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【鑑賞ノート】6.ラブ・セカンド・サイト はじまりは初恋のおわりから(映画)

パラレルワールド、アナザーストーリーが大枠の映画である。フランス映画なのだが、はじまってすぐの冒頭はハリウッドの近未来アクション映画風で、一瞬、劇場を間違ったのかと思った。そういうところからして「フランス映画」っぽくないなぁと思いながらスクリーンに展開される物語を見ていた。テンポよく進むストーリー、物語の文脈は分かりやすく、ちょっとしたコメディ要素もあって、「フランス映画を見るぞー」と身構えて臨んだわりには拍子抜けしてしまった。それでも、音楽と映像美はやはり「フランス映画」という感じで、哀愁を感じさせてくれる。印象に残っているシーンは、海中でのラブシーン。「フランス映画」ならではの暗さをともなった幻想的なシーンにとろける。

「フランス映画」っぽくないなぁと感じたもう1つの理由は脇役がいい意味で出しゃばる感じである。主人公ラファエルの親友フェリックス(バンジャマン・ラヴェルネ)が、この映画を支えているといってもいいくらいである。ラファエルとのやりとりはもちろん、サイドストーリー的な感じで彼の恋愛が挟み込まれるのがとても印象的である。ユーモアにあふれ、友人思いのフェリックスだが、別れた彼女に未練タラタラで、月1で手紙を綴っている。けれど、別れ際に彼女に「ほっといて」と言われたから、彼女に関わることを我慢して手紙を出せずにいるという。なんと鬱屈していてそれでいてなんとロマンチックなことか。そんな演出のせいか、正直フェリックスのエピソードの印象が強く残ってしまうくらいである。ハンバーグのおまけについてきたエビフライが、有頭で思いの外美味だったと言えば分かっていただけるでしょうか…。とにかく、彼の存在がこの映画の面白さを支えている。

さて、そんな「フランス映画」っぽくない「ラブ・セカンド・サイト」だが、ラストはきっちり「フランス映画」だった。端的にいうと、「うぉーーーもやもやすーるーーーーでも、「愛」よねーーーていうか、「愛」ってなんだーーー!?」である。この感覚は最初に見たフランス映画の「トリコロール」以来ずっと持っている感覚である。「フランス映画」を初めて見たのは、高校生だったかと思う。BSで見たのだけれど、それまで洋画と言えばハリウッド映画しか知らなかった私にとって、ものすごい衝撃だった。圧倒的な映像美と訳の分からなさに飲み込まれて、でも「物語」だとか、「美」だとか、「人間」だとか、「愛」だとか、なんかそれらの本質的なものの深淵に触れた気がした。

それにしても、「フランス映画」ってなんだか記憶に残りにくくって。「トリコロール」3部作も3回くらい見てるはずなのに、ストーリーが記憶にない。ということで、今年の夏は、もう一度「トリコロール」を見ようかな。こうやって、忘却と鑑賞をくり返して、人生の中で何度か見せられるのも「フランス映画」の魅力なのかもしれない。


*STORY*

高校時代に一目惚れをして結婚した、ラファエルとオリヴィア。結婚10年目を迎え、小説家を目指していたラファエルは、いまや子どもたちに人気のベストセラーSF作家に。一方、小さなピアノ教室を開きながらピアニストの頂点を目指すオリヴィアは、仕事のことばかり考えているラファエルとのすれ違いの生活に孤独を感じていた。そんなある日、我慢の限界に達したオリヴィアがラファエルに想いをぶつけると大喧嘩に…。

翌日、人気作家の特別授業として中学校を訪れたラファエルは、出会う人々の様子がおかしいことに戸惑いを覚える。そこでの自分は卓球に熱を上げるしがない中学校の教師で、オリヴィアは人気ピアニストとして活躍する、立場が逆転した<もう一つの世界>だった。そして、その世界のオリヴィアはラファエルを知らなかった…。

自分にとってオリヴィアがすべてだと気付かされたラファエル。もう一度オリヴィアと愛し合うことで元の世界に戻れると信じ、あの手この手を使って接触を試みる。二人は少しずつ心を通わせ合うものの、オリヴィアは公私共に長年連れ添ったパートナーと婚約することに。そこでラファエルは、ある重大なことに気づき、人生最大の決断を下す。それは、“恋”しか知らなかったラファエルがオリヴィアの幸せを一番に願う“愛”の決断だった…。

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