく工夫した練習方法の例をいくつかご紹介します。
特に、練習してもなかなかうまく吹けるようにならないフレーズがある場合、同じ事を繰り返していても、変化は生まれません。つまり、吹けるようにはなりません。同じ事を繰り返している限り、当然ながら結果は変わりません。ですから、何らかの変化を生み出すために、単に楽譜通りに吹くことから一旦離れ、そして、うまくいっていない部分が修正されるための感覚的道筋を見つける努力をする必要があります。そのためのいくつかの選択肢を簡単にご紹介します。
大前提:基礎の基礎
まず大前提は、基礎の基礎です。トランペットで音を出すという事の無理のなさ・容易さ・効率性。基礎技術の質の高さ。
これに関してはここでは詳しくは割愛しますが、基礎の質が高ければ高いほど、曲の練習での問題発生はそもそも起きにくい、という事が大前提です。以下に紹介するような方法をとって工夫する必要すらなくなる、ということです。
あるフレーズがどうしても吹けない、フレーズ中に問題が発生する、難しい技術が克服できない、そのような場合の多くの原因と解決策は、基礎の基礎の中にあるものです。それを見逃す、見ないことにする、スルーしてしまう、という態度ではなく、それにきっちりと向き合うことが、あくまで大前提となります。
一つずつ音のセンターで
楽譜上の音の長さを無視し、音の順序通りに一音ずつある程度のばしながら、一つずつ音のセンター(ツボ)をとらえていく練習。
最初の音を伸ばしてセンターを確認します。そのまま、次の音に行き、その音のセンターを確認します。以下、同様に進めていきます。一音一音、センターで進んで行けるようにしていきます。
全ての音のセンター、前後の音との距離感(音程)を確認したり修正したりする作業です。
音質がどこかで変わってしまう、どこかの音が出なくなる、フレーズがもたない、連続するタンギングがうまくいかない、発音が素直にいかない、などの問題がある時に効果があると思います。
同じ高さの音で、楽譜通りのリズムで
楽譜上の音の高さを無視し、任意に音の高さを一つに決めて(例えば全てチューニングのBにする、など)、その音だけで、楽譜通りのリズムで吹きます。
音の高さの要素を無くし、リズムとアーティキュレーションの要素に集中し、向上させます。
終わりから
曲を始めから順番に練習するのではなく、終わりから練習します。
曲をある程度のまとまりに区切り、後ろから練習を始めます。例えばABCDEFGHIJKLMNに曲を区切ったら、まずは最後のNを練習。次はMN、次にLMN、次にKLMN…という具合です。
特に、持久力的にキツい曲、効率的に短期間で仕上げたい曲、などに効果的です。
ppで
全てppで吹きます。最高の効率性で。最小の音量かつ最大限に満ちた音質で。
大音量のキツい所を、むしろppで練習しておく、というのが効果的にはたらくことがありす。大音量の部分は力任せになりやすく、効率性から離れてエネルギーを浪費して音にするのが癖になりやすいものですが、ppで吹く事によって、一旦冷静に、丁寧に、そして効率性を高めて吹くように自分を仕向けます。ひとたび効率性が高まれば、仮に同じエネルギーを使ったとしても、以前より大きな結果を得ることができるようになります。
スラーをタンギングで、タンギングをスラーで
スラーのフレーズをタンギングで、タンギングのフレーズをスラーで吹きます。
人により、スラーの吹き方の癖、タンギングの吹き方の癖があるものです。どちらかの方が良い状態で音が出て、うまく吹ける事が多いかもしれません。あるフレーズがうまくいかない場合、自分が得意とする方をまず良い基準として、それをもとに楽譜のアーティキュレーションにしていく、という方針です。
例えば、タンギングのフレーズがうまくいかない、スラーの方がうまく吹ける、という人の場合は、まずスラーで吹きます。スラーで良い音で(スラーの吹き方がテキトーだとあまり効果をなさないので、まずスラーで良い状態で吹くことが前提)。それを自分の中の良いお手本として、それをタンギングに適用させていく、という流れです。スラーの息の流れを保ってタンギングする、全てスラーの状態から少しずつタンギングを入れていく、など。
息と指だけで
楽譜通りのリズムやアーティキュレーションで、楽器に息を流します。指も同時に楽譜通りに動かします。音は出さないので、唇は大きく開いて、息がスムーズに流れやすいようにします。
よりスムーズに楽器の中を息が通過するように、より自由に空気が移動し続けるように、していきます。
息の状態が良くなっていったら、同時に、音のイメージ(高さ、音色、形、その他)をそこに付け加えていきます。音のイメージをクリアに持ちながら、息を流します。
歌う
声で歌います。音を出すそもそもの前提である、頭の中の音を修正・向上していく作業です。楽譜通りに、声で歌います。
音程、フレーズ感、音質(声質。必ずしも声楽家のように歌える必要はないが、朗々と良い響きでオープンに歌う)、がポイントとなります。
声で歌って、吹く、を交互に繰り返しながら、徐々に改善を図っていくことができます。
マウスピースで
マウスピースで、楽譜通りに吹きます。ピッチの正確さ、アーティキュレーションを主な焦点として。
特に、ピッチの感覚を修正することが期待されます。
しかしながら、マウスピースで練習することによってむしろ音が出にくくなる、ある音域は出しにくい、などのマイナスの効果となってしまう場合は、その時点ではあまりやらない方がよいと思われます。
あくまでプラスに作用する場合に、その範囲で行うのが良いと私は思います。
創造性をもって
以上のような方法には、制限は基本的にありません。上記の方法はあくまで例であって、自由に、創造性をもって取り組むことが非常に大切だと私は思います。
可能性や選択肢をはじめから否定することなく、思いつく方法があれば積極的に試してみる、ということは非常に価値のあることです。その中で、うまく作用するもの、マイナスに作用するもの、両方あることかと思いますが、そこから取捨選択を図ればよいわけです。
何度練習しても向上が見られないフレーズは、同じことを繰り返すのをやめて、その状態からいかに脱却するか、いかに良い変化を自分に仕向けるか、ということのために、創造的に工夫をしてみる、そんな視点が役に立つかもしれません。
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