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イギリスの原子力発電の今とこれから

イギリス政府は、2022年4月に“Energy Security Strategy”(エネルギー安全保障戦略)を発表しました。国内消費エネルギーの確保が目的ですが、そのエネルギー源の一つに選ばれたのが原子力発電です。

原子力発電の開発が、国策になったわけですね。一昔前は「脱原子力」が声高に叫ばれていませんでしたっけ?
原子力発電も変わりつつあるのかな?
ということで、調べてみました。


イギリスの原子力発電所の現状は?

現在、イギリスには8基の原子力発電所があります。
①Hunterston(ハンターストン)
②Torness(トーネス)
③Hartlepool(ハートリプール)
④Heysham(ヘイシャム)
⑤Wylfa(ウィルファ)
⑥Sizewell(サイズウェル)
⑦Hinkley Point(ヒンクレーポイント)
⑧Dungeness(ダンジネス)


出典


国内の原子力発電所で生産される電力は、年間65TWh。これは、国内消費電力の5分の1の電力ということです。

8基のうち、①、⑤、⑦、⑧の4基はすでに運転を終了しています。②、③、④は、2024~2028年の間に稼働を停止する予定です。⑥は、2035年に廃炉が予定されていましたが、2050年に延長されました。


イギリスで注目されている原子力炉

原子力発電所は、国内でされている電気量のおよそ5分の1を担っています。エネルギー安全保障戦略では、2050年までに原子力発電所から24GW以上を発電し、発電割合を4分の1にすることを目指しています。
廃炉になる発電所が多いのに、どうやって目標とするエネルギーを確保するのかが疑問ですよね。

イギリス政府は、不足するエネルギーを安全でクリーンな原子力発電で補おうと、グレート・ブリティッシュ・ニュークリア(Great British Nuclear)という政府系の機関を設立。1年に1基ずつ、最大8基の原子炉を建設することを目標に、次世代の原子力発電を担う企業を支援するということです。

ここで、いう「次世代の原子力発電」とは、
・小型モジュール炉(Small Modular Reactor:SMR)
・新型モジュール炉(Advanced Modular Reactor:AMR)
の2種類。

SMRは「第3世代炉」と呼ばれているモジュール式の原子炉のことで、
・従来の水冷式原子炉よりも小型
・従来の水冷式原子炉よりも体積あたりの表面積が大きい分冷却性が高い
といった特徴があります。

AMRは、「第四世代炉」と呼ばれているモジュール式原子炉です。政府のホームページによりますと、AMRは、新しい燃料や冷却システム、技術を使い、低炭素エネルギー源として期待されています。


やや表現が抽象的なのは、開発の初期段階だからかもしれませんね。SMRとAMRは、従来の原子炉と比べると
・建設コストが低い
・安全性が高い
・低炭素エネルギーを発生させる(CO2を発生させない)
といった特徴があることから、注目を集めています。


プロジェクトを実行に移すのは難しい?


現在原子力発電所の建設が行われているのは、ヒンクリーポイントのみ。ヒンクリーポイントは、プロジェクト発足当時の発電開始予定からすでに遅れています。さらに、インフレによる建設費の高騰などから、現在予定されている2027年6年の発電開始も微妙であるというのが現状です。

目標はあるけれど、現状が追いついていない印象を受けますね。


さいごに


原子力発電というと、環境面においてリスクが高いイメージがありましたが、開発が進んでいるんですね。
特にイギリスでは、SMRとAMRの開発に積極的ということで、今後の展開が気になるところです。
国内で消費する電気は、国内で発電するのが望ましいと思います。
原子力発電の開発が、課題解決の糸口になればいいですね。

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