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【創作物】Dear… ep.1

以前、別のサイトに掲載していた小説(?)を加筆修正して載せたいと思います。

ラジオドラマのシナリオに近い、かな


 あくまで、本人たちとはなにも関係ないあて書きです。

 また、現実には起こり得ないファンタジーの世界だと思っていただけると嬉しいです。


【登場人物】

浦野秀太 

 主人公。高校生。

佐野文哉 

 秀太のクラスメート。サボりがち。

中川勝就 

 不登校生。たまに学校に行くが教室には姿を見せない。

本田康祐 

 秀太の同居人。

その他クラスメート 



    ※   ※   ※


なに?話って?

え、俺のやりたいこと?

なにそれ、そんなこと聞いたことなかったじゃん

え、待って

待って待って、わかんないわかんない

じゃ、俺…

そんな悲しい顔しないで

大丈夫、わかったよ

まだ受け入れられないけど

まだその時まで時間があるんだよね?

わかったよ

俺のやりたいことはね

普通の学校生活がしてみたい

友達作ってバカみたいに笑って

なーんで笑うんだよ?

それだけって言うなって

俺にとってはそれがずーっと夢だったんだから

だから俺の願いは

【普通の学校生活がしたい】


   ※   ※   ※



 俺は浦野秀太。ちょっと訳あって学校に行ってなかったけど、この度めでたく高校ってものに通えることになった。俺の学校生活はまぁ、それなりにうまく行っていた。すぐにある程度クラスメートとコミュニケーションもとれたし、楽しかった。

 ただ俺には気になるヤツがいる。いつも教室の隅でボーッと窓の外を眺めてるヤツ。何度も話しかけてるのに「あっ、そう」ってすぐ流される。でも、俺は負けない!絶対アイツと仲良くなりたいんだ。他のクラスメートとはなにか違う。俺はアイツと仲良くなりたいの!

 朝教室に入るとクラスメートが挨拶してくる。軽く返しながら席につくとクラスメートが話しかけてくる。

「おはよう、浦野。宿題終わった?」

「おはよ、終わってるよ。なにー、また終わってないの?」

「そうなんだ、頼むよ」

「別にいいけど、すぐ返してよ」

 なんて言って全て終わらせてあるワークを渡す。俺の視線は窓際のあの席を見つめていた。

「また、佐野?」

 そう、俺の気になるヤツー佐野文哉ー。窓際の1番後ろの席。誰とも挨拶しないし会話するのも見たことない。

「そうそう、気になるんだよね」

「俺は気にしない方がいいと思うけどね」

「んーまぁ、気になるじゃん?」

「お前も変わってるな」

「ありがと、変わってるは褒め言葉ですよ」

「ははは、ほんと面白いなお前」

 簡単に仲良くなれる相手なんかより、絶対面白いし、アイツは俺のワークなんか求めてこない。向こうは俺の事苦手だと思ってるかもしれないけど、俺には仲良くなる自信だけはあった。

 そうしているうちにアイツはやってきた。俺はすぐに窓際の席に駆け寄る。

「おはよ、佐野くん」

「…おはよ、今日も元気だね」

 嫌みが含まれた挨拶が返ってくる。

「元気だよ、元気が1番でしょ?」

「あっ、そう」

 ここでめげてちゃいけない。

「佐野くんは?佐野くんは元気?」

「まぁ」

「なんか冷たくない?」

「別に」

「なんでそんなにいつもつれない態度なんだよ」

「フツーだよ。ほら、先生来るから」

 シッシッと手を払われてしまった。なぜかどうしても距離を詰められない。

 席に戻るとさっきのクラスメートがだから言ったろと言わんばかりな視線で俺を見た。そして、すぐにチャイムがなり教師がやってくる。下らない授業の時間だ。普通の高校生はしたくて学校には来たけど、この時間は本当に暇。やることと言ったら、人間観察と間違った回答の思考を考察するだけで、別に寝ててもいいんだけどなにかもったいない気がする。

 結局窓際のアイツの観察をしてしまう。授業を受けながらもずーっと外ばっかり見て、俺の方なんかちっとも向かないの。目があったら満面の笑みで手を振ってやろうって思っているのに。

 窓の外を見てたアイツが突然立ち上がった。

「先生、ちょっといいですか?」

 教師が窓の外に目をやると、「あぁ、行ってこい」と短く返事をした。

「失礼します」

 と一礼してアイツは教室を飛び出していった。何があったのかとクラスメートに聞いたが誰も教えてくれない。

 ちょっとってなんなんだよ。

 結局その日は窓際のあの席は空席のまま。俺もずっと暇なまま。

「あー、つまんな」

 そうひとりごちてその日はそのまま帰宅した。

 

   ※   ※   ※


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