【小説】西日の中でワルツを踊れ⑭ 彼は死なない、という無慈悲なまでの信頼。
前回
紗雪の話が終わったのが分かって、ぼくは何を言えば良いのか想像もできなかった。
一度、口を開いたが、うめき声さえ出てこなかった。そんなぼくを見て紗雪は柔らかい笑みを浮かべて言った。
「ごめんなさい。突然、こんなに長い話を。私、そこの自販機で何か飲み物を買ってきますね」
言うと紗雪は立ち上がって、近くの自販機へと歩き出した。
ぼくはしばらく紗雪の後ろ姿を見てから、上を向いた。雲が太陽を隠した空だった。ぼくは目を瞑って考えがまとまるのを待った。
死者が見える、