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聖書や神話を知らんと理解できんアートが多いのでエピソード別にまとめてみる(旧約聖書篇47) 〜サウル王とダビデの竪琴

1000日チャレンジ」でアートを学んでいるのだけど、西洋美術って、旧約聖書や新約聖書、ギリシャ神話などをちゃんと知らないと、よく理解できないアート、多すぎません? オマージュなんかも含めて。
それじゃつまらないので、アートをもっと楽しむためにも聖書や神話を最低限かつ表層的でいいから知っときたい、という思いが強くなり、代表的なエピソードとそれについてのアートを整理していこうかと。
聖書や神話を網羅したり解釈したりするつもりは毛頭なく、西洋人には常識っぽいあたりを押さえるだけの連載です。あぁこの際私も知っときたいな、という方はおつきあいください。
まずは旧約聖書から始めます。旧約・新約聖書のあと、ギリシャ神話。もしかしたら仏教も。
なお、このシリーズのログはこちらにまとめていきます。


さて、旧約聖書のスーパーアイドル、ダビデの登場だ。

ダビデを英語で書くと「David」。
そう、欧米でとても多い名前のデイビッドの元。

羊飼いから王になる、という出世も劇的だけど、まぁそれだけならサウル王もそこらのにいちゃんから王になったから一緒だ。

ダビデの場合は、

超美少年
竪琴の名手
戦場デビューで、巨人ゴリアテを石ころひとつで倒す
BL(Boy's Love)的に愛される
賢く内省的
とにかく人から好かれる

と、なんかかっちょいい要素が満載なのである。

現代で言ったら、イケメンで、ギターがうまくて、ケンカしそうもないタイプなのに実は強い。そのうえBL的透明感があって、成績もよくて、しかも謙虚な人気者。


そりゃ、子供にデイビッドって名前つける親が多いのもよくわかる。


つか、誰? ねえ誰?

最初は、『裸のビーナス』の頃の郷ひろみと思ったけど、成績良くて謙虚って感じがない、かな(失礼)。

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んー、わかんないけど、菅田将暉なんかちょっと近いかもしんないな。

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ダビデと言えば、ミケランジェロの「ダビデ像」が有名だ。
これも超かっちょいい。

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神からも人からも愛されるスーパーアイドルだけに、なんと目がハートだ。

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え?
よく見えない?

それじゃアップに。

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ハートでしょ?w

まぁ、これ、ミケランジェロは何も「目がハートなかわいい青年」を彫ろうとしたわけではなく、ダビデが巨人ゴリアテを仰ぎ見ているので黒目の上側が光に反射しているという表現らしいのだけど。

でも、ハートはハートだ。
さすがスーパーアイドル!

※ちなみに、ミケランジェロのダビデ像は、なぜ割礼をしていないのだろうか。イスラエル民族の神ヤハウェを信じるなら、男子は全員割礼をしないといけないし、当然ダビデも割礼はしているはずなのだ。
諸説あるようだけど、「古代ギリシャの彫像を意識したので、ギリシャ的美意識に準じた」という説がボクは一番しっくりくるかな。


ちなみに、ダビデについては名画テーマが多いのと、数人の人生が交差するのでちょいややこしい。

なので、最初に彼の人生を箇条書きでまとめておきたい(★にしたのが名画のテーマとして多いもの)。

ざっくり版「ダビデの一生」

●羊飼いをしていた少年ダビデは、預言者サムエルにいきなり「キミこそ次の王だ!」って、君こそスターだ的に言われる。「羊飼いをしながら時を待て」とも言われる。

ダビデは竪琴の名手だったが、その噂が王宮に届き、呼び出されて鬱に悩むサウル王の前で弾いたらとても気に入られ、毎晩、サウル王のもとで竪琴を弾くようになる

ある戦いでサウル王についていって、求めに応じて敵である巨人ゴリアテとデュエル(決闘)し、石ころひとつで奇跡の勝利。

●民衆熱狂。サウル王激賞。そして、サウル王の息子ヨナタンに惚れられ、親友になる。

●親友どころか、BL(Boy's Love)的になる。

●その後もダビデが出る戦争は常に連戦連勝となり、民の間でスーパーアイドルになる。

●町では「サウルは千を討ち、ダビデは万を討った」という歌は流行る。

極度の鬱に悩まされるサウル王は、ダビデに嫉妬し、ダビデが王位を狙っていると思い込み、彼を殺そうとする。

●すんでのところでダビデは逃亡し、国中を逃げ回る。

●逃亡の途中で、ダビデはサウル王を殺す機会が何度かあったものの殺さず、そのことをサウルに訴え、サウルと和解する(でもサウルはすぐ戦死する)(同じ戦いで親友ヨナタンも死ぬ)

●ダビデは悲しみに暮れ、哀悼の歌を詠む。

ふぅ、まだ半分だ。
前半はサウル王との確執が主。
後半は不倫と、息子との権力争い。

●民の声におされ、ダビデは王になる。またしても連戦連勝でペリシテ人を撃退し、イスラエル統一を果たす。首都をエルサレムに置く。

●民の声を聴く名君として王の仕事をこなす。

ある日、王宮を散歩中、ひとりの女性の水浴を見てしまい、一目惚れする。

その女性はバト・シェバ。ダビデは彼女と不倫し、彼女の夫をわざと戦場の最前線に送って殺してしまう。

●ダビデに仕える預言者にそれを糾弾され、神からも叱責される。ダビデは猛省するが、結局バト・シェバを娶り、子供を授かる。それが次の王ソロモン。

●ダビデには8人の妻、10人の側女、18人の息子がいたが、三男のアブサロムは野心家で王位を狙い、父ダビデに謀反を企てる。

●ダビデは逃亡する(とにかく逃げ足が速い)。民たちが次第にダビデの元に集まり、アブサロムを返り討ちしてしまう。

(そのとき、アブサロムは木の枝に金髪が絡まって動けなくなっているところを討たれる、という漫画みたいなことが起こる)

●自分が討たれそうになったのに、息子が死んだことをひたすら悲しむダビデ。一貫してそういう性格。

●ダビデは名君だったが、実の息子との権力争いが絶えず、わりと不幸な晩年だった。死ぬ間際にソロモンを後継に任命して、死ぬ。


・・・ざっくり書いてもこんな感じ。長いな。

名画でいうと、★印の部分がよくテーマになる。

「竪琴を弾くダビデ」
「ゴリアテとの戦い」
「竪琴を弾くダビデを襲うサウル王」
「ダビデとバト・シェバ」
「息子アブサロム」

この連載でも、この5つをテーマとして取り上げようと思う。

で、今回。

ちょっと長くなるけど、上のうちの、「竪琴を弾くダビデ」「竪琴を弾くダビデを襲うサウル王」を(ほぼ同じテーマなので)この一回で取り上げたいと思う。

では、今回のストーリーを追ってみよう。

預言者サムエルから油を注がれ、サウルが王になったのは前回書いた。

※「油を注ぐ」とは、オリーブオイルを頭に注ぎ、神に仕えるものとして聖別する儀式のこと。聖別の儀。
ヘブライ語で「油を注がれた者」を「メシヤ」と言う
ちなみに、キリストも本来は「油を注がれた者」を意味するギリシャ語


最初はサウル王に従わない人たちもいた。
そりゃそうだ。さっきまでそこらのにいちゃんだったんだから。

でも、戦い始めると連戦連勝で、民に認められる。

ただサウル、そこらのにいちゃんだけに、「神に選ばれた王」という自覚が薄い。

「えー、王になるの? めんどっちぃなぁ」程度に思っていたサウルなのだ。だから神の言葉を真剣に受け取らず、目の前の利に釣られたりする。

で、アマレク人との戦いにおいて、サムエルの言葉(サムエルは預言者なので、サムエルの言葉はつまり神の言葉)にそむくのだ。

「アマレクをことごとく滅ぼし尽くせ、皆殺しにせよ(と神がおっしゃっている)」

と言われたのに、敵の王が「助けてくれー。なんでもやるー。よく太った牛も羊も全部やるー」と言う言葉を聞いて、「んー、それ、いいね! そりゃこんな牛とか羊とかまで殺しちゃうのもったいないし」と思い、命を助け、戦利品を分捕る。

これにサムエル(=神)の怒りが炸裂する。

「サウルよ、呪われよ。
皆殺しにせよとあれだけ言ったではないか。
よくぞ神の言葉を踏みにじったな。
よーくわかった。もーわかった。
神もわしもお前を見捨てる。
お前はもうイスラエルの王ではない!」


いや、たった一回、欲が出ただけじゃん!

サウルは「え!」って驚いて謝りまくり、サムエルにすがるんだけど、その後いっさいサムエルはサウルを許さないの。

マジかよ~。
というか、サムエル、あんたがサウルを指名したんやで。もうちょっと寛容に育てようやなぁ。。。

ジョン・シングルトン・コプリー
預言者サムエルがサウル王を糾弾しているところ。サウルは「ああああ、やばい、まずった!」ってなってるけど、もう一生許してくれないんだな。不憫だなぁ。

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ハンス・ホルバインも描いている。
サムエルの上にある看板みたいのが書かれていないので、まだ描きかけか、下描きかもしれない。

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サムエル「皆殺しにせよ、って言うたやないか!」
サウル王「ファ?」

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サウルはサムエルに謝り、サムエルのマントを破ってしまうほどサムエルにすがるのだけど、サムエルは取りあわない。

これ(↓)は聖書の挿絵かな。
「サウル王、サムエルのマントを破る」というタイトルw びりびりびり。

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なんか可愛そうだよね、サウル王。
「どうやっても許してくれない」と知ったサウル王は、ノイローゼになって極度の鬱に陥ってしまう。

一方で、預言者サムエルは、あっさりと次の王を探しに旅に出る(冷たい!)。

で、あるところで羊飼いの少年ダビデを見出し、油を注ぐのだ。

「お前が次の王だ。でも、時が来るまで待っときなさい。そのうち王として迎えられるであろう」


フェリックス・ジョゼフ・バリアス
ダビデを見出したサムエルが油を注いでいる。

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クロード・ロラン

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ロランなので景色が主役だけど、よく見ると左の方でドボドボと。
ダビデは「冷たっ」って首すくめてる。

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ヴェロネーゼ。
こりゃなんだ。サムエルはオリーブオイルを容器に移し替えているっぽい。ダビデは「まだっすか」って。

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ちなみに芸が細かい絵で、左奥とかにちょっとしたお笑いを用意してる。

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テレビもネットもない時代だし、こういう絵を客間とかでみんなで細かく見て喜んでいたのかもなぁ。


これはジェームズ・ティソさん。
角の入れ物だ。

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さて、そんなころ、サウル王は極度の鬱で引きこもっている。

王がそれでは政治もうまく行かないし、戦いもままならない。
なので、部下が気を利かせる。

「王さま、気晴らしに琴の音色でも聴かれたらいかがでしょう? 琴の名手である少年がいます。そいつを呼んでまいりましょう」

で、竪琴の名手として知られていた羊飼いの少年ダビデが呼ばれるわけ。

夜の寝室。
ダビデはサウル王の前で竪琴を弾く。

サウル「おお、なんと気持ちが安らぐことか。少年よ、毎晩来てくれないか?」
ダビデ「はい、仰せのとおりに」

これが「人類初の音楽療法」と言われているもの。

巨匠レンブラントから2枚見てみよう。

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なぜかレンブラントは2枚ともサウル王の左目が変。
2枚目は泣いている風に見えるけど、一枚目はなんだろう。巨匠がたまたまこう描くということはないので、なにか意味があるんだろうけど、よくわからないな。

まぁとにかく、サウル王はよなよなダビデを呼んで竪琴(リラ)を弾かせるのである。

その竪琴はこんなんじゃないか、と言うのがYouTubeにあったので、見てください。これが正しいかどうかはわからない。


マルク・シャガールさんもこの場面を描いている。
琴の名手ダビデが弾く音色に涙するサウル王。
完全に音楽療法だな。

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ベルナルド・カヴァッリーノ

これは竪琴というよりギターだね。うっとりするサウル王。

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Nikolai Mikhailovich Plusnine
極度のノイローゼになっているサウルの感じがよくわかる。ダビデはただただ美少年的。

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Nikolay Zagorskiy
全体に安らいでいるけど、サウル王の目だけが暗い。

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アーンシュト・ユーセフソン(Ernst Josephson)。
この絵のサウル王も暗いなぁ。悩みまくっている。
その前で、半裸で弾くダビデ。
・・・というか、妙になまめかしい。手前に花なんかもあって、愛の予感を感じさせる。

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ジュリアス・クロンベルク
この辺になってくると、ふたりの親密な時間、という感じになってくる。
頬杖ついてうっとりしているサウル王。
・・・ん? 音楽に? ダビデに? どっち?

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こうやって絵を見てきて、最初は普通に「あーサウル王がうっとりと竪琴を聞いているなぁ」と思っていたけど、ダビデの物語をいろいろ読んでいってBL(Boy's Love)的要素に気づいてからは、上の2枚とか、ちょっと怪しげに思えてきた

特に上のジュリアス・クロンベルクの1枚。
これ、なんつうかもう、サウルの目線に愛しか感じない。

というか、もしかして、ダビデって、サウル王の息子ヨナタンとBL的になるだけでなく、父親ともBL的になるという、超複雑な物語????


で、きわめつけは、この1枚。

ボクはこれを「今日の1枚」にしたいと思う。

ゲルハルト・フォン・キューゲルゲン

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このダビデ。
頬を上気させたダビデ。
ひたすらサウル王を見つめるダビデ。

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いやいやいや、もう完全に愛しているやん!

じゃ、どうしてサウル王はそっぽを向き、槍まで持っているのか。

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これは、実は物語が進んでいるんです。

毎晩毎晩、親密に寝室で竪琴を弾いていたダビデ。

ある日、サウル王について戦場に出る。

そして、敵将・巨人ゴリアテをデュエルであっさり倒してしまうのだ(それについては次回)。

で、彼は「スーパースター兼勇者」に転職する(ドラクエやらない人にはわからんか)。

そして、他の戦場でも彼が行くと連戦連勝。
「♪ サウルは千を討ち、ダビデは万を討つ〜」みたいな歌までできる。

上の絵は、その後、なのですな。

つまり、サウル王は、ダビデに嫉妬している。
預言者サムエルに見捨てられただけでなく、ダビデに人気でも実力でも負け、もう嫉妬が憎悪に変わっている。

ちょっと前まで愛していたからこそ、可愛さ余って憎さ百倍。

ダビデは相変わらず頬を上気させてサウルの前で竪琴を弾くんだけど、サウル王は愛が憎しみまで育ってしまっているわけだ。


この辺(↑)、ボクの個人的妄想です。

ただね、ここから以下、サウルが半狂乱になってダビデを殺そうとする絵が続くんだけど、そしてその後も執拗にダビデの命を狙うんだけど、極度の鬱とは言え、なんか極端だよなぁ、と思っていたんだよね。

でも、BL的な関係だったのなら、わかる
そりゃ半狂乱にもなるわ。
というか、ほとんど痴話喧嘩のようなんだもん。


Erasmus Quellinusの絵も、上気した頬のダビデ。
つまりBL的な解釈だと思う。
サウルは槍を掴んで次の瞬間には突こうとしている。

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マッティア・プレティのサウルは、そっと槍に手をやり、ダビデを討つ準備をしている。ダビデはサウルをじっと見つめている。

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ベルナルド・カヴァッリーノ
。 
「よせ、もうよいダビデ!」と、我慢できなくなってきたサウル王。

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イワン・トヴォロズニコフ
ダビデは気がついていないが、サウルは武器に手を伸ばす。愛が憎しみにかわった瞬間。

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Nikolaus Knüpfer
 愛と嫉妬と怒りが入り混じり、半狂乱になるサウル。
ダビデは愛を込めて弾いていただけに、ただただ驚きおののいている。

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ぬお〜〜〜!
好きだけど、大っきらいだあああ〜〜

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アントニ・ブロドフスキ

もう完全に槍を構え、躍りかかる直前。ダビデはサウルを信じているのであまり逃げないで、愛を思い出してもらおうとしている。変なポーズだけど。

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聖書の挿絵。
もう槍を投げる寸前、みんなに止められる。

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フランス・ウォルフハーゲン
なんか全体的に服装がぼってりしてるけど、パレスティナのあたりってこんなに寒いかなぁ。ダビデをかばっているのはたぶん息子ヨナタン。
たぶんサウルはそれを見てもっと激昂する。だってダビデの取り合いだ・・・。

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アーサー・シク(Arthur Szyk)。
この絵はいいなぁ。美しいダビデ。愛と憎しみに燃えるサウル。

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ジェームズ・ティソさんの絵は相変わらず独特だw
ダビデが弾いているのは、なんだろう、竪琴じゃないよなぁ。サウルの槍はダビデに向いていない。つまり殺す気はない「単なる痴話喧嘩」を描いたのではないだろうか。

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ヤン・アドリアエンツ

ダビデ、勇者とは思えない逃げ方w

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ウィレム・ヴァン・エルプ
もう半狂乱のサウル王。みんなに必死に止められる。美しいダビデはこの期に及んでも「え?」って。

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ギュスターヴ・ドレさん。
こんな近距離で槍を向けられている。でも、ちゃんとダビデは逃げるわけ。つまりサウルは本気で殺そうとしていない、ということじゃないかな。

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Francisco Fernández
なんかダビデのイメージが違いすぎるけど。でもサウルの勢いに比べて、ダビデの逃げ方が余裕ありすぎる。
というか、槍の矛先がお尻に一直線なんだけど、、、考えすぎですねw

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グエルチーノ
この絵のサウルの見た目はイメージ近いな。背がとても高くてひょろっとしているサウル。
ダビデは「ええ! ちょっとそんなんやめて!」って媚びながら逃げる。

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ユリウス・シュノル・フォン・カロルスフェルト
もう槍を投げちゃったな。
いくら運動神経抜群なダビデとはいえ、この近距離で逃げ切れるとは。本気で殺そうとしてはいないと見た。

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コンスタンティン・ハンセン
いやぁ、間一髪だけど、でも、すばしっこいダビデがこんなギリギリまで逃げないのは、サウルを信用していたからだと思うんだな。

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シャガールさん。
実はダビデ、サウルの娘ミカルと結婚しているんだけど、そのミカルが「このままここにいたらお父さまに殺されちゃうわ」と、ダビデを逃がす

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ギュスターヴ・ドレさん。
これも妻でありサウルの娘ミカルがダビデを逃がそうとしているところ。

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このあと、ダビデは逃げまくる。

サウル王は狂い、家臣全員にダビデ殺害を命じる。
王宮を脱したダビデは追手を避けて放浪する。

ダビデは何度も危ない場面をくぐり抜けたが、何度か逆にサウル王の陣地に潜り込み、サウルの寝室に入る。そして、サウルの槍を盗んだり、サウルの服の一部を切り取って持って帰ったりする。

そして、

「私は王を殺すタイミングは何度もあった。でもあの方は私の主君であり、神が油を注がれた方だ。私はそんな王を殺せない」

と軍勢に告げ、サウル王はそれを聞いて悔恨の涙を流す。

いや、いい場面なんだけど、BL的に見ると、やっぱ痴話喧嘩感が拭えないんだよなぁ(個人の印象です)。

ドレさん。
「私はあなたの服を切り取りました! 殺す機会はあったのに殺さなかった!」ってダビデが訴えているところ。

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ま、ちょっとボクのBL的妄想で話を引っ張りすぎたかもしれないけど、ボクの中では「壮大な痴話喧嘩」に見える、ダビデとサウルの物語でした。


最後の一枚は、クリスチャン・サートマン。

ミケランジェロが彫った雄々しいダビデとはずいぶん違う。そりゃたくましいんだけど、線の細さがよく出ている。
やっぱこれもちょっとBL的解釈だよね(しつこいってば)。

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さて、次回は、ちょっとだけ時計を巻き戻して、サウル王が狂う前のお話。

超有名な、ダビデとゴリアテのお話だ。



このシリーズのログはこちらにまとめてあります。

※※
間違いなどのご指摘は歓迎ですが、聖書についての解釈の議論をするつもりはありません。あくまでも「アートを楽しむために聖書の表層を知っていく」のが目的なので、すいません。

※※※
この記事で参考・参照しているのは、『ビジュアル図解 聖書と名画』『イラストで読む旧約聖書の物語と絵画』『キリスト教と聖書でたどる世界の名画』『聖書―Color Bible』『巨匠が描いた聖書』『旧約聖書を美術で読む』『新約聖書を美術で読む』『名画でたどる聖人たち』『アート・バイブル』『アート・バイブル2』『聖書物語 旧約篇』『聖書物語 新約篇』『絵画で読む聖書』『中野京子と読み解く名画の謎 旧約・新約聖書篇』 『西洋・日本美術史の基本』『続 西洋・日本美術史の基本』、そしてネット上のいろいろな記事です。


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