保護猫のふねの話
アタイの話をするワ
アタイの父さんは近所じゃ有名な悪ドラ
母さんは真っ黒の毛がツヤツヤしたとびきりの美猫だったワ。
アタイたち兄妹は、近くの公園の右手にある林の奥に住んでた
ここなら安全だからって、母さんはよく言ってたっけ
アタイは7匹兄妹の末っ子産まれ
三毛猫はアタイだけ
アタイはこの毛皮が嫌いだった
女のコだし、なんだか変な柄だったしネ
毎日の毛づくろいの練習も、アタイだけいつもふて寝してたっけ
アタイの毛皮をキレイにしてくれたのはいつも母さん
アタイが「母さんみたいな毛皮が良かった」って言うと
「あなたの毛皮はとくべつなのよ」って念入りにキレイにしてくれたのを覚えてるワ
ある日、公園の工事がはじまって、母さんとはそれっきり
保護されたアタイたちは、ペットショップの店先で
「野良猫が赤ちゃんを産みましたもらってください」
張り紙と一緒に
兄妹7匹、鳥かごに入れられたワ
アタイは、人間がのぞき込むたびに、
すみっこでずっとふて寝
まったく!どうして鳥かごなのよ!
いまいましい!
次々に兄妹たちがもらわれていくけど、アタイはまだ鳥かごの中だった
ある日、アタイに話しかけてきた人がいたワ。
そんな人はじめてだった
「あなた、三毛猫だけどお鼻に黒猫がいるのね」そう言うと
アタイを大事そうにカゴの中から取り出した
腕の中で揺られながらアタイはその人を見上げてた
顎の尖った輪郭や、黒目がちな瞳はキラキラとキレイで、どこか母さんに似てたワ
「そうヨ。アタイの鼻には母さんがいるのヨ。」
アタイはそう言うと立てていた爪をゆっくりしまった。
黒いセーターは母さんみたいにあったかかった。
フネの話。
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