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アセクシャルにおける男女差の話

今、NHKで「恋せぬふたり」というアセクシャルをテーマにしたドラマがやっているそうで、SNSでもアセクシャルの話題を見かけるようになりました。
僕も興味はあるものの、テレビのない生活をしているのでオンデマンドで見るか……と思っているところで重い腰が上がらない状況で未視聴です。
これを機に知ってもらえることは良いことなんだろうなと当事者としては思っています。

昨日もTwetterのスペースで、「#恋せぬふたり を語る会」というのが開催されていて、話を聞いていたら色々考えたことがあったので、しばらくぶりですが忘れないうちに書いておこうと思って記事にしています。

スピーカーは女性のアセクシャル当事者でライターの雁屋優さん。
女性視点からいろいろ語ってくださっていて参考になったのだけど、その中で男性のアセクシャルが少ないことに言及していて、男性の側は「非モテ」の文脈に取り込まれてしまっているのではないかと話されていました。
なるほどね、と思ったところもあったのですが、男性当事者の立場から少し深掘りして考えてみようかと思います。

僕個人の体験からすると、男性アセクシャルは「非モテ」というより「奥手」「草食系」の文脈に回収されがちなのかなと考えています。
「非モテ」というと収入が低いとか、女性とのコミュニケーションが下手とか、見た目や女性に対する態度の問題とかそういう話に行きがちなのですが、僕はそれらの問題とは違うポイントで躓いたり悩んだりしたんですよね。

それは何かというと、恋愛において男性は「リードすることを期待される」んです。

もちろん、女性の側から積極的に行く人もいると思いますが、一般的に女性は男性の方から来て欲しい、アプローチして欲しいと考えていると思います。
女性誌などの記事タイトルを見ても、男性に告白される、愛されるといった受け身の言葉が並んでいます。
男性にそれとなく好意を伝えて、それを読み取った男性がアプローチして恋愛が成立するっていうストーリーが前提になっているんですよね。

でもね、僕、わかんないんですよ、そういうの。
女性から好意を匂わされても気づかないんです。
申し訳ないんですけど。

最近、個人的に「恋愛のプロトコルがわからない」って表現を使い始めたんですけど、そういう恋愛の手順とか作法とか空気とか、そういうのが読めない人がアセクシャルには多いと思います。
僕の体験でも、学校や趣味などで親しくなった女性と疎遠になってしばらく経ってから当時のことを思い出してみると、もしかしてそういうことだったのかな? と思い当たるフシがいくつかあって。
普通の男性だったら、そこで自分に気があるのかもしれないと勘づいて、付き合う流れになっていたのかもしれないんですよね。
今となってはわからないですけど。

男性のアセクシャルの辛さとか、気付きにくさっていうのは実はそこにあって、そもそも恋愛感情が湧かないんじゃなくて、恋愛のやり方が下手なんだって思わされてしまうところだと思うんです。
あの時、ちゃんと女性の態度に気づかなければいけなかったんだとか、男の方から積極的に行かないと恋人なんかできないって言われたりとか、そういう方向から攻撃が来るわけです。
そうして「草食系男子」「奥手男子」といった文脈からアドバイスされたり、批判されたりする。
それで「草食男子のための恋愛マニュアル」とか「奥手男子でも恋人ができる方法」みたいな本を読んで、恋愛ってこういう手順で進めるものなのかとか、女性からのアプローチに気づくにはどうしたら良いのかとか、真面目に勉強するわけです。

でもね、それでもうまく行きません。

なぜうまく行かないのか?
それは恋愛のために恋愛をしようとしてるから。
女性とある程度仲良くなれたとして、この「恋愛の手順」を踏めば恋愛が成立するのかというと、そんなことはないってことです。
だって、こっちが恋に落ちていないんだもの。

普通に恋愛のできる人にとっては当たり前の事実なのかもしれません。
でも、僕にはわかりませんでした。
今は、アセクシャルという言葉を知って、自分が「恋愛感情が持てない」人間なんだって理解して、客観視できるようになったので、こうして冷静に分析できてますけど、それを知らずに渦中にいるとわからないんですよ。

女性のアセクシャルとの違いに話を戻すと、女性の場合、男性がアセクシャル女性に恋をして、アプローチされて、恋愛感情は特にないけど試しに付き合ってみて、やっぱりダメだったっていう体験談が多いんですね。
それに対して、男性の方は、よほど積極的な女性に好かれない限り、恋愛を「試す」ことすらできないんですよね。
多くの場合。

だから「非モテ」「草食系」「奥手」という文脈に取り込まれてしまう。

とにかく頑張れ、当たって砕けろって言われてしまう。

それが辛い。

僕は運よくアセクシャルという概念を知って、ここから抜け出せました。
さらに運の良いことに、ノンセクシャルのバートナーと出会ったので、恋愛しなければという脅迫感も落ち着いたし、周りの人間からも、恋愛しろと言われなくなったし、ちゃんと恋人のいる普通の人だと思われています。

でも、いまだに人生で一度も恋愛をしたことがないという事実はコンプレックスとして燻っています。

アセクシャルでもいろんな人がいるので、一概に男性、女性で分けられるものでもないですけど、世間一般として考えてみると、男性としてのジェンダーロールとして期待されることに応えられない辛さや偏見もあったよなという話でした。


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