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自由詩、散文詩

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現代の日本語による自由詩または散文詩
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#記憶

[詩]はじまり

[詩]はじまり

オレンジ色にぼんやりと明けて
夢の裾から抜けだす朝
明るみにうすく目を開くと
 天井をまだらに横切ったのは
  見ていたはずの夢の名残りか
   昨日のつむじ風の切れ端か、いや
  子どものころの記憶の影だろうか
 首と手足が胴体に繋がり出せば
朝日の染み入る微かな音……
カーテンは金色に燃え
窓を開ければ風がはやしたてる
この街のざわめきと
この街で生きるものに、今日こそ
向い合うと誓うがよい

[詩]おくりもの

[詩]おくりもの

「あれはいかん、人でなくなる」
インパールを生き延びた祖父が云った。半世紀が経って、その言葉が呑み込めた。