眠れない夜に
小さい頃、好奇心旺盛な僕はいろんなことに疑問を持っていた。
空が青いのはなんでだろう?自動ドアはなんで勝手に閉まるんだろう?あの建物には何があるんだろう?
外を歩くとそんな刺激だらけの世界でついついキョロキョロ周りを見渡してしまう。そんな僕は家に帰ってもたくさん考えごとをしていた。そんな考えごとには当然図鑑や辞書に答えの載っていないものもあって。
「僕の存在価値ってなんだろう?」
古来からずーっと考えられている悩み、なんてことは今になればわかるけど幼少の僕はそんなことを知る由もない。きっとあの青空を見て心が洗われるように僕の存在にも価値があって生まれたはず。そんな疑問はふとした瞬間に頭を支配し、そして他の存在を頭に浮かべてはがっくりと肩を落としていた。
***
例えば夜空に光る月。I love you、なんて言葉も生まれるほどに美しさをもつ月は美しくあるために生まれたわけじゃない。たまたま自然発生し、僕らの前でただ何も言わずにそこにいるだけだ。
それはきっと僕らもきっと同じで。僕らはなにか価値を持つために生まれたわけじゃない。今ここに実存していることがきっと価値なんだ。
実存する限り内在し続ける価値。
そこに意味付けしてくれた言葉はあくまでその価値を形容するものだ。僕も、そしてあなたでさえもこの価値を貶めることはできないよ。
夜の不安に塗れて自身に値踏みをしませんように。