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【創作部】4.私小説風エッセイ*かわいくなりたい

さとみちゃん3才、道を歩けば誰もが近寄ってきて、「お人形さんみたいねー」と声をかけられる女の子です。大きなおめめに、長いまつげ、お鼻はちょっと低めだけど、栗色のふわっふわでほどよくカールがかかった腰まである髪の毛は、フランス人形のような愛らしさです。

 夏も終わりかけのある日の日曜日、従兄弟のナミコねーねーがお届けもののお使いでさとみちゃん家にやってきました。さとみちゃんとは7つ違いのお姉さんです。さとみちゃんと同じようにくりっととした大きなおめめに、長いまつげだけど、さとみちゃんとは違って、鼻筋がすーっととおって、栗色のストレートの腰まであるロングヘアは、ジェニーちゃんのような可憐さです。そんなナミコねーねーは、さとみちゃんの憧れで、もうちょっとお姉さんになったら、自分も鼻が高くなって、ナミコねーねーのようになるんだと夢見ていました。

 しかし、その日やってきたナミコねーねーは、なんだか別人のようです。大きなおめめに、長いまつげ、すーっととおった鼻筋は、ナミコねーねーそのものです。けれど、腰まであったロングヘアは、耳の下あたりからバッサリと切られています。そのビートルズのように切りそろえられた髪型のせいか、外国の映画に出てくる少年のようで、それでいて、そこはとないアンニュイな雰囲気を漂わせています。さとみちゃんは大きな目をさらに大きくして、そして、「な~~~んてかわいいんだろう」とナミコねーねーに釘付けです。

 その日は、お昼を食べていても、お絵かきをしていても、お歌を歌っていても、ナミコねーねーの顔が浮かんできます。いったん、「さとみちゃんも、ナミコねーねーみたいになりたいな~」という気持ちが芽生えると、とめどなく、その思いは強くなっていきます。そして、とうとう「ナミコねーねーみたいになるっ!」とさとみちゃんは決心しました。そのためにすることはただ一つ。必要な道具もただ一つ。さぁ、さとみちゃんの新しい人生が始まる!


ジョキ!ジョキジョキ!ジョキジョキジョキ!


それから、40年後の夏の終わりかけのある日の夕方。LINEの新着を知らせる通知音が消え入るような小さな音だけど、高く澄んではっきりと耳へ届けられる。読んでいた本を無造作に置きながら、スマホを手に取る。妹からだ。

「おねえちゃんと同じことしたみたいよ!」

マッシュルームカットになった4才の姪っ子がおすましした表情でこちらを見つめている。左の耳下のはね具合はあの日のさとみちゃんとそっくりだ。

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