自転車の短歌
自転車は一台あれば用が足りる。なぜなら、私の身体が一つだからだ。とはいえ、故障したりした時のことを考えると、もう一台あるのも悪くない。
二台所有するとなると、なるべく同じ頻度で、それぞれを稼働した方が具合がいいだろう。それは、チェーンの油を巡らせるという観点から。
それなのに、寒い日の身体が、サドルの低い方ばかり選んでしまうのはなぜか。寒い日の身体を思い出してみる。首をすくめて、背をまるめて、うずくまりたくなる。風を受ける表面積を減らすためだ。サドルが低い方が風がとおりにくそうだ。
原初的なアフターサービスに胸を打たれた。そりゃあ、何かあったら、またウチに来てねってこともあるとは思うけど。私が自転車屋なら、売上アップのためにインターネットに広告にでも出そうかなどと考えて、パソコンに向かってしまいそうだが。この自転車屋さんは違う。往来をながめる。そして、売った自転車を見つけたら、思わずうれしくて声をかけてしまう。「調子はどうだい」と。