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元地方紙記者が記事を書きまくって考えたこと①「新聞記者は書く仕事?」

元・地方紙記者がひたすら地域を歩き、聞き、書きまくる中で気付いたことを綴るシリーズ。これから不定期に少しずつアップしていきます。初回は「新聞記者は書く仕事?」です。

Q新聞記者は書く仕事?

と聞かれれば、私の答えはNOだ。「書く」ことは、新聞記者の仕事のほんの一部であって、本質はそこにはない。
新聞記者とは、「聞く」仕事である。

駆け出しのころ、取材先で「文学部卒ですか?」と聞かれることが多く、正直戸惑った。農学部だと言うと、「えっ」という顔をされる。これは、新聞記者が「書く」仕事だと思われているからだろう。

私の肌感覚では、同業者の出身学部は社会学系が多かった印象だが、もちろん理系もいるし、教育学部や法学部など多岐にわたる。あまり農学系の人に会ったことはないが…。

もちろん、書くことも大事な要素で、苦労せず書けることは新聞記者に必須の条件だ。なぜなら、常に締め切りに追われ、1分1秒を争う世界にいるからだ。先輩が言った「呼吸するように」記事を書けなければ、仕事にならない。

書く能力に頼る危うさ

私が「新聞記者は書く仕事」?に対し、NO!とはっきり言うのは、自分の「書く」能力で何とかしようと思うのはめちゃくちゃマズいからだ。書くことはまったくの小手先である。事前調査、アポ取り、取材、情報の整理、再取材…記事を書くまでには多くの工程があり、書くことは最後の一部分に過ぎない。

うまく書けないのは、自分の筆力に問題があるのではない。原因の多くは、取材不足にある。分からないこと、腑に落ちないことが残っているから書けないだけだ。

取材の基本は「話を聞くこと」

そして、取材の基本とは、「聞く」ことである。

「聞く」には、「質問する」と「耳を傾ける」の両方があると思う。鋭く切り込む質問も大事だが、私はひたすら相手の話を聞く姿勢こそが大切だと考えている。

質問してもはぐらかされたり、相手の話がすぐ脱線して、何の話だったっけ…??と分からなくなったりすることもある。そういうときは焦るし、ぐったり疲れるけれど、それでもひたすら聞き続けること。話したい事をまず話してもらうこと。そこでじっと待てるかどうかがいい取材をするための鍵になる。

だいたい、自分の聞きたいことだけ聞こうなんて虫が良すぎるのだ。

集中して相手の話を聞くのは、ものすごく濃密な時間で、私の体力では2時間が限度だ。終わると疲れがどっと押し寄せる。でもそれは、爽快感のある疲れで、またこういう経験がしたいと思わせるものだ。だからこれからも、まちを歩き、人の話を聞き続ける。

追伸:新聞記者を志望する方へ。採用面接で「あなたは自分が話をするのと、人の話を聞くのとどちらが好きですか?」と聞かれたら、「人の話を聞くこと」と答えてくださいね。私はそこで失敗しました。この話はまたいつか。

What is necessary for newspaper journalists?

In my opinion, listening skill is more necessary than writing skill. They must be able to write articles smoothly and quickly. However, it is so risky to depend on their writing skill.  it is impossible to write a proper article by such a superficial measure. We have to improve our listening skills, especially perseverance.


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