いちばの本棚〜タネと内臓〜
2019年 2月掲載
文:土の香農園 奥田美和子
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最近、“腸内フローラ”とか“善玉菌”とか聞く機会は増えたが、ここまで私たちは微生物のお世話になって生きているという自覚はなかった。
でも「土と内臓」「タネと内臓」という2冊の本を読んで、私たちはもろにミクロの微生物たちに助けられているんだということが実感できるようになってきた。
それと同時に私たちはなんとその微生物たちに過酷な環境を提供しているのかということもわかってきた。
農薬や化学肥料、添加物がいっぱいの食べ物たちが、微生物たちの働きをさまたげている。その結果としてさまざまな病気がおこっていると考えるとなるほどと頷ける。
極端な話だが、私たちが元気に幸せに生きるためにはとにかく微生物が嬉々として働ける土の状態をつくり、人体にとっては腸内細菌たちが最善の働きができるような食べ物と環境を供給してあげるという結論になる。
私にとって嬉しいフレーズがいくつかあったが、
「神経伝達物質を介して腸内細菌は人を幸せにできる」もそのひとつ。
そして「脳の健全な成長から記憶力まで左右する腸内細菌」となると、微生物たちに脱帽である。それほど私たちの最大の助っ人である微生物にたいして、私たちは真逆の待遇を加速させていることを、具体的にあげて警鐘を鳴らしているのがこの「タネと内臓」である。
種の危機は最も深刻で、腸内微生物が最良に働くためには、まず土壌の次に種が重要だから。世界中で実らない種、優性不稔の種にとって代わろうとしている状況は、まさに人類の自殺行為といえるかもしれない。
命をつなぐ種の力を感じたのが、広島の友人が20年かけてつないできた種を分けてもらってできた黄色い人参。里の市で少しだけ並べていたが、おそるおそる1本づつ買っていた人が、次は2本、3本と買ってくださる。ここに目に見えない世界のパワーが確かにつまっているのだと思う。
命は命を通してつながれていくし、生きとし生きるすべての生物はミクロの戦士たちの連携プレーによって成り立っているという、ごくシンプルな真実に思いをいたし、その戦士たちをいかに味方につけていくかが、この混沌の時代のキーポイントかもしれないと思った。
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