「相続」の基本①:相続とは何か?

はじめに

ここ数年、いわゆる「終活」がブームになっています。
私が普段扱っている仕事の多くも相続に関係した問題です。

そこで、これから何回かに分けて、「『相続』の基本」について解説していきたいと思います。

まず、第1回目として、「『相続』とは何か」を解説します。

相続の開始原因

では、上記のような法律上の効力を発生させる「相続」の原因となる事実はどのようなものでしょうか?
相続の開始原因として、民法は次のとおり規定しています。

(相続開始の原因)
第882条 相続は、死亡によって開始する。

「そうぞくは しぼうによって かいしする」(5・7・5)
つまり、相続の発生原因は「人の死亡」ということになります。
「人の死亡」が相続の発生原因であるということ自体は、今では一般常識かもしれません。
この条文で重要なことは、相続の発生原因は「人の死亡のみ」であるということです。
戦前の相続制度は、いわゆる「家督相続」であり、その原因は戸主の死亡以外に「隠居」がありました。
現行民法は家督相続を廃止し、それに伴って相続原因も「人の死亡(のみ)」としたものです。

相続関係の効力

まず、相続が起きると、どのような効力が生じるのでしょうか?
相続の効力について、民法は次のとおり規定しています。

(相続の一般的効力)
第896条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。

相続される人を「被相続人」、相続する人を「相続人」と呼びます。
つまり、原則として、相続人は、被相続人の有する財産に関する一切の権利と義務を引き継ぐということになります。
その結果、法律上は「相続人=被相続人」として扱われることになります。

例えば、被相続人が誰かにお金を貸していれば、相続人は貸金債権を引き継ぐことになりますし、反対に、被相続人が誰かからお金を借りていれば、相続人は借入金債務を引き継ぐということになります。

これに対して、「被相続人の一身に専属したもの」は相続人に引き継がれません。
例えば、音楽家が演奏会で演奏をする債務というのは、その音楽家にしかできないことですから、一身に専属する義務として、相続の対象にはなりません(相続人が代わって演奏する義務はありません)。

おわりに

今回は、「相続の基本①」ということで、相続の発生原因と相続の一般的な効果について解説しました。
次回は、「相続の基本②」として、「誰が相続人になるのか?」について、解説したいと思います。


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