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確かにこれが私かも知れない 自己評価靴、アキレス・ソルボ

 画像は公式サイトのページをスクリーンショットしたものです。

 自問自答ファッションではおなじみフレーズ、「靴は自己評価」。
 そんな中、私は長い靴の放浪を終えて、もうこの靴しか履いていないのです。アキレス・ソルボのC530。

 2足をずっとローテーションしております。
 片方は4年くらい前に買って履き倒し修理に出し、さすがにややくたびれた印象になったので、ローテーションの中でも特に雨の日やハードな道を歩いて汚れるかも知れない日はそちらを選んで使っています。
 もう1足は去年の4月に買って、1回メンテナンスに出し、同じように履き倒し中。

 ありとあらゆる要素が、今の私にぴったりで、この靴がいいと気付いてからは、全く靴を探さなくなりました。この記事を書くのに久しぶりに公式サイトを見たら、とてもきれいなライトグリーンの新作が値引きになっていたので、ちょっと心が騒ぐけど(笑)。

 この靴を、普段の買い物にも、散歩にも、謎解きにも、旅行にも、レストランの食事でも、履いていきます。さすがに冠婚葬祭だと社会的問題が発生する恐れがあるので、黒い紐で結ぶパンプスを使うけど、会場に着いてからパンプスに履き替えることが多いです。
 グラン・メゾンクラスのレストランでも一応パンプスで行くのですが、正直なことを言うと青山のレフェルヴェソンスでもアキレス・ソルボで行ったことがありまして、問題はなかったです。レフェルヴェソンスはSDGsなどにも力を入れる、格式や伝統よりもガストロノミー重視のお店なので、大丈夫だったのでしょう。

★★★

 アキレス・ソルボは、おそらくウォーキングシューズ、タウンシューズにカテゴライズされるブランドで、履きやすさを重視しています。紐靴でもいわゆるスリッポンができるようになっていて、革が非常に柔らかいので、とにかく歩きやすく、疲れにくく、脱ぎ着しやすいのです。
 散歩や周遊型謎解きで1万歩2万歩とやる人間なので、この歩きやすさ、タフさには助けられています。
 そしてアキレス・ソルボの特徴は、純粋に履きやすさ・歩きやすさだけでなく、本革を用いた上品なデザインで、フォーマルな印象も与えてくれること。
 周遊型謎解きをしたその足で、コース料理を出すレストランに行って夕飯……などという休日が多い人間なので、ヘビーな歩きもレストランもしれっとした顔で自然になじんでくれるのが、本当に嬉しい。

 実は、超有名な某海外ブランドのスニーカーも、足型測定をした末に1足だけ試しに購入しているのですが、悪くはないもののやはり印象がカジュアルすぎ、あと固くて、違うな……となってしまい、今は靴箱のこやしです。傷む前に中古市場に放生してあげた方がお互いの幸せになるかも知れない……。

★★★

 私は、日本人平均よりもかなり足が細く長く、しかし甲は高く、さらに指のバランスもちょっと違うらしく、アシックスで足型測定した時には店員さんに「こういう足の人は滅多にいないです、私は初めてお会いしました」と言われ、お出しできる靴は紐で調節できる1足しかありません……となったことがあります。
 店員さんの盛りトークなのではないか、いやそこまで平均から外れてはおらんやろ、と思いたいところなのですが、今の日本の靴市場は圧倒的に「4E以上幅広」がメインストリーム。確かに私の靴人生は「長さに合わせるとガバガバ、細さに合わせると親指が拷問、そして甲が常に痛い」でした。
 紐がないと、数歩のうちに靴がすぽーんと「飛んでいく」。これは大袈裟な表現ではなく、ガチで靴が飛ぶのです、数メートル先に。パンプスやバレエシューズはもちろん、ブーツタイプのレインシューズまですっぽ抜けて飛んだ時には唖然としましたね。
 香港でサイズを計測してパンプスをオーダーしたこともあるのですが、職人さんがずっと顔をしかめて「ナローナロー」と連発し、結局できたパンプスもあまり足には合いませんでした。

 そんな足の持ち主にも関わらず、歩き倒すタイプで、足が痛いという現象には我慢ならないのです。私がこの世で嫌いな言葉トップ10のうち、「おしゃれはガマン」が3位くらいにランクインします。

 そういう靴人生を送っていたところ、たまたまアキレス・ソルボの実店舗を通りかかる機会があり、その時はつれあいが靴を探していて一緒に訪問したのですが、ついでに私も靴を見繕ってもらっていいですかと軽い気持ちで足を見せました。
 見せた瞬間に店員さんが、
「この足ではずっと苦労されたでしょうね。日本だと合う靴がほとんどないと思います」
と即答されました。
「うちのブランドでも、ぴったり合う靴は正直そんなにないんですけど……これとか、これならもしかしたら」
と出してくれた靴のうちの1足を、私は購入したのでした。
 その時は、もう私の足の苦労を見抜いて言い当てて理解してくれたことが何より嬉しくて、靴がそこまで自分に合うかどうかはよくわからなかったのが本音です。

 ところが、これが私にとってのガラスの靴でした。
 きれいで、やわらかくて、歩きやすくて、親指が縮こまらなくて、レストランに履いていっても問題ない。毎日うっとりと「幸せ♡」とメロメロする訳ではないのですが、質実で、どんなに時間が経過しても靴に対して「違和感」や「不満」や「苦痛」がわかないのです。
 マイナスがない、というのが、私にとって何よりも大事なことなのだと、数年履くうちに気付いたのでした。

 残念ながらその時の店舗は、コロナ禍のためかなくなってしまい、あの店員さんとも再会できる見込みはもはやありません。
 新しく買った靴は別のアキレス・ソルボ店舗で、「これと同じか、限りなく近いデザインのものをください」と探してもらいました。
 私の「苦痛がない靴」のアタリ判定は極端に狭いため、アキレス・ソルボのラインナップの中でも履けない靴の方が多いです。その時もかなり色々試して、ようやく今の靴を購入しました。

★★★

 あきやあさみさんのトーガほどの放浪はしていないですが、私のささやかな靴彷徨は、こんな感じです。
 魅力的な魑魅魍魎が跋扈する靴世界(褒めてます)において、高額でもハイクラスでもないですが、私が行く世界全てに寄り添う靴だと自信を持って言えます。靴に自信をもらっているというよりは、「足を預けられる信頼できる相手にめぐりあえた」という感覚です。
 靴の手入れもそこまできっちりしている訳ではないので、へたれてもいるのですが、いつまでも新品の顔をしてくれることを求めていないし、これはこれで私という人間だなという良い意味での納得感はあります。
 この靴で断られるところには、もう基本的に行かないつもりです。(まあつれあいが行きたいグラン・メゾンの場合は、相手の気持ちを尊重したいので例外ですが)

 自問自答ファッションの自己評価靴というと、「高額のハイブランドのすごい靴」話が多い気がするので(それはそれで楽しい話で読むのは好きです)、こういうパターンのストーリーも1個くらい混ざってていいかなと思いました。

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