人工的な揺り籠たる電車は僕に悪夢を見せない。
父いわく、僕は夜泣きしても車に乗せて近所をドライブするとぐっすり寝る子だったらしい。
当時の感覚は覚えていないけれど、車の揺れや静かな走行音が僕を落ち着かせてくれるのは、今も実感するところだった。この感覚を改めて実感したのは、高校生になった時だった。
僕は高校への通学の内訳は自転車で三十分、電車で四十分、徒歩で十分。この電車の四十分が僕にとって、最も貴重で有意義な時間だった。本を読んだり、音楽を聞いたり、考えごとをしたり。一人でじっくりカルチャーや日々の悩みと向き合え