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旅する手しごと〜「持ち運べる食器+α」〜

多拠点生活をする中で、あったらいいなを実現するプロジェクト「旅する工芸品シリーズ」の第1弾のテーマは『食』。和洋中どのシーンでも使える箸・フォーク・スプーンに加え、地域のお酒を味わえるグラス(コップ)がセットになった持ち運べる食器を、温かみのある木材で作れないか。

そんな願いを実現してくれたのが、栃木県の伝統工芸士で指物師のクロサキ工芸の黒崎啓弘さんです。

指物とは、釘などの接合道具や接着剤などの接合材料を使わずに、木と木のみを組み合わせてつくられたものを称する家具や建具、調度品を称します。
木と木のみを組み合わせて作られる独特の技法そのものも指物と呼ばれます。大変緻密な技であり、黒崎さんはその道を極めた作り手です。
クロサキ工芸には今、黒崎啓弘さんを含めて3名の伝統工芸士が在籍しており、今回のプロジェクトを快く引き受けてくださいました。

世界に1点!職人が選ぶ手しごと

カトラリーと旅先の地酒を楽しめるお猪口(コップ)が1つのセットになって持ち運ぶことができる「旅する食器」は、長さ18cmでカトラリーを含めても計170〜190gのコンパクトサイズで、小型のバックパックやスーツケースに入れても邪魔になりません。

全て手作りの1点もの。カトラリーと筒(コップ)は、拭き漆で仕上げています。

筒の木材はケヤキ、山桜、日光杉の仕入れ状況を考慮し、作り手の伝統工芸士が最適なものを選んで制作します。

コンパクト収納が魅力の食器セットです

スプーン・フォーク・箸の木材は、御蔵島産の柘植を用いて、こちらも拭き漆で丁寧に一つ一つ仕上げています。

カトラリーはミニサイズですが、機能的です

カトラリーも全て工芸士が手作りしたものです。持ち運びに適したミニサイズですが、実用的に使えます。

寄せ木と螺鈿(らでん)の文様も1点1点異なります

筒の外側にあしらった文様は、寄せ木と螺鈿(らでん)の細工を施しています。デザインも1点1点異なり、その都度作り手がモチーフを考えて制作します。写真の文様は、雪山に見立てたデザインで、白い夜光貝の部分は時間の経過で次第に明るく見えるようになります。

温かみのある木のグラス(コップ)

筒の蓋の部分はコップになっていて、ビールやお酒など、旅先の一杯を注ぎ入れることができます。程よいサイズ感なので、ゆっくり味わいながら飲むことができます。ほんのりと木の香りを楽しめるのも魅力です。

筒の内側も漆を塗っています

筒は外側も内側も漆が施されています。
漆には抗菌、抗カビ作用があるので、衛生面でも安心できます。また、漆は時間が経つほどに深い色合いとなり、長く使えば使うほど「味」が出るのも特長です。大切に使い続けて、工芸の熟す瞬間を目でも味わって欲しいと思っています。

食卓・デスクを彩るもう1つの機能

たとえどんなに忙しい時でも、食卓や個室のデスクにあったら和むもの
その1つが「花」だと思っている私は、自宅でも旅先でも、庭や野に咲く花で部屋を彩ることが心の余裕を生み出すものだと信じています。

私はクロサキ工芸さんに、「カトラリーを収納する筒の半分を花入れにできないか」と相談。茶室に飾る竹製の花入をイメージし、旅する食器にアイテムを加えてもらいました。

筒の部分は、一輪挿しとして使える花入に変身!

庭で咲いた花を個室に飾ってくれる、粋な老舗旅館もありますが、どちらかというと、そういった光景を旅先で見出すのは珍しい方ではないでしょうか。また、他者が生ける花と、自分が生ける花では、感情の入り方も異なると思います。

どんなに美しい家具やインテリアが並んでいても、なんとなく無機質で味気なさを感じてしまうことはありませんか。まあ、それはそれでスタンダードな空間として、特に違和感ない人もいることでしょう。

ただ、四季が濃く豊かな日本を旅するからこそ、その時節のその地域に咲く花を愛でながら食を楽しみ、テレワークやリモートワークの忙しなさのいっときの清涼剤として、「花」は温かな命と風情を吹き込んでくれるものです。そのいっときを、多くの旅人に味わってほしいと思っています。

お花の丈に合わせ、筒の上下どちらかを花入に

大きな花瓶ではなく、木のこじんまりとした一輪挿しの花入れであれば、小さなテーブルやデスクにも置けますし、管理もしやすいです。

この「旅する食器」を手にしたら、実用的な食事シーンだけではなく、もう一歩ゆとりを感じる生け花の世界も体験・実践してほしいです。

伝統工芸士・黒崎さんプロフィール

栃木県の伝統工芸士・黒崎哲弘さん

栃木県宇都宮市の工房「クロサキ工芸」代表の黒崎啓弘さんは、同工房の2代目。先代が昭和12年(1937年)に東京都荒川区で木工所を営みながら覚えた「指物」を主とし、昭和20年3月9日「東京大空襲」で被災したため、 栃木県に疎開後、昭和29年(1954年)に栃木県宇都宮市にて始めた工房です。

クロサキ工芸は日本の伝統的な和家具から、洋家具・建具等、さまざまなスタイルの製品を制作しています。素材やアクセント、仕上げを組み合わせ、お客様のライフスタイルやご要望に合わせたオリジナル家具を提案しています。また、家具づくりの他に「木工教室」や「木を活かす活動」 など、木を通してたくさんの人々と繋がりが持てるような活動も行っています。

仕事を通して山の木の大切さ、里山の雑木林を守ることなど、木を活かす活動を『雑木』と言う名称で展開しています。

黒崎さんの作品の特徴でもある「杢彩」をモチーフにした容器
家具以外にもも指物技術で、楽器も含む多種多様な木工製品をオーダーメイドします

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こちらの商品は、ゲストハウス「宮ヶ瀬手しごとの家」に滞在する人限定で、日用使いとして提供します。また、2022年8月末までのクラウドファンディングの返礼品でもあるので、自分用に世界に1点の手しごと品を手に入れたいと思っている旅人ユーザーに使ってもらえると嬉しいです。


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