【創作物】Dear…ep3

※御本人たちとは関係ないあて書き小説です。

※とりあえず上げて後から校正しますw


   ※   ※   ※

 学校が休みの日はたいてい家に引きこもって頼まれた作業してたけど、まぁ、どうせ俺にとって何の利益もないし、今日は中川勝就に会いに行くって決めてた。

「この辺で…あ、あった」

 康祐君が作ってくれた地図のおかげでさほど迷わず到着することはできた。でも…

 どうやって会う?

 クラスメートであったとしても会ったこともない。向こうからしてみたら知らない人間だ。

「詰めが甘すぎんのよ…」

「せやな、詰めが甘いわ」

「えっ?」

 家の前でうろうろしていた俺に気づいたらしい家の住人が2階の窓から顔を出し声をかけてきた。

「俺の家に何の用?浦野秀太君」

「な、なんで、名前?」

「文哉からいろいろ話は聞いててん。そろそろ来る頃かと思ってんけどほんまに来たわ。」

 黒い髪をかき上げふわっと笑った。全然病んでいるようには見えないしクラスで人気だったのもなんかわかる気がする。

「まぁ、えぇわ。今日だれもおらんけど入って」

 そうして俺は中川宅にお邪魔することになった。一般家庭というとこういうものなのかわからないけどすごいおしゃれだった。友達んちに初めて遊びに来る時ってこんな感じなのかな? 俺ってもしかして普通の高校生っぽくない?

「なに、にやにやしてるん?」

 リビングに通されあちこち見ていたのが表情に出てたらしい。

「いや、なんかこう家とかに入るの初めてだからさ」

「いや、普通やで?」

「うん、それがいい」

「文哉が言ってた通り変な奴やな」

 ふふ、っと笑いながらコーヒーの入ったマグカップを出してくれる。

「で、君の目的は何なん?」

「佐野文哉と友達になること」

「…どこまで、知ってるん?ネットニュースくらいの話は知ってるやろ?」

「んー、まぁ」

 中川君はブラックコーヒーに一口口をつけるとふぅーっと長い溜息をついた。

「話して変わるかわからんけどな?」

 そう言って語り始めた。

    ※    ※    ※

「そんな目で見るな!」

 教師が佐野に難癖付けて怒鳴りつける。いつもそれが始まりで、クラスメートはその時が過ぎ去るのを石になって待っている。

ーどうにかせんとー

 その状況をどうにか打開したい、どうしたら良いか。逃げるという選択肢に気がつかなかった2人はいつも真っ向から戦ってしまっていた。

 その日も誰よりも先に中川が助けに行こうとしたがその日はいつもと違うことが起きた。

「勝、もう良いって」

 クラスメートが中川を止めた。中川が関わることでその時が長くなると思ったらしい。

「離せって、文哉が…」

「もうお前は頑張ったって、お前まで被害者にならなくて良いんだよ」

「良いことなんかないやん、なんで文哉だけがこんな目に遭うん?おかしいやろ!」

 クラスメートと押し問答してる間に教師が佐野を引き摺って教室の隅へ連れていっていた。いつも佐野は絶対やり返さず、抵抗しようともしなかった。そのせいで教師がエスカレートした可能性もあった。

「気にくわないんだよっ、お前のそういうところがっ」

 罵声を浴びせ蹴りつける。蹲りながら佐野が何を考えているのかはわからない。

 中川がクラスメートの手を振りほどき佐野に駆けつけたとき、佐野はフワッと中川に笑った。

ー大丈夫ー

「大丈夫やないやろ、文哉…先生!なんでこんなことするん?おかしいやろ!」

「お前は関係ないんだから黙ってろ」

「関係ないことありません。退いてください。今日はちゃんと保健室連れていきます。」

 弱々しくなった佐野を助け起こし歩き始めたとき慌てた教師が教室の隅にあった竹刀をもちだし殴りかかってきた。とっさに佐野を庇い背中を殴られた中川。中川が膝から崩れ落ちた。

「…うわぁぁぁーーーーーー!」

 瞬間佐野が叫び、教師に殴りかかった。今までけしてやり返そうとも反抗しようともしなかった佐野がキレたのだ。教師を押し倒し馬乗りになって殴り付ける。顔から鮮血が飛ぼうとやめようとしなかった。

「文哉、もうえぇ、大丈夫やから。」

 中川が止めるも暫くは手を止めなかったがそのうちはっと我に返った。

「……あ、ぁああああ」

 泣き出した佐野を優しく抱き締めることしかできなかった中川。血まみれの手で顔を覆って泣く佐野。大丈夫大丈夫と涙を流しながら慰める中川。

 そうして事件が明るみになった。教師の行っていた体罰は調べられ、佐野の暴力については体罰があったことから学校としては目をつぶることになったらしい。教師もそれについて被害届を出そうとしなかった。

    ※    ※    ※

「え、泣いてるん?」

 気がついたら俺も涙を流していた。中川くんも目を潤ませ言葉に詰まりながら話してくれてたのもあるけど…

「大変、だったよね?大変なんて言葉じゃ済まされないけど、辛かったよね?」

「まぁ、キツかったわ。」

「キツいこと聞いて悪いけど…君はどうして学校に来ないの?」

 中川くんは前髪をフワッとかき上げてふふと笑った。

「今、それ聞くん?」

「気になったから」

「文哉がな、壊れたんよ。」

 【壊れた】なんて感じなかった。教室では普通だったし、おかしいところなんて…。

「カウンセリングも受けたんよ?でも、教室に俺が居るとフラッシュバックするらしい。殴られた俺と血まみれの手が」

「それで…」

「俺が居ったらフラッシュバックして文哉が苦しむんよ?他の連中も俺が居らんかったらって言うし、勉強なんてどこでもできるしな」

 中川くんの言葉から強がっているように思えた。

「多分な、学校はそんなつもりで話したつもりはなかったと思う。でもな、俺に聞くんよ。『どうしたら文哉くんが普通にできると思いますか?』って。俺が居らんかったら文哉は普通に居れる。そんなら、俺が行く必要ないやん?」

 ー普通にできると思いますかーという言葉に胸がチクンと傷んだ。

「だから、文哉が自分から動けるようになるまでそっとしておいてほしい」

「今度、遊びに行きたいんだ」

「なぁ聞いてた?」

「聞いてた。」

「じゃあ遊びに行く話しはおかしいやろ」

「そうかな?」

「じゃ、俺からも聞いて良いか?」

「俺に?」

「【世界に誇る最高の頭脳】を持つ浦野秀太くんが俺らの学校に何しに来てるん?」

 俺が思っているよりこの世界は面白いかもしれないと思った。

 教室の片隅で窓の外を眺めるアイツと今目の前で不敵に微笑むコイツ。

 絶対友達になりたいと思った。

 コイツらなら、きっと…

             …ep.4へ



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