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おっとせい

侮蔑しきったそぶりで、
たゞひとり、
反対をむいてすましてるやつ。
おいら。
おっとせいのきらひなおっとせい。
だが、やっぱりおっとせいはおっとせいで
たゞ
「むかうむきになってる
おっとせい。」

金子光晴「おっとせい」

 最後の二行がこれ以上ないかんたんなことばで、これ以上なく存在の核心を衝く。宴会の隅などで、ああ、また俺はむこうむきおっとせいしてるなあ、なんて思うわけである。

小池光『うたの動物記』

 社会になじめない。世間話が分からない。人と笑い合うことができない。人間嫌いの人間も、おっとせいから見れば、たんに、違う方向を見ている人間なのだろう。
 「むこうむきおっとせい」と思うと、ちょっとかわいくなる。