見出し画像

エッセンシャル思考~最小の時間で成果を最大にする~

エッセンシャル思考~最小の時間で成果を最大にする~
グレッグ・マキューン=著

第1章 エッセンシャル思考と非エッセンシャル思考

賢く生きる者は、不要なものを排する ー林語堂

◆より少なく、しかしより良く

エッセンシャル思考とは何か?
「今、自分は正しいことに力を注いでいるのか?」と絶えず問い続けるのが、エッセンシャル思考の生き方である。

沢山のことをやり遂げる技術ではなく、正しいことをやり遂げる技術だ。
自分の時間とエネルギーをもっとも効果的に配分し、重要な仕事で最大の成果をあげるのが、エッセンシャル思考の狙いである。

エネルギーが分散していたら、前に進むことができないが、一つに集中してエネルギーを注げば、大きく前進できるということだ。

◎エッセンシャル思考の人は、適当に全部をやろうと考えない。トレードオフを直視し、何かを得る為に何かを捨てる。
◎たくさんの瑣末な事柄から少数の本質的な事だけを選び取る。不要なものはすべて捨て、歩みをさまたげるものもすべて取り除いていく。

⇒要するに、自分の力を最大限の成果につなげるためのシステマティックな方法であり、やるべきことを正確に選び、それをスムーズにやり遂げるための効果的なしくみなのだ。

エッセンシャル思考は、より多くの仕事をこなすためのものではなく、やり方を変えるためのもの。そのためには、ものの見方を大きく変えることが必要である。

エッセンシャル思考になる為には、3つの思い込みを克服しなくてはならない。「やらなくては」「どれも大事」「全部できる」―この3つのセリフは、非エッセンシャル思考への罠への巧みに誘う。
エッセンシャル思考を身に着けるためには、この3つの嘘を捨て、3つの真実に置き換えなくてはいけない。
「やらなくては」⇒「やると決める」
「どれも大事」⇒「大事な事はめったにない」
「全部できる」⇒「何でもできるが、全部はやらない」
この3つの真実が。私たちを混乱から救い出してくれる。ほんとうにだ時な事を見極め、最高のパフォーマンスを発揮することが可能になる。

◆本質を見失うことの代償は大きい

本質を見失うことの代償 ⇒ 
自分で優先順位を決めなければ、他人の言いなりになってしまう。

ただし、優秀な人ほど自分にとって大事なことを見分けられなくなっている。理由の一つは断ることを極端に嫌う世の中の風潮だ。

◆優秀な人ほど成功のパラドックスに陥りやすい(省略)

規律なき拡大は失敗への道

◆人はなぜ方向性を見失うのか

⇒選択肢が多すぎる/あれもこれも欲しがらせる欲張りの時代/他人の意見がうるさい

人生も仕事も、クローゼットと同じだ。必要なものと不要なものを区別できなければどうでもいいことで埋め尽くされてしまう。捨てるしくみを作らない限り、やることは際限なく積みあがっていくばかりだ。

エッセンシャル思考のクローゼット整理法
1.評価する
 いつか着る可能性があるだろうか?という考え方はやめよう。その代わりに「大好きか?」「すごく似合うか?」「しょっちゅう着るか?」と考えよう。 仕事に置き換えると、これをやったら、ほかの何よりも重要な成果が得られるかどうか?
2.捨てる
クローゼットの中をいるものといらないものにわけて、さて、今すぐに捨てる勇気があるか?もし、これを持っていなかったら、お金を出して買うだろうか?と考えてみよう。
3.実行する
クローゼットをきれいに保つには、日頃から整理整頓できる仕組みが必要だ。人生や仕事でも、選び抜いた行動を実行するためには、やりやすい習慣をつくることが必要だ。意思の力を振り絞らなくてもすむように、行動を仕組化しよう。クローゼットをきれいに保つにはそもそも散らからない仕組みづくりが不可欠。つまり、仕事や幼児を頼まれるたびに、イエスかノーを正しく決めることが必要だ。そのための確固としたルールがエッセンシャル思考なのです。


◆本書の使い方

PART1 エッセンシャル思考とは何か
1.選択
 私達は、時間とエネルギーの使い道を選ぶことができる。だからこそ、トレードオフを引き受けることも必要になる
2.ノイズ
 世の中の大半のものはノイズ。だからこそ本当に重要なことを正しく見極めなくてはならない
3.トレードオフ 
 全てを手に入れることはできない。何かを選ぶことは、すなわち何かを捨てること。「どの問題が一番重要か?」と考えよう。

PART2 見極める技術
 エッセンシャル思考の人は、そうでない人よりも多くの選択肢を検討する。何でも無批判的に引き受ける人は、何も検討しない。あらゆる選択肢を検討したうえで、重要なことにイエスという。本気でとことんやるからこそ、最初の見極めに力を入れるのだ。
 選ぶ基準を明確にすれば、脳のサーチエンジンは厳密を結果を返してくれる。
「良いチャンス」と検索しても何となく良い情報が延々とでてくるが、次の3つの問いを付け加える「自分は何が大好きか?」「自分は一番得意なことは?」「世の中の大きなニーズに貢献できるのは何か?」検索結果は絞られてくる。

どうすれば最高の成果が出せるのか? ⇒
1.正しい理由(なぜやるのか?) 
2.正しい時期(いつやるのか?)
3.正しいこと(何をやるか?)この基準を厳しくするしかない。
エッセンシャル思考の人は、たっぷりと時間をかけて選択肢を見比べ、意見を聞き、話し合い、熟考する。
大量のどうでもいいことのなかから少数の本質的なことを見極めようとしているのだ。

PART3 捨てる技術
周囲に認められたいという思いから、何でも引き受けてしまう人は多い。だが、最高の成果を上げる為には断ることも大事だ。
全てを手に入れることが不可能なら、何かを捨てるしかない。
もしも、選択の権利を放棄するなら、他人があなたの人生を支配することになる。「これを捨てる」と決めなければ、だれかあなたの大切なものをすててしまうだろう。不要なものを捨てれば、必要なものをするための余裕ができる。

PART 4 しくみ化の技術
すんなり実現するようなしくみを作る。無駄な作業に費やす時間が減る分、じっくり計画を立てて、事前に障害を取り除くことができる。

これら3つの技術は、ひとつの輪のようにつながりあっている。日頃からこのサイクルを回しておけば、得られる成果はどんどん大きくなっていくだろう。

 ◆自分で選ぶという最強の武器を手に入れる
 
行動を取捨選択できるようになると、すべてが変わる。ひとつ上のレベルの生き方が手に入る。不要なものを捨てる生き方は、自由だ。もう誰かの思惑に振り回されることもなく、自分で選べるのだ。
 この最強の武器があれば、仕事や生活での最高のパフォーマンスが出せる。それだけでなく、世の中に最高の貢献ができるようになる。 

メアリー・オリバーの有名な詩の一節を引用しよう。
「教えてください。あなたは何をするのですか/その激しくかけがえのない一度きりの人生で」

いったん読むのをやめて、この問いにじっくり考えてみてほしい。

⇒両親を農作業から解放し、次世代に繋いでいけるだけの農業基盤を作る。これは、私の人生なのだろうか?農業後継者という奴隷になっていないだろうか?未来に何を残せるか。
黒字で、かつ辛い労働から解放された農業経営を実現できれば、奴隷ではなく、私を自由にするものだ。

第2章 選択 ー 選ぶ力を取り戻す

◆「選ぶ」ことを選ぶ

われわれを人間にするのは、選択する能力である。

「できる」せいで「やらなくては」が増えていくストレスを抱えていないだろうか。自分で選ぶことを放棄して、いつの間にか誰かの言いなりになっていないだろうか。

「選ぶ」ことを選ぶ
私たちは長い間、選択の外的側面(どんな選択肢があるのか)にばかり目を向けて、選択の内的側面(選ぶ能力)を見過ごしてきた。この違いは重要だ。選択肢(物)を奪うことはできても、選ぶ能力(自由意思)を奪うことはできない。
選ぶ能力は誰にも奪えない。ただ、本人が手放してしまうだけだ。

◆人はなぜ選ぶ力を手放してしまうのか

いくら努力しても無駄だという経験をした場合、反応は大きく2つに分かれる。一つは、努力をすっかり諦めてしまう人。
もう一つは、逆に働き過ぎる。自分で何一つ選べないから、すべてを引き受けているだけなのだ。彼らは、選択肢を考えようとしない。言われてたことをやるしかないと思い込んでいるのだ。だが、選ぶという行動を自分のものにしない限り、エッセンシャル思考は身につかない。エッセンシャル思考を身につけるには、選ぶという行為を自覚的でなければならない。
選ぶことを忘れた人は、無力感にとらわれる。だんだん自分の意志がなくなり、他人の選択を黙々と実行するだけになる。せっかくの選ぶ力を手放してしまうのだ。
エッセンシャル思考の人は、選ぶ力を無駄にしない。その価値を理解し、大切に実行する。選ぶ権利を手放すことは、他人に自分の人生を決めさせることだと知っている。

第3章 ノイズ ー 大多数のものは無価値である

万物の大半はほとんど価値がなく、ほとんど成果を生まない。少数のものだけが非常に役立ち、大きな影響力をもつ。

リチャード・コッチ(起業家、コンサルタント)

ジョージ・オーウェルの寓話小説『動物農場』で、ボクサーという屈強な馬は、動物たちが困難に合うたびに「僕がもっと働こう」と言ってしごとを引き受ける。だが、過酷な状況のなかでついボクサーは倒れて、解体業者のもとに送られる。皮肉なことに、みんなのために一生懸命働いたボクサーの努力は、むしろ独裁者による搾取を助長しただけだった。
私達もボクサーと同じ思考に陥っていないだろうか。困難に出会った時、残業を増やして根性で乗り切ろうとしていないだろうか?すでに仕事を抱えているのに、トラブル対応まで追加で引き受けていないだろうか。人は幼い頃から努力の大切さを教えられる。すでに一生懸命働いているのに、これ以上労働時間を増やしても本当に成果は上がるのか。やることを減らしたほうが、生産性が上がる場合もあるのではないか。

◆重要な少数は瑣末な多数に勝る

 80対20の法則(パレートの法則)⇒80%の成果は、20%の努力に起因するちう説だ。品質管理の父と呼ばれるジョセフ・M・ジュランは、この法則を拡張した「決定的に重要な少数の法則」を唱えた。
 ジュランは、品質管理を研究をするうちに、問題のごく一部にを改善することによって、全体の品質が大きく改善されることに気付いた。
とりわけ、重要な問題だけにリソースを集中させることによって、品質は目覚ましく改善した。
 「重要な少数は瑣末な多数に勝る」という考え方は、広く世の中全般に応用できる。たとえば、世界一の投資家ウォーレン・バフェットは、数百の正しい決断をすることは不可能だが、絶対に確実と思われる投資先だけに限定し、そこに大きくかけることにした。

 努力の量と成果が比例するという考え方を捨てた時、エッセンシャル思考の大切さが見えてくる。
 多数の良いチャンスは、少数のものすごく良いチャンスに遠く及ばない。そのことを理解し、数限りないチャンスのなかから「これだけは」というものを見つけなくてはならない。本当に重要なことにイエスという為に、その他の全てにノーと言うのだ。

非エッセンシャル思考の人は、大多数のものごとが重要だと考える。
エッセンシャル思考の人は、大多数の物事が不要だと考える。

エッセンシャル思考の人は、たっぷりと時間をかけて選択肢を検討する。やるべきことを正しく選べば、その見返りはとてつもなく大きいことを知っているからだ。やらなくてもいいことを多くやらなくて済むように、多くを吟味する。仕事のできる人が往々にして壁にぶつかるのは、「全部やらなくては」という思考から抜け出せないからだ。

第4章 トレードオフ ― 何かを選ぶことは何かを捨てること

戦略には選択とトレードオフがつきものだ。
独自性を意図的に選び取るのである。

マイケル・ポーター(経営学者)

サウスウエスト航空の話を簡略して書かせていただく。
2都市間を単純につなぐポイント・トウ・ポイントにこだわった。高い料金だが、機内食を廃止、サービスを単純化し、コストダウンを徹底的におこなった。その後、大きな利益を生むようになった。

◆トレードオフを無視することの代償

コンチネンタル航空は、サウスウエストをまねた新しいサービスを開始したが、2つの相容れない戦略を両立させようとして競争力を失ってしまった。トレードオフを無視すると、取り返しのつかない損失が待っている。
何かにイエスとということは、その他の全てにノーということなのだ。
中途半端に片足ずつ突っ込んむと、あれもこれも失うことになるのだ。

ジョンソン・エンド・ジョンソンのタイレノール事件の例をあげよう。看板商品のタイレノールに何者かが毒物を混入した時の対応。
彼らにはしかるべき指針があった。「我が信条」と呼ばれる社訓だ。これには、優先順位が明確に示されていた。顧客が第一で、株主は最後だ。
タイレノールを速やかに回収し損失額は1億ドル以上。どれほどの損失が出ようとも構わなかった。顧客の命と1億ドル。タフな決断だったが、すでに優先順位は決まっていた。顧客が最優先だと分かっていたから、トレードオフを引き受けられるのだ。

◆人はどれかを選ばなければならない

非エッセンシャル思考の人は、トレードオフが必要な状況で「どうすれば両立できるか?」と考える。だが、エッセンシャル思考の人は、「どの問題がを引き受ける?」と「考える。これはタフな問いであると同時に自由につながる問いだ。
ピータードラッカーは、「ビジョナリーカンパニー」の著者ジム・コリンズに「偉大な会社を作るか、偉大な思想をつくるか、どちらかだ。両方は選べない」とアドバイスした。
トレードオフは痛みを伴うが、自分の本当の望みをしることができる絶好のチャンスでもある。

「何をあきらめなくてはならないか?」と問う代りに「何に全力を注ごうか」と考える。小さな違いだが、積み重なると人生に大きな差がついてくる。

家族、友人、健康、仕事、それらの利害が衝突した時、私たちは問わなくてはならない。「自分はどの問題を引きうけるのか」
家族や健康を犠牲にするやり方ではないが、この問いが真実をついていることも事実だ。
トレードオフとは、戦略的に、そして、慎重に選び取るべきものだのだ。

PART 2 見極める技術 

多数の瑣末なことのなかから、少数の重要なことを見分ける

エッセンシャル思考の人は、そうでない人よりも多くの選択肢を検討する。逆説的だが、それが事実だ。
エッセンシャル思考の人は、何かに手を出す前に幅広い選択肢を慎重に検討する。そして、これだけはということだけを実行する。行動を起す回数は少ないが、やるときめたことについては最高の結果を出す。
PART2では、数ある選択肢のなかから本質的なものを見極めるための技術を紹介する。見極めることこそがエッセンシャル思考の真髄だ。
見極める為に必要なことは、5つある。
それは、じっくりと考える余裕、情報を集める時間、遊び心、十分な睡眠、そして、何を選ぶかという厳格な基準だ。
立ち止まる時間こそが、生産性を高めるための特効薬だ。立ち止まる時間は、前に進むための最短コースを教えてくれるのである。
エッセンシャル思考の人は、なるべく時間をかけて精査し・検討し、意見を交わし、じっくり考える。そうすることで初めて、本当に重要なものを見極めることが可能になるのだ。

第5章 孤独 ― 考えるためのスペース

深い孤独がなければ。まともな作品は作れない。

パブロ・ピカソ

多数の瑣末なことのなかから少数の重要なことを見分けるのに誰にも邪魔されない時間が必要だ。

◆集中せざるえない状況をつくる

集中はむこうからやってこない、集中できる状況に自ら飛び込んでいくことが必要なのだ。集中できるスペース・時間を作る。

集中するためには、集中せざる得ない状況に自分を置くしかない。

集中とは、単にひとつの問題を考え続けることではない。エッセンシャル思考における集中とは、100の問題をじっくり検討できるだけのスペースを確保することだ。それは目の焦点を合わせる作業に似ている。ひとつのものに固執せず、つねに視野全体を把握して焦点を調整するのである。

◆考える時間を取り戻す

 退屈を駆逐した結果(スマートフォン)考える為の時間さえ奪われているのではないだろうか。
ここでもうひとつ逆説的な事実。仕事が忙しくなればなるほど、考える時間を確保することがより必要になる。生活がノイズに満ちてくれば来るほど、静かに集中できるスペースがより必要になってくる。

◆本を読む時間を作る

古典は、読む者の視野を広げ、時の試練に耐えた本質的な思想に立ち戻らせてくれる。

第6章 洞察 ー 情報の本質をつかみとる 

情報の中で、知はどこへ失われたか?

T・S・エリオット

あらゆる事実には本質が隠されている。優れたジャーナリストは、情報の断片を調べ、それらの関係性を発見する。部分の集まりから全体像をつくりあげ、人々に通じる意味を付与する仕事だ。

◆大局を見る

些細なことに気を取られ過ぎると、大局を見失う。仕事や生き方でも同じだ。何をする時にも、優れたジャーナリストのように、本質を見抜く目を持たなくてはならない。要点に目を向ける訓練をすると、これまで見えなかったものが見えてくる。点の集まりではなく、点同士をつなげる線に気付くことができる。単なる事実に反応するかわりに、その本当の意味を見抜くことが可能になるのだ。

◆情報をフィルタリングする

どんどん飛び込んでくる情報や選択肢をフィルタリングする仕組みが必要だ。エッセンシャル思考の人は、ノイズのなかのシグナルを探す。語られなかったことに耳を傾ける。情報の本質をつかみとる。

◆ジャーナリストの目を手に入れる

  1. 日記をつける ー 日記を付けたら、2~3カ月ごとに読み直す習慣を付けよう。1日、1週間、1か月で、あなたの人生に何が起こっただろうか。日々の小さな変化は見逃しやすいが、まとめてみると大きな違いに気づくはずだ。

  2. 現場を知る ー 現場に足を運び、問題の本質を知ること。

  3. 普通を知り、逸脱を探る ー どうすれば、膨大なノイズに惑わされず、ストーリーの本質をつかむことができるのか?⇒知識をつけることです。ストーリーの本質に迫る為に、その話題を深くしっておくことが不可欠だ。また、「別の視点で見る」ということ。別の立場にたってみると、事態の新たな側面が見えてきます。ある人物の目で見た時、思いがけない一面に気付くかもしれない。

  4. 問題を明確にする


第7章 遊び ― 内なる子供の声を聴く

◆精神は遊びを求めている

世界は絶えず変化し、路の課題や不確実な状況を突きつけます。遊びはそうした変化への対応力をはぐくむのです。

遊びが大切な理由1
遊びは選択肢を広げてくれる。それまで気づかなかった可能性や、思いがけないつながりに気付かせてくれる。遊ぶことで私たちの視野は広がり、常識にとらわれないやり方が見えてくる。意識の流れが豊かになり、新たなストーリーが発見できる。

遊びが大切な理由2 
遊びはストレスを軽減してくれる。ストレスは生産性を下げ、好奇心や創造性の働きを弱める。ストレスによって感情をつかさどる部分(偏桃体)の働きが強くなり、認知機能をつかさどる部分(海馬)の働きが弱くなるのだ。その結果、うまくものを考えられなくなる。
遊びが大切な理由3 
遊びは脳の高度な機能を活性化する。遊びは論理的で冷静な部分を刺激すると同時に、自由奔放な探求心をも刺激してくれる。

◆仕事と遊びの関係性を知る

遊びこそが創造性と探求心の源である。

遊びは本質を探究するのに役立つだけでなく、それ自体がどこまでも本質的である。

第8章 睡眠 ー 1時間の眠りが数時間分の成果を生む

◆自分自身という資産を守る

睡眠を軽視して、働き過ぎ体を壊して働けなくなる人がいる。
エッセンシャル思考の人は、睡眠を武器だと考える。自分の力を引き出すために活用している。計画的に十分な睡眠をとることで仕事の質を最大限に高めているのだ。エッセンシャル思考の人は自分の資産をうまく守るので、ここぞという時に十分な力を発揮できる。疲れすぎて肝心なときにたおれるようなことはない。

<エッセンシャル思考の人の考え方>
・もう一時間眠れば、数時間分の生産性が手に入る
・優秀な人ほどよく眠る
・眠ると創造的になる
・睡眠は仕事の効率を高めてくれる

◆十分な睡眠が脳の機能を高める

一流のバイオリニストは、中した質の高い練習こそが一流を生み出す。よく練習するだけでなく、よく寝るという。

現代人の最優先課題は、優先順位づけの能力をキープすることだ。
多数のどうでもいい選択肢のなかから、本当に重要なことを見分けるためには、優先順位をつけることが不可欠だ。数多くのチャンスはどれも同じくらい魅力的に見えるかもしれない。本当に重要な事はめったにない。ほとんどはただのごみだ。睡眠不足が困るのは、そこを見極める能力が落ちて、優先順位がつけられなくなるからである。

たっぷり眠ろう。そうすれば洞察力が高まり、発想力が広がり、より少ない時間でより良い成果を上げることができる。

第9章 選抜 ー もっとも厳しい基準で決める

内的なプロセスは、外的な基準を必要としている。

ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン(哲学者)

基準をとことん厳しくすること。「やろうかな」程度のことなら却下する。「イエス」と言うのは、絶対やるしかないと確信した時だけだ。
「絶対にイエスだと言い切れないなら、それはすなわちノーである」
第一章で紹介した、クローゼットの話で、「いつか着るかも」というゆるい基準を使っていたら、クローゼットはめったに着ない服でいっぱいになってしまう。これを「この服が本当に大好き?」という基準に変えると、中途半端服が消えるので、もっといい服を入れるスペースが生れる。
同じことは、決断にも当てはまる。どうでもいいことを捨てられずにいると、本当に重要なことをする余裕がなくなってしまうのだ。

◆90点ルールを取り入れる

90点ルールとは、最重要基準を一つ用意し、その基準に従って選択肢を100点満点で評価する。ただし、90点未満の点数は、すべて0点と同じ。不合格だ。60~70点くらいの中途半端な選択肢に悩まされずにすむ。
90点のルールのすぐれた点は、瑣末な選択肢を容赦なく切り捨てられるところだ。その基準を明確に決めることも大切。明確な基準であれば、誰でも不要な選択肢をシステマティックに却下し、重要な選択肢を選びとることが可能になる。

◆明確で厳しく、そして正しい基準を採用する

絶対にイエスだと言い切れないから、それはすなわちノーである。

◆チャンスを正しく選別するには

選択肢から何を選ぶか、というのも難しい問題だが、もっと難しいのは思わぬチャンスが転がってきた時だ。こんないい話は、今を逃したらもうないかもしれない。目の前に転がっているチャンスを逃すなんて、あまりにもったいない。だが、簡単に手に入るという理由でそれを選んでいいのだろうか。

突然舞い込んできたチャンスを正しく選別するためには、次の3つのプロセスを踏むといい。
①そのチャンスについて、記述する/あなたのもとに舞い込んできたのは、どんなチャンスか?
②考慮するに値するチャンスの「最低限の基準」を3つ書き出す/最低限これだけはみたしてほしいという基準は何か?
③考慮するに値するチャンスの「理想の基準」を3つ書き出す/公だったら最高だと思う期十は何か?
⇒すべての基準を満たしているものだけが、考慮に値するチャンス。

◆「これしかない」と思えることを選ぶ

選択基準を厳しくすると、脳のサーチエンジンが制度を増す。
たとえば、グーグルで検索するばあい。「ニューヨークの美味しいレストラン」より、「ニューヨークのブルックリンで、最高のピザや」と検索すれば、結果はかなり絞られてくる。検索結果は多いより、少数精鋭の方がいい。

PART 3 捨てる技術

 多数の瑣末なことを容赦なく切り捨てる
捨てるべきものを問う時、自分の優先事項がはっきりと見えてくる。自分の本当の氏名が明らかになり、個人だけでなく組織全体のために最高の仕事ができるようになる。
仕事や人生の決定打となるブレイクスルーは、不要なものを切り捨てることから始まるのだ。

第10章 目標 ー 最終系を明確にする

ひとつの目標を、立ち止まらずに追いかけるそれが成功の秘訣です。

アンナ・パヴロワ(バレーダンサー)

これからの章では、重要なことにエネルギーを集中させるため、不要なものを切り捨てる技術について論じていく。まず最初に切り捨てるべきは、やろうとしている意図にそぐわない行動だ。これを実現するためには、自分がどんな目的に向かっているのかをとことん明確に定義しなければならない。

◆「かなり明確」を「完全に明確」にする

完全な明確さにこだわるのは、それが仕事の結果に直結するからだ。
目的が明確でないとき、人はどうでもいいこと時間とエネルギーを浪費する。これまで多くの会社を見てきたが、その弊害は大きく2パターンある。

パターン1 社内政治が蔓延する
仕事だけでなく、日々の生活の中でも起こりえる。自分のしたいこと(価値観・望み・目的)がわからず、他人の目ばかりを気にする。いい車に乗り、きれいな家に住み、」ツイッターのフォロワー数を増やすことに夢中になる。その一方で、大切な人と過ごす時間が削られ、心も体もないがしろにされていく。

パターン2 なんでも屋になる
リーダーの求心力がなくなり、各自がバラバラに動き出すことだ。会社の明確な方向性が見えないので、それぞれ目先の利益のために行動するようになる。各自が別々の方向に進んでいたら、チーム全体としてどこにもたどり着けない。

全体の目的と個々の役割がとことん明確になっていれば、チームは驚くほど力を発揮できる。エネルギーが同じ方向に向かい、相乗効果が生まれるからだ。では、どうすれば、会社や個人の目的を明確にできるだろうか。ひとつのやり方は「本質目標」を決めることだ。

◆本質目標を決める

<エッセンシャル思考>
・具体的かつ魅力的な戦略
・意味があり、心に残る本質目標
・ひとつの決断によって、その後のあらゆる決断を不要にする

<非エッセンシャル思考>
・価値観やビジョン、ミッションステートメント
・具体的だが、人の心を動かさない四半期目標
・価値観はあるが、それを実行するだけの行動規範がない

◆本質を見据えて生きる

本質目標は、仕事や会社だけのものではない。正しく使えば、人生に意味を与え、正しい方法へと導いてくれる。
人性の本質目標を決めるのは、容易ではない。勇気と洞察力を持ち、自分の力を最高に発揮できる行動を見定めなくてはならない。そのためには、タフな問いに答えることが必要だ。トレードオフを直視し、本質から外れた物事を断固ととして切り捨てなくてはならない。厳しいがやるだけの価値はある。本当に明確な目標だけが自分や組織の力を最大限に引き出し、真に優れた成果を可能にしてくれるのだから。

第11章 拒否 ー 断固として上手に断る

勇気とは、プレッシャーに負けない品格のことだ。

アーネスト・ヘミングウェイ(作家)

◆大切なことを知っていれば断ることができる

◆上手に「ノー」と言う技術を身につける

あらゆる依頼を断れと言うわけではなく、本当に重要な事をやるために、本質的でない依頼を断るのだ。肝心なのは絶対にやるべきこと以外の全てに対して、上手にノーということである。

<上手な断り方のコツ>

  • 判断を関係性から切り離す
    誰かに何かを頼まれたとき、私たちはそれを関係性の問題だと思ってしまう。頼みを断ることが相手を拒絶することだと感じてしまうのだ。この2つを分けて考えなくてはならない。

  • 直接的でない表現を使う
    ノーという言葉を使わなくても、ノーといことは可能だ。時には直接的な表現を避けて、やんわり断ることも必要。「声をかけてくれて嬉しいのですが、時間がとれるかどうかわからないのです。」

  • トレードオフに目を向ける
    ここでイエスと言ったら、自分は何を失うだろうか。そのトレードオフに目を向ければ、中途半端なイエスは言えなくなる。どんな判断をする時も機会コストを忘れてはいけない。「もしもこれを選んだら、別のもっと価値のあることができなくなる」ということ。

  • 誰もが皆何かを売り込んでいる
    人はみな、何かあなたに売り込もうとしている。人間不信になれとは言わないが、それが事実だ。商品に限らず、モノの見方や特定の意見を売りこんでいることもある。

  • 好印象よりも敬意を手に入れる
    ノーと言うことで、短期的に相手と気まずくなることがある。 スティーブジョブズにロゴを依頼されたポール・ランドの話で、複数のロゴを提出することを断った時、短期的に気まずさはあったが、結果的に一つの最高の答えをだすことで、長期的な敬意を手に入れた話。

  • 曖昧なイエスはただの迷惑
    あいまいなまま引き延ばされるよりも、はっきりと断られる方がずっといい。できないとわかっているのに、結局できないというのが最悪だ。曖昧にしておいて、結局断るより、その場ですぐに断る方がいい。相手へのダメージもずっと少なくてすむ。

◆断り方のレパートリーを増やす

  1. とりあえず黙る
    気まずい沈黙を怖がらず、沈黙を味方につけよう。誰かに何かを頼まれたら、少しだけ黙ってみるのだ。ゆっくり3つ数えて、それから自分の意見を言う。

  2. 代替案を出す

  3. 予定を確認して折り返します

  4. 自動返信メール

  5. どの仕事を後回しにしますか?

  6. 冗談めかして断る

  7. 肯定を使って否定する
    喜んで引き受けるふりをして、実は断るという高度なテクニック。

  8. 別の人を紹介する

第12章 キャンセル ー過去の損失を切り捨てる

この世のトラブルの半分は、イエスを言うのを焦りすぎ、ノーを言うのを渋りすぎることからくる。

ジョシュ・ビリングス

超音速旅客機のコンコルドの例に、利益をあげられないことがわかっていても、これまでかけたコストが大きく、辞めることができなくなる場合がある。サンクコスト(埋没費用)に対する心理的バイアスにある。「サンクコストバイアス」とは、すでにお金や時間を支払ってしまったという理由だけで、そんな取引に手を出し続ける心理的傾向のことだ。「ここでやめたら今までの投資が無駄になる」と思うあまり、望みのない投資を重ねてしまう。

何の意味のないと分かっているプロジェクトに時間やお金を費やしつづけていないだろうか。損切りができずにいつまでもダメな投資を続けていないだろうか。

◆途中でやめることはなぜ難しいのか

所有という概念は人の心に大きく影響する。なんの理由もなく、所有している理由だけで、失うのがもったいないと感じる。まだ持っていないとしたら、わざわざ買わないのに。

◆上手に手放すテックニック

  • 持っていないふりをする
    「もしこのチャンスを逃したらどう感じるか?」と考える代わりに「もしもまだこのチャンスが手に入っていないとして、手に入れる為にどれだけのコストを払うか?」と考える。

  • 勿体ないを克服する

  • 失敗を認め、成功に向かう
    自分の失敗を認めた時、失敗は過去のものになる。

  • 靴に足を合わせる心理
    自分ではない誰かになろうとしていないか?自分には合わないと分かっているのに、どうしても認めたくない。

  • 第三者の意見を聞いてみる
    他人の冷静な意見を聞いてみた方がいい。何の利害もない立場からのアドバイスは執着を断ち切るのに役立つはずだ。

  • 現状維持バイアス
    いつもやっているからという理由だけでそれをやめられない傾向を「現状維持バイアス」と呼ぶ。古臭い習慣を疑問を持たずに続けるなど。当たり前にそこにあるものを、人は無条件に受け入れがちだ。

  • ゼロベースで考える
    まっさらな状態から、時間やお金やエネルギーの使い方を改めて考えてみよう。ただ惰性でつづけていることはすぐにやめるべきだ。

  • 流れで引き受けるのをやめよう

  • 何かを言う前に、5秒待つ
    うっかり約束しない

  • これをやめたら損をする?

  • 逆プロトタイプ
    プロトタイピングとは、大まかなモデルを作成し、本格的に取り組む前価値があるかどうか試してみるというやり方だ。何かを辞める時も同じやり方だ出来る。

第13章 編集 ー 余剰を削り、本質を取り出す

編集は、エッセンシャル思考の技術である。不要なものや余分なものを容赦なく削り、作品の本質を取り出す仕事だ。
エッセンシャル思考とは、良くすることは何かを削ることだ。不要な細部は冷徹に切り捨てる。と考える。

◆編集の4原則を知る

  1. 削除する

  2. 凝縮する
    凝縮の本質は、無駄を減らすことだ。より少ない言葉でアイデアを伝える。より少ないスペースで快適な生活を実現する。より少ない努力で成果を出す。無意味な行動を辞めて、重要な行動にひとつに置き換えればよい。

  3. 修正する
    間違いを直す。仕事や生き方でも、自分の本質的な目標を明確にしておけば、それに合わせて行動を修正できる。もし、間違った方向に進んでいたら、正しく編集しなおせばよい。

  4. 抑制する
    反射的に手を出すのをやめて、何もしないことを選ぶのだ。まず、立ち止まって様子を見る。すると、全体の流れがクリアになる。

最善の結果を得るためには、こまめに行動を振り返り、小さな編集を積み重ねた方がいい。エッセンシャル思考で生きるということは、削除と凝縮と修正を日々の習慣にすることだ。自然に生き方を編集しよう。

第14章 線引き ―境界をきめると自由になれる 

たとえば、土日は仕事をしません。とはっきりと境界線をきめること。すなわち、境界線をひくことで、自分の時間を守り、他人からの余計な干渉を防ぐのだ。 

◆面倒くさい人たちと一線を画す

  • 他人の問題を横取りしない
    人助けが悪いことだとは言わない。他人の役に立つのはうれしいものだ。だが、本人が解決すべき問題を肩代わりするのは、人助けではない。その人は問題を解決することをしなくなり、余計に問題から抜け出せなくなってしまう。本人の解決すべき問題は、本人に解決させる。それがあなたのためであり、相手のためでもあるのだ。

  • 境界線を引いて自由になる
    明確な境界線を引くことで、自分の領域を好きなだけ使えるようになる

  • 自分の境界線がどこにあるのかを知る
    自分の境界線を知る為には、いつも足を引っ張られる相手のことを思い出すといい。どんな時に邪魔されたと感じただとろうか。また、他人に侵害されたと感じた出来事をリストアップしてみよう。

  • 難しい相手とは契約を結ぶ
    仕事を始める前にやり方を明確にし、自分が何を優先するか、何が妥協できて何ができないか、その線引きを宣言する。


PART 4 しくみ化の技術 

努力せず、自動的にエッセンシャル思考が実現する

何かをやり遂げるのに、2種類のアプローチがある。
非エッセンシャル思考の人は、努力と根性でやり遂げようとする。
エッセンシャル思考の人は、なるべく努力や根性がいらないように、自動的にうまくいく仕組をつくる。第一章でクローゼットの話をしたが、クローゼットを常にきれいに保っておくためには、仕組かが不可欠だ。一旦やるべきことをきめたら、それを無意識に実行できるようにしておくのだ。きれいになる仕組を日々の行動に組み込んで、ちらかることを未然に防いだ方がいい。人は楽をしようとする生き物だ。だから、何の苦労もなくスムーズに正しい行動ができるようにしておこう。

第15章 バッファ ― 最悪の事態を想定する

6時間で気を切れと言われてたら、最初の1時間は斧を研ぐのに使うだろう。 

エイブラハム・リンカーン

世の中確実なことなどない。だから何が起こっても慌てないように、あらかじめ備えておいたほうがいい。つねにバッファをとっておくのだ。

◆徹底的に準備する

◆見積もりは1.5倍で考える

◆シナリオプラニングでリスクを軽減する

①このプロジェクトはどんなリスクがあるのか?
②最悪の場合、どんなことになりうるのか。
③周囲への影響はどのようなものがあるのか。
④そのリスクは自分にとってどの程度の経済的負担となるか?
⑤リスクを減らすためにどのような投資をおこなうべきか?
この5つめの問いへの答えが、広い意味でのバッファとなる。

第16章 削減 ー 仕事を減らし、成果を増やす

学を為せば日に益し、道を為せば日に損す。※

老子

※「道を為せば日に損す」とは、「本質を理解すれば、日に日に必要な物事は減っていく」という意味です。「損」は「減る」という意味です。
日々増えていく知識(学を為せば日に益し)と対象的に「余計な物事が削り取られてシンプルになっていく」ということです。本質を見つめている人は余計な知識をつけたり、余計な行動をしたり、余計なモノを持っていないということです。

ビジネス書『ザ・ゴール』で、経営が悪化している工場を立て直さなければならない主人公に、恩師が短時間で大きな成果をあげるには、ボトルネックを探せばいいとアドバイスする。ボトルネックになっている機械の処理速度を改善した結果、工場全体の生産性が向上したのだった。

エッセンシャル思考の人は目の前の症状に惑わされず、どこが本当の問題なのかを見極めようとする。何が妨げになっているのかを特定し、もっともも効果的に処置をする。非エッセンシャルの思考の人は応急処置でつぎはぎだらけになっていくが、エッセンシャル思考の人は本当に必要なところに一度だけメスを入れる。これは問題解決に限らず、最小限の努力で最大限の結果を得るための普遍的なやり方である。

◆成果を生まない努力をやめる

エッセンシャル思考の人は、仕事を減らすことによって、より多くを生み出す。

  1. 目指すことを明確にする 
    最終的にどこにたどり着きたいか?具体的で明確な目標を設定する。

  2. ボトルネックを特定する
    目指すことがわかったら、仕事に取り掛かる前にいったん立ち止まって考えよう。「この仕事をやり遂げる上で、邪魔になるものは何か?」仕事の完成を邪魔するものをすべてリストアップしよう。リストができたら、優先順位をつけよう。「これを取り除けば他の問題も解決するような大きな障害は何か?」と考える。
    ボトルネックを特定するうえで、注意しておきたいのは、生産的な行動が大きな邪魔になる場合もあるということだ。メールで情報を共有したり、完成度を高めるために書き直したり、そういった前向きな行動が今回の目標を達成するうえでのボトルネックになるかもしれない。(目標は草案をすつくることで美しい完成版ではない)目標達成を邪魔する行動は、どれほど前向きな行動であっても疑ってかかる必要がある。目標達成を邪魔する要素はたくさんあると思うが、最優先で解決すべきことはひとつだ。一つ一つの行動を冷静に検証し、どこが本当の問題なのか見定めよう。

  3. 邪魔なものを取り除く
    仮にあなたのボトルネックが完璧にしないと気が済まない性格だったとしたら、「完璧じゃないとだめだ」という考えを捨てて、「完璧を目指すより終わらせることが大事」と考えよう。完成よりもスピードを重視するのだ。ボトルネックは自分自身にあるとは限らない。上司、顧客、こうした人たちをうまく動かすには、手伝えることはないか?と非難するのではなく、相手の力になりたいという姿勢を見せる。

第17章 前進 ー 小さな一歩を積み重ねる

毎日1センチずつでいいから、より良い未来に近づくことをやろう。

ポジティブ・チケット(善行切符)という小さな善行にチケットを配る試みで、長期的戦略としての投資を続け青少年の違反率を劇減させた警察署の話。小さく始めて大きな成果を得るエッセンシャル思考の良い例である。地味でも確実に勝ちに行く。

非エッセンシャル思考の人は何でも頑張ろうとし過ぎるきらいがある。多くを求めて努力すれば、それだけ結果がついてくると思っているが、現実には欲張れば欲張るほど、動きが鈍くなってしまう。
エッセンシャル思考の人はもっと現実的だ。何でもいっぺんにやろうとせず、小さな成功を積み重ねる。

人間のモチベーションに対して最も効果的なのは「前に進んでいる」という感覚である。小さくも前進している手ごたえがなければ未来の成功を信じられる。そのまま進み続けようとする力になる。
心理学的には、人の意欲を高める2つの主要因が「達成」「達成が認められること」である。

子供たちのテレビなどのデジタル機器依存に悩んだ著者は、自分たちの生活にポジティブ・チケット制と同様のシステムを取り入れることにした。
週の初めに子供たちに10枚のチケットをあたえる。チケットを1枚使うと30分間はテレビやゲームができる。しかし使わなかったら1枚につき、50セントと交換できる。1週間テレビとゲームを我慢すれば、週の終わりには5ドルが手に入るというわけだ。ボーナスポイントとして、30分間読書をすれば1枚おまけにチケットが手に入る。
結果は予想以上だった。テレビの時間は10分の1に減り、その分読書の時間が増えた。親が目を光らせることもなく、有意義な事に時間を使えるようになった。
しくみをつくるためのわずかな努力をしたおかげで、その後はスムーズにまわっている。仕事でも家庭でもこうしたしくみをつくることは可能だ。コツは小さく始めること。小さな成功を褒めて、地道な進歩を促進する。いくつかの具体的なテクニックを紹介する。

◆最小限の進歩を重ねる

「完璧を目指すよりまず終わらせろ」という言葉がある。これは別に品質を無視しろと言っているわけではない。瑣末なことにきをとられず、本質をやり遂げようという意味だ。
これらを応用し、「実現最小限の進歩」というやり方を取り入れてみよう。「重要なことをやり遂げるために最低限意味のある進捗は何か?」と考えるのだ。
この本の執筆にも「実用最小限の進歩」を利用している。まだ書き始めの構想段階では、アイデアの切れ端をツイッター公開することを最小限の進歩に定義した。もし、反響があれば、ブログ記事に発展させた。この小さなしんぽの繰り返しによって自分のアイデアと人々のニーズとの接点を少しずつ探っていったのだ。

◆「早く小さく」始める

重要な目標や締め切りに向かう時、2つのアプローチが考えられる。早く小さく始めるか、大きく遅く始めるかだ。大きく遅く始めるは、締め切りまじかで本気を出して、徹夜でなんとか終わらせるようなこと。

◆進歩を目に見える形にする

目標達成のためのすごろくシートのようなものを使ったことがあるだろうか?日々の進捗が目に見えてわくわくしたものだ。

第18章 習慣 ー 本質的な行動を無意識化する

決まりきった行動は、賢い人の場合、高い志のあらわれである。

◆正しい習慣がクリエイティビティを生む

習慣は妨害に打ち勝つための最強の武器だ。習慣がなければ、数知れぬ誘惑に勝つことは難しい。だが、本質的な目標に向かう行動を習慣づけてしまえば、無意識のうちに目標を達成できる。いちいち難しい判断をする必要はないし、誘惑から目を背けるためにエネルギーを使う必要もない。
習慣をつくる段階で少しだけ努力すれば、あとは勝手にうまくいく。

習慣の力については、数々の科学的研究も行われている。習慣のしくみを簡単に説明すると、同じことを複数回実行することによって、ニューロン(神経細胞)同士の間に新しい結びつき(シナプス)が生れる。何度も反復することで結びつきは強化され、情報の伝達がスムーズになる。

エッセンシャル思考も同じだ。練習を重ねればどんどん簡単になってくる。

習慣には、もうひとつ有利な点がある。いったん脳に回路がつくられると、それまで思考や判断に頼っていた領域が別のことに使えるようになるのだ。だから重要な仕事を無意識のうちにこなしながら、同時に別の作業をすることも可能になる。

その場その場で似たような判断にエネルギーを費やすよりも、自動化できるところは自動化し、もっと有益な事に脳を使った方がいい。

◆悪い癖を正しい習慣に変える方法

・行動を引き起こすトリガーを知る
あらゆる習慣には「トリガー」「行動」「報酬」の3つの要素があります。トリガーとはある行動を呼び起こすためのきっかけです。次に行動が来ます。これは肉体の動作のほかに、感情や思考も含みます。そして最後に、報酬があります。この習慣を次も繰り返したいと思うような、ごほうびです。この3要素のループが繰り返されることによって、トリガーと報酬はより強く脳に刷り込まれ、行動は自動的になっていきます。
つまり習慣を変えるためには行動よりもそれを引き起こすトリガーに着目して別の有意義な行動と結び付けてやればいいのだ。

・新しいトリガーを作る
新たな習慣をつくりたいなら古いトリガーにこだわる必要はない。新しいトリガーをつくって有意義な行動を呼び起こせばいい。
著者は日記を書く習慣をつけるために、トリガーをつくってみることにした。毎日決まった時間に2~3行だけ書くようにすれば続くという話を聞き、いつも使うバッグの携帯電話の隣に日記帳を入れておくことにした。毎晩、充電するときに日記帳を出して、数行書くことにしたのだ。

・難しいことから手を付ける
・曜日ごとにやることを変える
・習慣づくりはひとつずつ

第19章 集中 ー  「今何が重要か」を考える

生は今この瞬間にある。今この習慣をないがしろにする人は、日々を十分に生きることができない。

◆過去や未来にとらわれない

過去や未来のことを考えるたびに、目の前の大事なことがおろそかになること事実を忘れてはいけない。
そもそも私達には今しかない。未来や過去は想像のなかにあるだけで、けして触れられない。私たちの行動が何らかの力を持つのは今ここにおいてだけなのだ。エッセンシャル思考の人は、今ここに集中する。クロノスよりも、カイロスを生きる。昨日や明日ではなく、今この習慣に何が大事かを考えるのだ。

◆集中の対象をひとつに決める

◆今ここを生きるテクニック

・今、何が重要かを考える
やることが多すぎて何から手を付けていいかわからなくなったら、まずは考えるのをやめて、深呼吸することだ。心を落ち着けて今この瞬間に何が重要か考えよう。明日の事や、一時間後のことは忘れていい。今ここだけを見るのだ。それでも何から手を付けるかわからないなら、やるべきことをリストアップしたあと、今すぐやること以外は全て線を引いて消してしまおう。

・未来を頭の中に抱えない
頭の中に未来のことが詰まっていると、今この瞬間に集中できない。
私は今すぐやることを決めたあと、「今すぐ必要のないけれど重要なこと」をリストアップすることにした。刺激的な1日のあとで、やりたいことのアイデアがひしめいていたのだ。著者は、日記の新しいページを開き、「この先やりたいことは何か?」に対する答えを書いた。とにかく頭の中にあるものを紙に吐き出していった。紙に書くことは2つの効果がある。一つは有用なアイデアを忘れないこと。もうひとつは、「覚えているうちに何かやらなくは」という漠然とした焦りを感じなくてすむことだ。

・優先順位をつける
今すぐやるべきリストができたら、優先順位の番号を振って、順番に片付けていこう。一度に一つの事に集中し、終わったら線を引いて消す。

◆マインドフルネスを身につける

マインドフルネスの状態は、あなたを今ここに戻してくれます。いまここで自分の幸せを認識するとき、幸せはやってくるのです。
自分の日々を振り返り、カイロス的な瞬間を見つけよう。それを日記に書きとめて、どんな時にそうなるのか分析しよう。「今、ここ」を感じられるきっかけがわかったら、その体験を再現できるように練習してみよう。
カイロスを感じられるようになれば、あなたのパフォーマンスは何倍にも高められ、同時に大きな喜びを知ることができるだろう。

第20章 未来 ー エッセンシャル思考を生きる

多忙な生活の不毛さに気を付けよ。

ソクラテス

◆本質を生きる方法

エッセンシャル思考の実践には2つのアプローチがある。一つは、生活のあちこちに取り入れる方法。そして、もう一つはエッセンシャル思考を生きるという方法だ。前者は、忙しい日々に別のスキルを付け加えるに過ぎないが、後者は、違う。エッセンシャル思考を生き方の基本に据え、何をするにもそこから考える。エッセンシャル思考が自分という人間の核になるのだ。

◆自分の中心にエッセンシャル思考を据える

明確な目的意識を持って成功への突き進むか、成功するとチャンスや選択肢が増え、結局自分の方向性を見失ってしまう。多方面に手を出したあげく、すべて中途半端になって何もまともに達成できない。
といっても、エッセンシャル思考の目的は、世間的な成功を手に入れることではない。人生に意味と目的を見出し、本当に重要なことを成し遂げることだ。将来自分の人生を振り返った時、どこにでもありそうな達成リストがならんでいるよりは、自分によって本当に意味のあることをひとつ達成したと確信できる方がいい。
エッセンシャル思考を真に身につけ、あらゆる場面でそれをいきることができれば、世界はこれまでとは違って見えてくる。エッセンシャル思考を自分の血肉として、本能のようにつかいこなそう。

考え方が心の底までしみこんだとき、
これは自分を内側から変える力となる。

大切なのは、「選ぶ」ということだ。周囲に流されず、自分自身の選択をする。

◆シンプルな人生な幸福である

エッセンシャル思考を身につけるにはそれなりに時間がかかる。だが一旦身に付ければ、その恩恵は一生ものだ。

・迷わない
クローゼットのたとえのように、きれいにして整頓しておけば、自分にとって大事なものがよくわかる。
大量のTODOリストを効率よくこなすより、そもそもtodoリストがすっきりしていた方がいい。日を追うごとにやるべきことは少なくなり、最優先アイテムと2番目のアイテムの差が大きくなり、自分の本当にやるべきことがクリアに見えてくる。やればやるほど、エッセンシャル思考はどんどん簡単になっていくのだ。
・流されない
エッセンシャル思考の人は、自身も持って立ち止まり、ゆっくり考え、きっぱりノーを言うことができる。もう他人に振り回されたり、こき使われたりしない。他人の言いなりになるのを避けるためには、自分で優先順位を決めるしかない。
・日々が楽しくなる
自分のやるべきことが見えていると、日々の暮らしが充実し、今をもっとたのしめるようになる。幸福であるためにはシンプルであることが何より重要なのです。

◆本質を知り、本質を生きる

自分にとって、家族がどれほど大事かということ。人生の残り時間が本当にわずかしかないということだ。
エッセンシャル思考をいきることは、後悔なくいきることだ。本当に大切なことを見極め、そこに最大限の時間とエネルギーを注げば、後悔の入り込む余地はなくなる。豊かでいみのある人生を選ぶか、それとも苦痛と後悔にみちた人生に甘んじるか。「本当に重要なのは何か?」それ以外のことは全部捨てていい。 

第21章 エッセンシャル思考のリーダーシップ

少数の思慮深く献身的な市民たちが世の中を変えられることに疑いの余地はない。実際に世の中を変えてきたのは、そういう人々にほかならないのだから。

マーガレット・ミード

エッセンシャル思考のリーダーシップとは
FCS(フォーカス)の思想が的確に言い表している。
「少数のことをより良くやれ」「正しい情報を正しい人に正しいタイミングで伝えろ」「意思決定のスピードと質を追求しろ」

◆エッセンシャル思考のチームを作る

チームのパフォーマンスは、目的の明確さに大きく左右される。目的が明確であれば、チームのメンバーは予想以上の力を発揮してくれる。一方チームの目的や役割が明確でない場合、チームは混乱し、ストレスとフラストレーションがたまり、結果は失敗に終わる。「明確さがすなわち成功なのです」

◆エッセンシャル思考のリーダーはいかにチームを率いるか


方針 ― より少なく、しかしより良く
人材 ー 人材の選別にこだわり抜き、邪魔な人材は排除する
戦略 ー 何かひとつだけしかできないとしたら何をするかを考える
タスク分担 ー 各メンバーの特性と目標にとって最良の配置を決める
コミュニケーション ー 耳を傾け、本質を見抜く
部下育成 ー 小さな進歩を重ねているかどうか適切にチェックする
成果 ー チームがひとつにまとまり、これと決めた方向で飛躍的な成果を上げる。

・人材の選別にこだわり抜く
 確固とした基準を持って完璧な人材を選び取る

・目的が完全に明確になるまで話し合う

・メンバーの役割をあいまいにしない

・正しい情報を正しい人に正しいタイミングで伝える
 具体的に簡潔な言葉を使い、余地がないように話す

・小さな進歩を重ねているかどうか、適切にチェックする

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?