広告会社の軸【その2】

 前回は、広告会社の軸となっているのは「Attention」を得ることと「枠」を押さえることというお話をしました。花火大会に例えるとわかりやすいのですが、斬新的な花火を打ち上げて、注目を集める「Attentionを得る」こと。その花火を見に来る人に向けて広告主のために、広告「枠」を押さえる(時にはイベント自体が枠となる)ということが広告会社の軸なんです。
 2回目の今回は、それに加えて「クライアント業務である」「委託を受けるオーダーメードの仕事である」ことについて、お話しします。

 ざっくりと分類して、世の中には、自らの意思を持って、製品なりサービスを提供している事業会社と、事業会社から委託されて、仕事をうける受託会社とあるかと思います。言い方は悪いですが、受託会社は、人のふんどしで相撲をとる会社ということですね。実は、この2つのカテゴリーを意識することが、仕事の選択においてとても大事な視点なんです。

 広告会社は、自ら何かを創り出すということはしません。受託業務として、クライアントから委託をうけて、オーダーメードのドレスを作るようなものです。ここに大切な視点があります。「クライアントが言うことがルールである」ということです。

 もちろん法令を遵守することは必要ですが、クライアントがよいと思うものを作り出さなければなりません。そこに「自分はこれがいい」という視点を入れる余地はありません。もしかしたら、自分が望ましいと思わない方向のものも提案しなければいけないこともある(例えば、原発は安全なエネルギーであるというメッセージを出して欲しいというリクエストに基づいて)

 よく広告業界を目指す学生さんがおっしゃるのが「広告業界で世の中に大きな影響を与える仕事をしたい」ということですが、クライアントファーストで出すメッセージに自分の色が入る余地はありません。自分が気に入っている製品の会社を担当できるわけでもなく、広告業が究極の葛藤の職業だと言われる所以です。

 印刷会社もそうですが、あくまでその道のプロとして黒子になって尽くすことができない人は受託業務を生業とする仕事には向いていない。ただし、いろんなクライアントと仕事をするうちに、バリエーションも増えて、その道のプロフェッショナルとなることができる。

 事業会社で、自分達の気持ち、思想の入った製品やサービスを作っていくか。受託会社で、多くの経験をつんでその道のプロになっていくか。もちろん途中から道を変えることはできますが、自分の特性や志向をよく考えて、方向性を決めてほしいと思います。

 このnoteでは、生きていくことにあたって、何があっても、自分に揺らぐことのない力を与えてくれる、企業においては他社と差別化して、顧客との約束を築くことのできる”軸”についての気づきを得られることについて書いていきます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?