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【ホラー小説】日記と私と夢うつつ

 ──日記とは、人が持つ人生そのものである。  赤木 結子はごく普通の社会人だ。日々の仕事に疲れ、毎晩のビールを楽しみにしているだけのただの一般人。好物はイカの塩辛で、趣味は日記を書くこと。変わったところと言えば、少しだけ霊感が備わっていることくらいである。  結子が持つ霊感とは、心霊番組や掲示板で語られるほどの大仰なものではない。人とは違うものが見えることもなければ、それにまつわる怖い体験をしたこともない。 「霊感があるなんて言っても特別なことは何もないですよ。気圧が低くな

    • 【ホラー小説】怪異とボクと帰り道

       身の毛もよだつ恐ろしい怪異。  引き返すなら今のうち。  後ろを振り返ると、奇妙な文字の看板がこちらを向いていて、彼とボクは森を抜けた。 「さ、ここからは一本道だ。しかし、あの図書館にお客さんが来るのは本当に久しぶりだったよ。私も長くあの図書館にいるが、君みたいに若い子が来るのは珍しいね」  青年の彼は嬉しそうに笑う。  今から数時間前、ボクは背後に広がる森の中で図書館を見つけた。  その図書館は暗い木陰の下にひっそりと佇んでいて、何十年も前からそこにあったように寂れていた

    【ホラー小説】日記と私と夢うつつ