短編小説『Hurtful』 第14話 「面会者、良心の呵責、退院を前に」
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退院を一時間後に控え、黒田さんは現実界に戻っていくことが不安そうであった。
戻っても、そこには嫁と、嫁の母親が居る。そしてそこに私は居ない。黒田さんは喫煙所にこもり、最後の最後まで私と一緒に喋っていたいようだった。不安、嫁への不満、未来のプラン。
私はむげにも喫煙所を去ることができずに居た。本当に今更だが、こういう話を聞くのは私の役割じゃないとおもいながら何本もの煙草を吸っていた。
あ、とおもいついて、
「ちょっと待っててください」
黒田さんの話