友の家

友の子と友の家に寝て裏山を夜汽車の過ぎゆく風音を聞く 村田弘子

『塔』2023.8

  この短さのなかに、「友」という言葉が2回出てくる。重ねて言うことで、友の不在が感じられるのが、不思議だ。英語でも、こうなるのだろうか。
 後の歌を読むと、介護施設にいる友に、友の子と一緒に会いに行く前の晩なのだと分かる。
 家、裏山、電車の地図が描けそうなくらい、場面がイメージしやすい。夜汽車のさびしさをきしませるような音。友がいなくてさびしいけれど、友の子の存在は心づよい感じがする。