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残酷な天使のテーゼと萩尾望都

高橋洋子が歌ってヒットしたエヴァンゲリオンの主題歌「残酷な天使のテーゼ」。題の元ネタは萩尾望都の漫画「残酷な神が支配する」。さらに遡ると「残酷な神」という言葉は萩尾望都が読んだイギリスの作家アルヴァ―リズの著書「自殺の研究」(原題savege God)に出てくる。
 
アルヴァ―リズはこの語を詩人イエーツの言葉から借用している。もっと遡及するならイエーツはこの語をアルフレッド・ジャリの戯曲「ユビュ王」のレビューの中に用いている。もちろん、19世紀の演劇の感想が日本のアニメにまで影響を与えるとはまさかイエーツも思ってもみなかったことだろう。しかし、オリジナルの意図を離れて影響は異なる言語の別の媒体にまでどこまでも連鎖する。
 
Savegeは「野蛮な」と訳されることが多いのだろうが、それを「残酷な」と訳したのが萩尾望都の独創性とも言えるかもしれない。浅い読みだろうが、本来、野蛮な神とは、おそらく、西洋の没落を予感する危機と理性中心主義の時代背景におけるアンチテーゼを具現化したものだろうかという気がする。

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