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言葉のことばかり【吹き替え】

字幕と吹き替え

「吹き替え」って言葉、最近聞かないですね。
若い人はそもそも知らないかもしれない。
「外国映画のセリフを日本語に変えること」
いつの間にか使わなくなった。

理由はそもそも日本語版を
原語の「替わり」だと思わなくなった
ってとこにあると思う。

外国映画を見るときは字幕か吹き替えか選ぶ。
昔は字幕の方が偉かった。
吹き替えはちょっとね、子供じゃないんだから
なんて言われたもんです。

オリジナルに手を加えてるから本物じゃない。
そもそも邦画より洋画が格が上だと思ってた。
…ってのもあるかもしれません。
せっかく劇場で観るんだからオリジナルがいい。
変な感覚ですけど。

今は誰もそんなこと気にしない。
普通に自宅でも見られるしね。

自分もうちのテレビで見るときは、
ほとんど吹き替え版にしちゃいますよね。
そのほうがすんなり入ってくる。

自宅で「字幕」見るとしたら、
部屋を真っ暗にするくらいしないと
集中できない。

声優さんのレベルもすごく上がったし
もう「替わりなんかじゃない」ってこと。

あと今はアニメが強いから。
アニメにはそもそも吹き替える元がない。

何を吹き込むか

と、前置きが長くなったけど、
「吹き替え」って言葉、おもしろいよね。
「吹き」って何だ。ラッパじゃあるまいし。

また昔の話になるけど、
昔は録音することを「吹き込む」って言った。
レコードを吹き込む。みたいな。

今、レコーディングって言うと
音声データの変換、みたいに感じるけど、
昔はたぶん不思議なことだったんだよね。

レコードとかテープとか、
何もないカタマリに魂を入れる感じ。
「人形に命を吹き込む」って言い方もある。

「風船に息を吹き込む」の感覚が
いちばん分かりやすいかも。

「吹き込む」には
形のないものに形を与える
というニュアンスがあって、
声を入れることは息を入れること。
そして息を入れることは命を入れること。

なかなかにスピリチュアルではある。

YouTubeのファーストテイクなんか見てると
マイクに命吹き込んでる感じがします。

ふき‐こ・む【吹(き)込む】
風が吹いて中へ入りこむ。また、風に吹かれて、雨・雪などが中へ入りこむ。「雨が—・む」「すきま風が—・む」
吹いて中へ入れる。「風船に息を—・む」「新風を—・む」
ある精神・考え方を教え込む。「片寄った思想を—・む」
レコーダーなどを用いて録音する。「テープにメッセージを—・む」

出典:デジタル大辞泉(小学館)

「新風を吹き込む」という言い方もある。
この場合は息じゃなくて風だけど、
勝手に吹くんじゃなくて意志を持ってやる。
「新風を巻き起こす」ってのもあるな。

息も風も空気。空気を動かす。空気を変える。
目に見えないものが動いたり
変わったりすることを表現するために
言葉で見えるようにしたってことだな。
なんか吹き込まれると変わるみたいですね。

ちなみに
悪い思想を吹き込まれると人間が変わるので
注意が必要です。

次回の言葉は「タレント」です。




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