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短編小説『Hurtful』

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私には心の患いがあります。これは数年前に精神科病棟に入院した時の、約一カ月間の物語です。 病棟で出会った人々と私の毎日の感情や葛藤。ちょっとした事件。笑えたり鬱だったり。愛おし…
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2020年11月の記事一覧

短編小説『Hurtful』 最終話 「さようなら、ハートフル」

その日、何人かは嬉しそうに売店でアイスなんか買って来るなどして、こっそりとパピコを分け合…

satomi
3年前
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短編小説『Hurtful』 第9話「新たな彼との出会い」

第1話前話 杏ちゃんが隔離室に入れられてから、デイルームにはひっそりとした重苦しい静けさ…

satomi
3年前
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短編小説『Hurtful』 第10話 「ダンスフロアー妄想、銀メッキピアス」

第1話はこちら前話はこちら 「俺はね、今年三十五で、嫁がいるんだけど。俺のほうは、離婚し…

satomi
3年前
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短編小説『Hurtful』 第11話 「第一の手紙、そしてコメダ珈琲」

第1話はこちら前話はこちら 部屋にはベッド、棚付きの箪笥、丸椅子が一脚あるが、机がない。…

satomi
3年前
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短編小説『Hurtful』 第12話 「外泊許可、第二の手紙、いくつかの緊迫」

第一話はこちら前話はこちら 車で病院に戻ってきたのが五時ぎりぎりだった。 私は夕食までのわ…

satomi
3年前
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短編小説『Hurtful』 第13話 「病院のお風呂場マナー」

第1話はこちら前話はこちら 私は、杏ちゃんが看護師とともに風呂場まで行く姿を、これまで一…

satomi
3年前
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短編小説『Hurtful』 第14話 「面会者、良心の呵責、退院を前に」

第1話はこちら前話はこちら 退院を一時間後に控え、黒田さんは現実界に戻っていくことが不安そうであった。 戻っても、そこには嫁と、嫁の母親が居る。そしてそこに私は居ない。黒田さんは喫煙所にこもり、最後の最後まで私と一緒に喋っていたいようだった。不安、嫁への不満、未来のプラン。 私はむげにも喫煙所を去ることができずに居た。本当に今更だが、こういう話を聞くのは私の役割じゃないとおもいながら何本もの煙草を吸っていた。 あ、とおもいついて、 「ちょっと待っててください」 黒田さんの話