見出し画像

UnKnown

外伝。もう1つの物語。

『Cだけあげて、言うとるやん。タグなしおるんはどないなん!あぁ?』

今はもう使われてない商業施設の中でまるで戦場のような状態で人を振分けていた。いや、もうすでに戦時だったな、と苦笑いしてしまう。

自分は白衣をきてチェックボード片手に人々をさばいていた。
医療なんてはるか昔になくなっていた。
知識のある者が治療をする。
医薬品などほぼ底をついていた。
そんな状態で手術までする。怖い、と何度も思う。幸いなのか、ここの施設は食料も水も、医薬品でさえ今のところかなりある。いつまで持つかは不明だが。

謎の感染爆発から何もかもが全て後手にまわり政府は国民をあっさり見捨てた。

検査して無感染だったらC、感染だったらN。
Cのまま一定期間過ぎたらAと判定され無感染者たちのコロニーへと移送される。そこではどんな暮らしをしているかは知らない。ここではきた者達を選別し定期的に検査をしてふるい落とすだけ。無事にAとなり移送されるのはほんの一握りだった。栄養失調や他の病、ケガなどによりバタバタと命が落ちていく。少し前では普通に治っていたキズさえ命取りになる。

『疲れた〜』
一段落したところで休憩。腰を下ろす。わらわらとチビどもが群がってくる。
『人気者ですね、センセ』
コーヒーと固くなったパンを受け取る。
『どうなんだか……』
膝にきた子の髪をくしゃくしゃとなでながら答える。
『しっかり休憩はとってくださいね。少しは睡眠をとるとか…』
『小言はやめて。寝れなくなるから』
歌ってあげる、と傍らの子がどこかの言葉で優しい歌を紡ぐ。
いつしか、静かに眠りに落ちていくようだ。



作品は観る者がいないと成立いたしません。観る者が1人でも成立いたしますが多ければそれだけ物書きという者ははりきるのです。観る者が育てるという役を選んでくれたなら物書きは安心して書くができるでしょう。