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信用創造⑥・『2種類の日本円』


  

お金の種類:MBとMS、それぞれの特徴


 お金には種類があり、それぞれの通貨には発行者がいます。日銀当座預金や日本銀行券は日本銀行が発行者、預金は銀行が発行者というように。
お金の種類の分類方法として、マネタリーベースとマネーストックというものがあります。



マネタリーベースとは中央銀行つまり日本銀行が世の中に供給するお金のことを言います。現金(日本銀行券)と日銀当座預金の合計額のことです。
約670兆円あります。

マネーストックとは金融部門、つまり銀行などにより供給されている通貨の総量のことです。具体的には個人、法人、地方公共団体などが保有する現金と預金のことを言います。約1600兆円あります。

マネタリーベースは日銀当座預金を持っている銀行などが使えるお金です。金融機関どうしで短期間の資金の貸し借りをしたり、国債を購入したりといった取引をしています。一般人は日本銀行に口座を持たないので、マネタリーベースを受け取ったり、使ったりすることができません。

マネタリーベースとマネーストックを理解する上で一番大切なポイントは、この2種類のお金は同じ日本円でありながら、決して『混ざること』がないということです。民間の個人や企業はマネーストックの世界に生きているので、日銀と直接お金のやり取りをすることはありません。
また、銀行は自らが保有する日銀当座預金を使って給料の支払いを行うことはできません。

また、銀行は銀行間のお金の貸し借りにマネタリーベース(日銀当座預金)を使いますが、民間企業への融資のために日銀当座預金を使うことは決してありません。

日銀の金融緩和により、日銀は銀行の保有する国債をどんどん買ったんです。そうすると、銀行は国債を売った代金として、日銀当座預金をものすごくたくさん持つようになりました。そうすれば、銀行はどんどん融資を行って、マネーストックが増え、デフレから脱却できると考えていましたが、・・・実際には銀行融資は増えませんでした。



デフレが継続している中で企業が銀行から融資を受けてビジネスを拡大したいという意欲が弱かったためです。ちなみに、日銀が国債を買い取るときの方法というのは、信用創造そのものなんです。通常何かを購入するときは自分の持っている資産を差し出すものですが、日銀の場合は日銀当座預金を発行して支払います。銀行もさすがにそれはやっていません。日銀はお金を払うことと、貸すことの違いがないんです。                                                                                                                                                                                                                                                       
 


銀行はMB・MS両方の世界を知っている


銀行は唯一、マネタリーベースとマネーストックの両方の世界で活動する経済主体です。銀行にとってマネタリーベースは資産、マネーストックは負債です。銀行のバランスシートの左側にはマネタリーベースである日銀当座預金があり、右側にはマネーストックである預金が計上されています。


他の銀行から振込を受け入れると自分自身の負債が増える代わりに振込した銀行から日銀当座預金をもらうことができます。したがって、銀行は貸し出しの原資に使うためではなく、日銀当座預金による支払いを安全に行うために預金を集めているということになります。

一見すると、預金を貸し出しの原資と勘違いして預金集めに奔走しているように見えるのですが、実際は銀行自身が使える手元資金を増やすためにやっている、ということです。
 
 

今日のまとめ


日銀が供給するお金をマネタリーベース、銀行が供給するお金をマネーストックといいます。

マネタリーベースは主に日銀当座預金であり、金融機関どうしが短期間の資金の貸し借りをしたり、日本銀行が金融機関から国債を買い取ったりなどといった取引が行われています。個人や企業は日銀に口座を持つことはできませんので、なかなか想像することが難しい世界です。

銀行は、マネタリーベースとマネーストックの両方の世界で活動する経済主体です。銀行が預金集めに力を入れるのは、預金が貸出の原資になるからではありません。預金という負債を増やすことで、反対に日銀当座預金という資産を増やすことにつながり、自由に使える手元資金を充実させることができるからです。

今回は以上になります。



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