大粒の雫が落ちてきて、アスファルトに水玉模様が広がっていく。街路樹の下に駆け込むと空が鳴った。 どうしてこんなタイミングで家を出てしまったのだろう。わたしが「最低」と呟いたとき、近くのカフェから出てきた、白髪交じりの店員の女性と目が合った。 店の前に可動式テントを延ばし、傘立てを置く。彼女が店内に戻っていくと、そこは通りすがりの人たちの一時避難所になった。折りたたみ傘を紫陽花のように鈴なりに咲かせ、散っていく。 今朝、同棲中の恋人と喧嘩をした。部屋着のまま、何も