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アナログとハイレゾの間に(「冷〇と〇熱のあいだ」風に)

2024/3/8 AV Watchで公開された『アラフォーCD世代が“レコードのある生活”してみた。デノン「DP-400」に一目惚れ』、これからレコード触ってみようかな?という人たち、言ってみれば”数か月前の私”の心情とも良く似ていて内容がとてもよかったです。ちなみに年末に購入したプレーヤーはDP-400でした。DP-400はとても良いものだと思いますが、もうちょっと上を見たくて3か月もたたずにtechnicsプレーヤーにしてしまいましたが…。

レコードは「高級品」「上級品」に見てた世代

私は1983年生まれで、以前のnoteでも書きましたが、レコードの活躍が見れたのは本当にギリギリ最後の世代です。公的な場所で唯一見たのは幼稚園の放送室で、そこから成人し趣味としてオーディオに近づくまで実物を見ることはなかったです。
小学1年生になったのは1990年で、歴史を見れば確かにCDはかなり普及している時期とはいえ、すでにそのタイミングで小学校にレコードがなかったのは、今思うと意外です。授業はVHS、CDと、たまにLDでした。(ちなみに今って”視聴覚室”が存在しないという噂を聞いたのですが、本当なのだろうか?あんなロマンな空間もないと思うのですが)
レコード自体は回転するモーターそのものですから、小学生がむやみに触ると危ないという配慮もあって速やかに導入が進んだ…のかもしれませんが。

さておき。
私の基礎的な知識として「CDの以前にレコードがあり、性能はレコードよりCDのほうが高い」と学んできました。
CD出始めの頃は、ブックレットの1ページを使ってこんな広報をしていたり…

1987年発売のとあるCDのブックレット最終ページ。CDがいかに優れているかを説いています

成人になり、自分の稼ぎでオーディオを楽しめるようになったころには、オーディオショップの開催する試聴会にも何度か足を運んだことがあります。
まだレコードが本格的に復権する前です。
レコードの情熱をもち続けている人は当然いるわけですが、何せ価格帯が、当時の自分の守備範囲を大きく超えてました。「すごい音なんだよ!」と言われても、当時の私にはピンとこず。音を聞いても「その価格でノイズが出てくるなんてその時点で…」という感じでした。ネットショップもオークションサイトもまだ広まる前ですから、そもそもソフト(レコード)どこで手に入れるんだ?という悩みも。
レコード現役の世代の人にとって、レコードがどういう価値だったのか…それぞれ育った環境や、わずかな時代の前後でも大きく変わるのかもしれませんが…私にとっては【2ランクぐらい上の高級嗜好品】だなぁという印象がありました。

アナログとハイレゾで見ている景色・行先が違う

ヘッドホンにある程度執着し始めたころ、そうとはいえ、ヘッドホン以外の音もちゃんと聞かんとな、という感じで、当時は東京で勤務していたので、会社の先輩に連れられてジャズライブを聞きに行ったり、クラシックコンサートに行ったりもよくしてました。
※私の住む札幌にも、イベントがないわけではないですが、【思いついたその日にふらっと行けば大抵どこかで何かやってる】東京とは雲泥の差です。地方都市は「思いついたその日だと、さすがに何もやってない」日が普通なのです。
わりと試聴会にもこなれてきたので、いわゆるピュアオーディオの試聴会にも参加したことはあります。ぶっちゃけこの頃は、ヘッドホン狂信者になっていたので、数百万円程度のオーディオシステムならヘッドホンの音のほうがいいじゃん、といった高みの見物(?)なスタイルでした。
こういったピュアオーディオの試聴会にいくと、よくある光景が
「普段は何で音楽聞いてるの?」
「ヘッドホンですね」
「ヘッドホンはねー…、スピーカーにしたほうが絶対いいよ」
といったやりとりです。今でもあるのかしら?

このやりとりは、決してヘッドホンを見下しているわけではなく、多分専門外だからそれ以上の言及をしなかったんだろうな、という印象です。
ヘッドホンの一通りを通過して今に至る私においては、ある時点からヘッドホンとピュアオーディオが目指す先が変わっていると考えています。分岐道であり、延長線上にはありません。
ヘッドホン・イヤホンの究極の姿は「すべての情報を耳に届ける」音です。オーケストラを聞けば、指揮台の位置で、フルスコアを見ながら全部の楽器の音が埋もれず聞こえる、そんな音です。余計な音は求めません。
ピュアオーディオは、指揮台に立つ必要はなく、そのもう少し後ろのS席客席です。空気の振動による実体感と反響、その瞬間の音楽体験をその場所に再現できることがピュアオーディオの究極ではないかと思ってます。
これはどちらがより優れているか、ではなく、どちらがより好みのか、という問題だと思ってます。

まあそんなものではないか、ということはヘッドホン道を究めていた時から感じていましたが、一方で、ハイレゾといった【高繊細デジタル音源】と、【アナログ音源】も似たようなものではないかと思ってます。
今のハイレゾオーディオは30年前のフォーマットであるCDの音質なんぞとっくに超えて、万が一にもノイズなんか乗ってたら「ノイズは楽曲の都合上意図的にのせています」と但し書きが必要です(?)。
アナログ音源も、ノイズがないことに越したことはないですが、あったらあったでそれは味、多少のノイズがあってもそれを超える耳触りの良さ、心地よさがリターンにあります。
これも、ノイズがないか・レンジ比が高いかが単純に性能と言えるかもしれませんが、きっと好みの問題なのではないかという風に思えるようになりました。そう考えると、「デジタルが至上!」「アナログこそが音楽!」など考えなくても、両方が選択肢で持っていて、どちらか好きなほうを選べばいいんです、好きなほうを。
人の意見は話半分、自分自身がいいと思えるならそれでいい。それがオーディオという趣味です。

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