クラシック音楽 名盤探訪2

リヒテル プレイズ プロコフィエフ

 ピアノの巨人、スヴャトスラフ・リヒテルのCDです。リヒテルは、1915年に旧ソビエトの現在のウクライナにあるジトミールで生まれました。元来、政治には全く関心がない人でした。もしリヒテルが今生きていたら今の惨状を見て「また、戦争が始まったか。」と言うでしょう。達観していると思います。

 そんな彼がプロコフィエフのピアノ協奏曲第5番を弾いています。プロコフィエフのピアノ協奏曲の中でもかなりマイナーな曲で、演奏頻度は決して多くありません。第五楽章まであり、従来のピアノ協奏曲から逸脱した感があります。しかし、何度も聞いていると、次第に曲の良さが伝わってきます。それが、リヒテルのなせる業です。完璧な技巧とほの暗い美音。この協奏曲においては、ほの暗さが、消えているように思います。というか、この1枚組のCDの方が、たくさんCDが入った、BOXと言われるCD集に収められているCDよりはるかに音質が良いと思います。あんまりリマスタリングというのはしない方がいいと思います。

 次は同じく、プロコフィエフ作のピアノソナタ第8番。3つある「戦争ソナタ」の一つです。戦争とは第2次世界大戦。最近の説では、プロコフィエフが「戦争ソナタ」を作曲したのは、戦争が始まる前らしいですが。初演はギレリスです。リヒテルはこの曲を大変気に入っていて、初演をしたかった、と回想しています。謎のような、抒情的な曲です。

最後は「束の間の幻影」という意味深な題名がついています。20曲ある小品です。モダンで洗練された曲です。リヒテルはここでは、慈しむように曲の魅力を余すことなく、表現しています。

収録曲 ①~➄
プロコフィエフ
ピアノ協奏曲第5番 ト長調 作品55 ワルシャワ国立フィルハーモニー管弦楽団 指揮ヴィトールド・ロヴィツキ 1958年9月 ワルシャワ

⑥~⑧
プロコフィエフ
ピアノソナタ 第8番 変ロ長調 作品84 『戦争ソナタ』1961年1月 ロンドン

⑨ 束の間の幻影 作品22から、第3、第6、第9曲 1962年11月 イタリア(ライブ)




 



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