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Twitter現代川柳アンソロ2~鑑賞~5

・TLに流した、X(Twitter)現代川柳アンソロ2の感想  #ツイ川ア・ラ・モード  をnoteにまとめ始めました。
・一部に加筆修正をしています。掲載は時系列でもページ順でもなく、加筆修正順のランダムになっております。
・あと、その時の気分で、文体が「ですます調」「である調」「口語調」に変わるので、いろいろ、混じっています。読みにくいかと思いますが、いちいち直すと、またタイプミスとか増えそうなので統一しません。
すみませんがご了承ください。

指に似た町長を待たせてある / 兵頭全郎
@Zenro17

下五→待たせてるの5音ではなく、「待たせてある」の6音にしてあります。中指に似た町長?またせて?とスラっと読んできて、律で、あれ?ってなります。

意識が遡って、もう中指が立っているわけです。脳内で。ファッ〇・ユーとしたくなる町長っていうことになります。だから、わざと待たせてあるっていうことでしょうか。そのイラつきとか逆に町長をじらさせている感じで下6音にしたのかも?

何故町長なのか?っていうところですが、自治体の長で、知事、市長、区長、都知事、府知事などは2〜3音なので掲句の中七のパーツとしての音数が合わないですね。

村長、町長、県知事、道知事は音数が中七にぴったりはまります。それらの長のうち、身体の一部を詠む手法において、中指のスケール感に一番ぴったりくるのが町長だったのかもしれません。

全郎さんは妄読の達人(川柳スパイラル誌に「妄読のすすめ」を連載)でもあるので、句の本意など追わず、ある程度情報が隠された、謎で不思議な句を読者なりにひたすら妄読をすればよし!という事なのかもしれません。

なんとか読みの難所句を超えた? w

11月10日の川柳スパイラル東京句会にて全郎さんは、おいらの右隣にすわっていました。それで、ゼロ年代(2000年~2009年)以降の現代川柳シーンのなかで、ゼロ年代以前から川柳をやっていたベテランの内でもいちはやく現代川柳の現場のネット環境への順応や対応に敏感だった作家、例えば、全郎さんから、以下のような発言が飛び出した。

たった、7年前なのだ。 #現代川柳 が使われ出したのは。

上記ツイートは2023年11月10日の川柳スパイラル東京句会がきっかけ。

そこで、会場にもいた今田さんの、以下の発言が飛び出すことになる。
そう、本当に、いま現代川柳をやっている、やりだした、これから始めるひとは、ゼロ年代以降からポスト・現代川柳の流れのただなかで、川柳史を作っていく存在になっているといっても過言ではないだろう。

面白い時代に居合わせた!!と思っていいのではないか。。。

写真の川柳カード誌は2015年発行だが、全郎さんも同人として参加している。その作品をちょっと抜いておこうと思う。

スローモーション波音は懐疑的 / 兵頭全郎

二度目から知ってて恋を漂白す

入ってはいけない遊具立ち尽くす

空港を通ってゆらり刺さる羽

びっしりと涙の並ぶショーケース

自分が好きなのは、空港の羽根の句である。

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助詞まろぶいつかの泡に生まれ来て / 高良俊礼
@synreisoundspal

倒置法が使われていて、本来なら、いつかの泡に生まれ来て助詞まろぶ、でしょうか。泡っていうとシャンパーニュの泡。ビールもあるけど。グラスから常に幾筋もの細い糸のように独立した気泡が連なって立ち昇る美しさはやはりシャンパーニュの泡を思うのですね。その美しい泡の中ひとつひとつに助詞が入っていて、弾けると同時に口の中で色々な種類が転び出るわけです。

助詞、わかんないので調べました。

格助詞「が・の・を・に・へ・と・から・より・で」

接続助詞「ば」「と」「ても(でも)」「けれど(けれども)」「が」「のに」「ので」「から」「し」「て(で)」などなど

副助詞「ばかり・まで・だけ・さえ・ほど・くらい(ぐらい)・など・なんか・なんて・なり・やら・か・ぞ・し・ばし・がてら・なぞ(なんぞ)・ずつ・のみ・きり・や・だに・すら」

まだまだある〜

終助詞「か・かい・な・とも・の・ぞ・ぜ・や・よ・ね・さ・のに・やら・が・ものか(もんか)・わ・かしら・って・ってば」

終助詞、意識してなかったわー!w

他に、無助詞:助詞の復元が不可能な場合や、助詞がないほうが自然な場合

省略:助詞が復元可能で、助詞があっても不自然ではない場合を「省略」

★話ズレますが自由律は575音に拘らないので音数を圧縮したい(例えばなるべく短い句に仕上げたい)ときに、助詞無しでも意味が変わらない場合「省略」します。

掲句の結語「来て」→副詞 カ行変格活用の動詞「来」の連用形である「来」に、接続助詞「て」が付いた形だそうですが、この結句になっていると、体言止めのビシッと〆て終わる感じに比べ、流れるような、継続の余韻イメージがきます。

で、七七を付けたくなりますw
文法的な硬い内容が、実にリリカルでロマンティックな調べに移り変わっていきます🎵

川柳的というより、短歌や連句の立て発句 (季語無いけど)的味わいが来るのはその辺かもしれません。短歌・連句ド素人なのであくまでも個人の印象ですけどw

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撃鉄を眠らせ撃鉄を名乗る中島みゆき / 西脇祥貴
@nyankichi4ever

げきてつをねむらせ / げきてつをなのる / なかじまみゆき

で、9音8音7音の24音。長律自由律川柳とも読めます。音数漸減により最短音数である中島みゆきに意識が集中する仕組みか?西脇さんが毎日のように中島みゆき句をアップされているのを見ているので、おそらく作者には絶対的存在でしょう。神とか。そこで、ついに掲句中の撃鉄=作者なのでは?という読みに至ります。

掲句のキモは中島みゆきが撃鉄を眠らせてしまい、かわりに撃鉄を名乗るという「なりすまし句」であるところかと。撃鉄である作者はその人格を眠らせてもらって、中島みゆきになりすましてもらいたかったのでは? それほど作者は中島みゆきに傾倒しているのでしょう!という。神との合一。。。

このような推しの激情が定型音数を大幅に超えさせているとすれば、作者の自然な内在律とも。ある意味従来の、日常や通常の思いを詠む私川柳をはるかに超え、一度ポスト現代川柳のフィルターを潜った作者による超私性句あるいはシン・私性句か?

私性の排除が定着したポスト現代川柳に対する揺り戻し現象の先駆け句、ポスト・ポスト現代川柳なのか? 嗚呼。

ということで、考察が、ゼロ年代以前~ゼロ年代~ゼロ年代以降~ポスト現代川柳~ポスト・ポスト現代川柳 と見渡してきているのであった’(汗。

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祈れば祈るほど戸それから寝返り / 林やは
@yahanoheya

いのればいのるほど / と / それからねがえり

9音1音8音の18音で、17音から1音だけの超過。ですが、段落というか句の構造的視点から、自由律川柳で読んだ方が面白いな~となります。

前半と後半の節のターニングポイントに置かれる1音の「戸」は何か? 戸=障害物。祈りを届かせない硬い扉のような存在としての喩?

「寝返り」からは寝返る→裏切り・離反のイメージが。神への不信、あるいは神自体の不在・無神。

祈りには種類があるそうです。
自分のための祈り。自分の欲求をかなえてもらうための、願いと同質のもの。

もうひとつは他者のための祈り。代表的なものではキリスト教の主の祈り「御心の天にあるごとく、地にもなさせたまえ」神のみこころとおなじように、地上での行いをすることができますように、というような私欲をはなれた(信仰としての)高次な祈り。

不眠の様を祈り(信仰)の挫折と離反への変転に読み替えることができて、妄読感満点な句だと思いました♪

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培養肉が兄に似てくる / 森砂季
@mori_saki

IPS細胞とか、クローン人間とか、人面瘡のイメージがきます。先端医療とか、近未来とかのニュアンスも。

川柳では肉親を詠んだ句が頻繁にでてきます。レジェンドな作家の作品を探していくと、

姉さんはいま蘭鋳を揚げてます / 石田柊馬 『現代川柳の精鋭たち』北宋社 p19

蘭鋳の色(視覚)とか揚がる音(聴覚)はポップですが、普通の食べ物じゃない点(違和感)で怖さが来ます。そこがちょっと掲句のニュアンス似ているかも?

従来イメージの有名肉親句だと

いもうとは水になるため化粧する / 石部明 『現代川柳の精鋭たち』北宋社 p23

日常に近い言葉で読者を引き寄せながらも、よく読むと「ありえない」感がとか異質感がくるっていう。

ライトでポップ寄りだと

母さんはすでにここまで紅しょうが / なかはられいこ 『くちびるにウエハース』左右社p9

おとうとは結露するため立ち上がる / 同 p41

軽いタッチで電子ピアノを走る指のようなひらがなづかい。ポップ~♪

そして、掲句はホラーなんだけどポップでもあるような可笑しい&怖い、みたいな混じった句の不思議なトーンを醸し出していて、こんなトーンの句って今までなかった気がして惹かれたのでした。

11月11日の文学フリマ東京37で、森砂季さんが第一句集を上梓。

『プニヨンマ』森砂季著
よくみると、表紙が雲母刷りのような質感で上品。
手に持つとしっくり指に引っかかる手触りで実にめくりやすい。

着ぐるみの中に内蔵ぶら下がる / 森砂季

※虚に実をぶら下げて鮮烈!!

落雁で姉でそのうえフリスビー / 同

※肉親句の常識を覆す飛躍。乾いていてポップな語の連結。

ほかにも、惹かれる句が目白押しでである。
じっくり読み返そうと思う。
文学フリマ東京37での販売は終わったが、XTwitter等

→ 6に続く

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