金魚がまってる

お風呂はいるのめんどくさい

これが、基本的な私。
けれど最近それが、変わってきている。
あいつらが、まってる……

中学生の時から、お風呂に入る前はめんどくさくて、立ったまま、茶の間にある電子ピアノにひじをついてもたれかかり、ずっとテレビ見ていた。
入らなきゃー入らなきゃーと思いながらも、その姿勢で小一時間くらいテレビを見るというのが、ルーティンだった。

原発事故があってからは、外に行ったら帰ってからすぐにお風呂に入る習慣が身についたけれど、休みの日はやっぱり入らないまま過ごしてしまう。
そんな私が、良いものを手に入れた。それは、金魚である。

よくある、ビニール製のお風呂に浮かべるアヒル。それの、金魚バージョンだ。50匹ある。

それを、私は迷いに迷って買った。
残り一つしかなくって、売れたらあきらめよう……とか、誕生日になったら買おう……とか、給料日が来たら買おう……とか散々さんざん迷って、2ヶ月くらい経ったけれど、だれも買っていかなかったので、私が買いました。

そしてお湯に浮かべました。

なにをするわけでもないんだけれど、一緒に入っているだけで、楽しい。テンションがあがる。いつもだったら、一分もしないうちに湯船から上がってしまうのだけれど、金魚と一緒だと、5分位は入れる。そして、乾かすために、全部すくって、お風呂のフタの上に広げる。その間も湯船に入っていることになるので、計7分位は、入っていることになる。最初はめんどくさいかな、と思ったけど、それも楽しい。金魚すくいしてるみたい。たまに、全部すくったと思っていたら、一個だけ残っていたりして、それもかわいい。ある日、フタをあけたら、一匹だけ浮いていたことがあった。だっちゃったじゃないの。

こっそりと、父が入る前に、浮かべておいたこともあった。父は、上がってきても何も言わないので、「どうだった?金魚風呂」と聞いたら、「ゾッとした」と言っていた。
母にも同じことをしたら、「50匹もいたよ」と言っていた。全部数えたらしい。

そんなこんなで、私は金魚風呂ライフを楽しんでいる。お風呂に入るのがめんどうな時、ぼんやりと頭の中に、赤いあやつらの姿が浮かぶ。

金魚が、待っていてくれる。私のことを。お店にいる時から、ずっとずっと、私を待っているのだ。