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息子のおもちゃづくり 2

息子のおもちゃづくり第2弾として、ビジーボードを作ることにしました。ビジーボードとは、赤ちゃんが興味を持ちそうなアイテムをたくさん貼り付けたボードのおもちゃです。ドアノブや機械のスイッチなど、保護者の立場からするとあんまり触ってほしくないものを、安全に思う存分触って遊べる知育玩具なのです。

うちの息子はというと、最近部屋の照明スイッチに興味を持つようになったのですが、毎日のように抱っこをせがんで延々と部屋のスイッチを付けたり消したりしています。そんなに好きなのであればと、ビジーボードを作って思う存分スイッチを触ってもらおうと思いました。


方針

せっかくスイッチを操作するのであれば、少しでもインタラクションがあった方が楽しめると思い、今回はLED扱うことにしました。
一口にLEDと言っても、光らせ方は無数にあります。LEDの部品ごとの違いはもちろんのこと、LEDの配置、遮光、カバーなどの機構的な側面や、スイッチからの入力信号に対してどのような光り方をするのかというソフトウェアの側面、それに付随する電気的な側面など、全てが光の印象に影響します。そして、機構や回路基板などのハードウェアは後々になると変更が難しくなります。そこで、今回は事前に光の印象をシミュレーションしておくことで、ハードウェアの手戻りが起きないように工夫しました。


シミュレーション

ビジーボードには間接照明やカラフルなLEDなどを盛り込むことにしました。特に多色のLEDを下のような一つの発光領域にすると、隣接するLEDの色が混ざってしまいます。もう少しぱっきりと色分けしたいと思い、色ごとに内壁を作ることにしました。

4色のLEDが混ざっている
4色のLEDの色が分かれている。ディフューザーも追加


木材の加工

ベースの板は簡単に手に入るパイン集成材10mmを選択。加工は電動トリマーとガイドベアリング付きのストレートビットが大活躍しました。写真のようにガイドを組むことで、かなりの高精度で穴あけできました。

穴あけの様子

角Rはあまり自身がなかったのでRコーナー用の加工治具を使いました。同じ角Rで揃えることができるので、加工に自身がない人にはおすすめです。
また、ヤスリについても小さな気づきがありました。今までヤスリは四角く切られたものを使っていたのですが、中途半端なサイズの余りの保管が煩雑になりがちでした。今回ロールタイプのヤスリの存在を知り使ってみたのですが、毎回必要分だけ切って使えるので保管しやすいです。

トリマー加工後

接着して、筐体の加工は完了です。

接着後


塗装

電気回路が中に入っていることもあり、比較的耐久性の高い水性ウレタンニスを選びました。塗料が乾くと艶が出て一気に完成度が上がります。


電気回路組付け

マイコンはArduino Pro Miniを使いました。回路を設計し、ユニバーサル基板にはんだ付けしています。サイズが大きいので複数のユニバーサル基板間を一部空中配線しています。
今回のビジーボード制作作業は帰省中に実家でやっていたのですが、電気系の工具が揃っておらず、回路周りは若干雑な作りになっています。

電気回路組付け後


完成

無事完成しました。トリマーの加工精度とウレタンニスのおかげで想像していたよりも高い完成度に仕上げることができました。

息子に渡したときの記録です。最初は恐る恐る触っていますが、徐々に慣れてきて、色々試しています。


振り返り

予想以上に気に入ってもらえたみたいで、完成後数ヶ月経立ってもたまに遊んでくれています。最近は、電車の運転席からの動画を見ながら、運転手ごっこをして遊んでいます。
作っている途中は「電源プラグで遊ぶことに慣れたら、壁の電源プラグでも遊び始めたりしないかな?」と少し心配になったりもしましたが、数ヶ月使ってみても特に壁の電源プラグを触ったりすることは無く、無用な心配でした。この辺りは、製品として作る場合にはかなり慎重になるところとかな思います。


インターフェースとしてのビジーボード

今回選んだアイテムをあらためて見返すと、全てがインターフェースであるとも言えます。そこで、インターフェースという観点からビジーボードを捉え直してみようと思います。
インターフェースデザインの領域でよく使われる言葉に"アフォーダンス"というものがあります。アフォーダンスをWikipediaで調べると次のように書いてあります。

アフォーダンスとは、環境が動物に対して与える「意味」のことである。
〜中略〜
しかし特にデザイン領域において、「人と物との関係性(本来の意味でのアフォーダンス)をユーザに伝達する事」平たく言えば「人をある行為に誘導するためのヒントを示す事」というような意味で使用される事がかなり多い。

Wikipedia: アフォーダンス(シグニファイア)

今回選んだようなスイッチは、ある程度の年齢以上であれば説明を受けなくても操作方法が分かると思います。でも、0~2歳くらいまでの幼児には操作方法が分からないこともあります。これをアフォーダンスを使って表現すると、"多くの人に対してはアフォーダンスが働いているが、幼児に対してはアフォーダンスが働かないことがある"となります。これは、環境に対する経験値が少ない幼児にとっては、インターフェースにデザインされた"ヒント"が不十分だったということになります。

インターフェースデザインではアフォーダンスが働かないことを否定的に捉えることが多いのですが、ビジーボードの場合、むしろアフォーダンスが働かないからこそ、幼児にとってはおもちゃとして成立しているのだとも思います。
今回のビジーボードを最初に息子に渡したときも、真ん中のスライダーやダイヤルの動かし方が分からず、押したり引っぱったりしています。(動画には残せていないのですが。。。)息子はそれまでにスライダーやダイヤルを操作する経験が無かったので、ノブをスライドさせたりダイヤルを回すといった操作方法を思いつけませんでした。それでも、一度お手本の操作を見せると、すぐに理解してお手本通りに操作し始めました。まさにアフォーダンスを受け取るための知覚を獲得したのだとも言えます。
アフォーダンスが働かないことを逆手にとって、日用品からおもちゃへと意味を変換しているところも、このビジーボードの魅力なのだと思いました。

余談ですが、たまに幼児がスマホを使いこなすのを見て、大人が感心している場面に遭遇することがあります。あれは幼児がすごいと言うよりは、経験値が少ない幼児でも操作できるくらいに、アフォーダンスが適切に設計されているデザインの方が称賛されるべきでしょう。

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