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『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』解説※ネタバレ有

2001年に1作目が公開され、たちまち人気シリーズとなった「ワイルド・スピード」シリーズ。2019年にはついにスピンオフ作品『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』が公開されました。人気キャラクターの単独映画である本作は、これまでのシリーズよりもアクション要素が多く、オマージュ等のコメディ要素が多いのも特徴的です。

※ネタバレが含まれます。まだご覧になっていない方はご注意ください


『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』とは


「ワイルド・スピード」シリーズ

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画像出典:映画「ワイルド・スピード」公式Facebook

ポール・ウォーカー演じるブライアンとヴィン・ディーゼル演じるドミニクが主役の「ワイルド・スピード」シリーズは、カーアクションが特徴的な作品です。危険なストリート・レースや死と隣り合わせのアクション等、手に汗握る展開が続きます!また、シリーズ全体を通して「家族」が共通テーマです。血のつながりだけでなく、友情が深まり仲間がファミリー(家族)となります。仲間のために命をかける展開は王道ストーリーだからこそ、誰もが夢中になれるのでしょう。
本作は「ワイルド・スピード」シリーズに登場する、元アメリカ外交保安部捜査官のホブスとイギリス特殊部隊の元隊員ショウが主人公です。「ワイルド・スピード」シリーズ初のスピンオフ作品ということで公開前から注目をあびていました。シリーズの中でも特に仲の悪い2人がどう共闘するのか、どんなカーアクションが見られるのか、目が離せません。


デヴィッド・リーチ監督

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画像出典:映画『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』公式Facebook

本作の監督を務めたのは、『アドミック・ブロンド』や『デッドプール2』の監督としても有名なデヴィッド・リーチ監督。アクション作品を得意とする監督です。それもそのはず、デヴィッド・リーチ監督は元々スタントマンとして活動していました。また、アクション振付師として『ウルヴァリン:X-MEN ZERO』などのアクション作品に携わっていたのです。本作は、そんなデヴィッド・リーチ監督だからこそ!というアクションがたくさん見られます。
アクションシーンに説得力を持たせるために、できるだけ俳優にアクションをさせているのです!また、撮影の仕方にも監督のこだわりが見て取れます。殴る瞬間のカメラのブレは、まるで見ている私たちも殴られたような大迫力!雨の中殴り合うシーンでは、実際に室内で「雨」を降らせています。CGで後から「雨」を追加するのではなく、わざわざ大がかりなセットを作って「雨」を降らせたのは、光の反射・水の跳ね具合によってアクションに迫力と説得力を生むためです。このように、本作はデヴィッド・リーチ監督のこだわりが詰まった映画になっています。


『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』あらすじ

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画像出典:映画『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』公式Facebook
https://www.facebook.com/HobbsAndShaw/

前作『ワイルド・スピード ICE BREAK』から2年後。アメリカ外交保安部の捜査官であったルーク・ホブス(ドウェイン・ジョンソン)と、イギリス軍特殊部隊やMI6で活躍していたデッカード・ショウ(ジェイソン・ステイサム)はCIAからある任務を要請されます。MI6のメンバーの1人が政府を裏切り、「スノーフレーク」という危険なウィルスを持ち去ったというのです。しかもその裏切ったメンバーというのがデッカード・ショウの妹であるハッティ・ショウ(ヴァネッサ・カービー)。
本当にハッティが犯人なのか、何が起きているのか、真相を突き止めるべく2人は捜査に乗り出します。しかし、ホブスとショウは水と油のように正反対の人物です。顔を合わせれば、いつ喧嘩が始まるか分からない一触即発の状態になってしまいます。
そんな2人の前に現れたのがテロ組織「エティオン」のメンバー、ブリクストン(イドリス・エルバ)。人間離れしたパワーでホブスとショウを圧倒します。「エティオン」もハッティが持つ「スノーフレーク」を奪うことが目的のようです。テロリストよりも先にハッティを見つけなければ……。ホブスとショウのデコボココンビが、時に協力して時に殴り合いながら捜査に乗り出します!


『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』キャスト

ドウェイン・ジョンソン

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画像出典:映画『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』公式Facebook

正義感が強く、誰よりも娘を愛する熱い男ホブスを演じたのは、ロック様ことドウェイン・ジョンソン。このロック様(THE ROCK)という愛称はリングネームです。1995年からプロレスラーとして活動し、その身体能力の高さやマイクパフォーマンスで人気を博していました。2001年に映画『ハムナプトラ2/黄金のピラミッド』でスコーピオン・キングを演じたことをきっかけに俳優としても活動を始めます。
服の上からでも分かる素晴らしい筋肉!俳優としてもこの筋肉を活かした役を演じていました。ヒーローとして頼れる味方を演じたり、悪役として絶対的なパワーを見せつけたり……。最近ではコミカルで人を笑わせるような、中身も魅力的な役を多く演じるようになりました。
本作のホブスもそんなキャラクターです。強くて優しいヒーロー。その一方で、仲が悪いショウには怒ったり殴ったりと、かなり感情的な一面も見せます。ドウェイン・ジョンソンは本作で「絶対的なヒーローでありながら、人としての弱い部分」を魅力的に演じています!


ジェイソン・ステイサム

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画像出典:映画『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』公式Facebook

「良い人」とは言い切れないが、決して「悪い人」とも言い切れない、複雑な経歴を持つショウを演じたのはジェイソン・ステイサム。アクション映画好きなら、1度はジェイソン・ステイサムの出演作品を観た事があるはず!?それぐらい多くのアクション作品に出演しています。
なぜアクション映画に数多く出演しているのか?それは彼の経歴にあります。1992年までは水泳飛び込み競技選手として活動していたのです。映画『トランスポーター』を始めとして、『メカニック:ワールドミッション』、『MEG ザ・モンスター』などの作品では美しい飛び込みや水泳シーンを見ることができます。
さらに、その運動神経を活かしたアクションシーンも印象的です。ほとんどスタントマンを使わず自分でアクションしているのだとか!本作でもクールで格好良いアクションシーンたっぷりです。ドウェイン・ジョンソンと同じようにアスリート出身のジェイソン・ステイサムだからこそ、本作での2人のアクションは息がぴったりだったのかもしれません。


ヴァネッサ・カービー

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画像出典:映画『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』公式Facebook

政府からもテロリストからも追われることになる、ショウの妹ハッティを演じたヴァネッサ・カービー。彼女は元々舞台女優として活躍していましたが、2011年の映画『ウェイストランド』の出演をきっかけに多数の映画作品に起用されます。映画『アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜』や『ベストセラー 編集者パーキンズに捧ぐ』などでは人間の繊細な心の動きを表現し、演技派女優としての地位を確立しました。
ところが、2018年の映画『ミッション:インポッシブル フォールアウト』では演技だけでなく、格好良く美しいアクションでファンを驚かせました。本作でも主演2人に負けない、しなやかで力強いアクションから目が離せません!


イドリス・エルバ

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画像出典:映画『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』公式Facebook

人間離れしたパワーと運動神経でホブスとショウを追い詰めるブリクストン役イドリス・エルバ。1995年から数々のドラマや映画に出演してきました。映画『プロメテウス』、『パシフィック・リム』、『スター・トレック BEYOND』など大作への出演も多い俳優です。最近では『ズートピア』、『ファインディング・ドリー』、ゲーム『コール オブ デューティ モダン・ウォーフェア3』などで声優としても活躍しています。
ヒーロー映画好きなら『マイティ・ソー』シリーズに登場する、アズガルドの番人ヘイムダル役の強い戦士の姿が印象に残っているのではないでしょうか。本作でも強い戦士としての姿を見ることが出来ますが、今回は悪役。弱点がまるでない絶対的な「壁」として立ちはだかります。目的のためなら何でもする残忍な一面も……。恐ろしくも、その強さに見惚れてしまいます!


エイザ・ゴンザレス

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画像出典:エイザ・ゴンザレス公式Facebook

セクシーで魅力的な協力者マダムM役エイザ・ゴンザレス。2007年16歳の時にデビューして以来、テレビや映画で活躍しています。2017年の映画『ベイビー・ドライバー』では母親のような優しさと、愛する人のためなら何でもする狂気を併せ持つ女性”ダーリン”を演じました。そのエイザ・ゴンザレスのセクシーさ!危険な匂いさせつつ、人々を虜にしてしまう彼女に魅了された方も多いのでは?
本作では犯罪組織から武器を奪って売るディーラーの役です。屈強な男たちを縛りあげるマダムMが美しく格好良い!ブリクストンを前にしても、ひるむ事なく堂々と交渉します。本作に登場した機械の分析を使えば、マダムMが嘘をついているかどうか分かりそうなものですが、騙し通してしまうのはマダムMの精神的な強さゆえでしょうか。見た目だけでなく、中身の強さも素敵な人物です。


ケヴィン・ハート

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画像出典:ケヴィン・ハート公式Facebook

突然ホブスとショウの前に現れた航空保安官ディンクリーを演じたケヴィン・ハート。アクション俳優ではなく、アメリカのコメディ俳優です。
ドウェイン・ジョンソンとの共演が多い俳優でもあります。2016年の映画『セントラル・インテリジェンス』でW主演を務めて以来、『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』、『ジュマンジ/ネクスト・レベル』と共演を重ねています。本作のケヴィン・ハート起用のきっかけもドウェイン・ジョンソンの働きがあったからだとか。
プライベートでも仲の良い2人は、本作でも息ピッタリです。また、ケヴィン・ハート1人で喋り続けるシーンでは、コメディアンとしの力量を感じる必見の場面!ちょい役とは思えない存在感があります。


ライアン・レイノルズ

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画像出典:ライアン・レイノルズ公式Facebook

CIAエージェント、ロック役ライアン・レイノルズ。映画『悪魔の棲む家』や『ハッピーボイス・キラー』などの作品で常軌を逸している人物の狂気の表情を見せたと思ったら、『ラブ・ダイアリーズ』、『あなたは私のムコになる』などでは甘いルックスと優しいキャラクターを演じ人々を魅了してきました。
映画『ブレイド3』、『ウルヴァリン: X-MEN ZERO』、『グリーン・ランタン』、『ゴースト・エージェント/R.I.P.D.』、「デッドプール」シリーズ等アメコミヒーロー映画にも多く出演しています。軽快な口調に、いざという時には頼りになるというキャラクターが共通しています。本作で演じたロックもそんな人物です。軽口を叩いて相手をイライラさせるシーンでは思わず笑ってしまいます。でも、戦闘になったらすさまじいパワーを発揮するようで……?


『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』解説


【解説①】「家族」のストーリー

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画像出典:映画「ワイルド・スピード」シリーズ公式Facebook

「ワイルド・スピード」シリーズでは全作品を通して「家族」がテーマになっています。血の繋がりでの「家族」、マフィアや犯罪組織という意味での「ファミリー」、そしてかけがえのない仲間という意味の「家族」。この3つの意味の「家族」が「ワイルド・スピード」シリーズで重要になります。
「ワイルド・スピード」シリーズ1作目では主人公ドミニク(ヴィン・ディーゼル)が仲間を組織して犯罪を行っていました。もう一人の主人公ブライアン(ポール・ウォーカー)と関わっていくうちに、2人が仲間「家族」になっていきます。犯罪を通して「家族」となっていた登場人物たちが、心を通わせて「家族」となるストーリーは感動的です。
では「ワイルド・スピード」のスピンオフ作品となる本作ではどうなっているのでしょうか?ショウの疎遠になった妹、捕まっている母親の「家族」関係。ホブスは、親兄弟を思うがゆえに父親を裏切ったこと。ホブスとショウがそれぞれ、幼少期の頃の思い出を共有したりや誤解を解いたりすることで「家族」を取り戻すストーリーはまさに「ファミリー」映画です!


【解説②】数々のパロディ

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画像出典:映画『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』公式Facebook

本作は他の映画や人のパロディがいっぱいです!
例えば、ロック役ライアン・レイノルズ登場シーン。ロック様ことドウェイン・ジョンソンが「彼はロックだ」と娘に紹介します。一瞬冗談かと思って笑ってしまいそうになります!その後ロックはホブスとどれだけ仲が良いのか、お揃いのネックレスやタトゥーを見せて証明しようとします。ライアン・レイノルズが主演を務めた映画『あなたは私のムコになる』で、「僕たちは本当に恋人なんです!」と移民局でまくし立てているシーンのようです。ライアン・レイノルズの早口で冗談をまくし立てているこのシーンは「デッドプール」を連想させます。デヴィッド・リーチ監督とライアン・レイノルズのタッグ作品となった『デッドプール2』の影響は少なからずあるでしょう。

ディンクリー役ケヴィン・ハートの場面では、ディンクリーが「(ホブスとショウの)仲間に入れてくれ!」と懇願しています。『セントラル・インテリジェンス』では「お願いだから俺を巻き込むな!」とCIA役のドウェイン・ジョンソンに言っていましたが、本作では立場が真逆に。ケヴィン・ハートとドウェイン・ジョンソンの作品が好きならたまらないシーンです。

ブリクストンが「黒いスーパーマンだ!」と言うシーン。言わずもがな、『スーパーマン』のパロディです。実はブリクストン役イドリス・エルバのアドリブが採用されています。悪役なのに「ヒーロー」を語るなんてと思ってしまいますが、彼らは自分たちが悪者だとは夢にも思っていません。「人類のために」と彼らも正義のために戦っています。その歪んだ思想と皮肉が混じった最高のアドリブです。

ショウの秘密基地に入るシーンでは、ホブスが「お前向きの小さい車があるな」とバカにします。ショウは「ああ、ミニを使った大作戦があってな」と返します。これはもちろん、ショウ役ジェイソン・ステイサムが出演した映画『ミニミニ大作戦』のことです。スゴ腕ドライブテクニックが必要な作戦がみどころなのですが、本作では「へぼ運転手が必要ならお前を呼んだのにな」と格好良く皮肉を言っているのに痺れます!

他にも数えきれない程の小ネタ、パロディがあります。見直してみると、また新しい発見ができるかもしれません。


【解説③】犬猿のバディ

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画像出典:映画『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』公式Facebook

デヴィッド・リーチ監督はホブスとショウの2人を徹底的に正反対に描いています。元々いがみ合っている2人でしたが、本作では対照的な部分を強調しています。

例えば、映画冒頭の2人の日常の部分。ホブスは基本的に薄着で、食事も生活習慣もストイックです。乗る車もホブスの体格のようにガッシリした車フォードのブロンコ。
対してショウは、パジャマも普段着もきちっと着こなしていました。食事も生活習慣もなんだかおしゃれです。車はスマートで美しいフォルムのマクラーレン720S。

戦い方も、2人は正反対です。ホブスは己の肉体を使ってパワフルに攻撃します。敵のボスには肉体的に攻撃して弱らせます。対してショウはその場所にあるものを使って器用に敵を殲滅するのが特徴です。そして、敵のボスを精神的に追い詰めます。

全く2人は違うタイプの人間ですが、似た者同士でもあるようです。仕事に対する考えや精神的な部分、アプローチの仕方が似ています。2人は違うタイプだから犬猿の仲なのではなく、似ているから喧嘩してしまうのです。
どんな時でもまるで兄弟のように喧嘩する2人ですが、窮地に追い込まれると息がぴったりです。2人はお互いのことが嫌いですが、実力だけは認め合っています。だからこそ、ピンチの時には自分の背中を預けるのです。その瞬間の熱さがたまりません!これこそバディ映画です。


【解説④】残された謎……

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画像出典:映画『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』公式Facebook

1つの作品としてスッキリまとまっている本作。しかし、大きな謎が一つ残されています。それは「黒幕の正体」。ブリクストンを改造し操っていたエティオンのボスです。映画の中では顔も名前も明かされず、機械で加工された声だけが流れていました。こんな残酷なことをする人物は何者なのでしょうか?エンドクレジットでは謎の人物の役者の名前は「チャンプ・ナイテンゲール」となっていました。

実はこの「チャンプ・ナイテンゲール」がライアン・レイノルズ演じるロックなのではないか?と噂されています。2019年6月23日にライアン・レイノルズは自身のTwitterで意味深なツイートをしています。ライアン・レイノルズがプロデュースした商品のジンに自分でこっそりレビューを付けた、という内容です。問題はレビューをした時に騙った偽名。「チャンプ・ナイテンゲール」の名前でレビューを投稿しているのです。もしかしてライアン・レイノルズが「チャンプ・ナイテンゲール」なのでしょうか?

本作のラストで、ロックがブリクストンと同じようにレンガで人を殺しているのも伏線のよう感じられます。強化された人間であるブリクストンと同じことが出来るということは、やはりロックこそが黒幕なのかも……。
しかし、「悪の組織のリーダーも100点をつける程、僕のジンは美味しい」というジョークなのかもしれません。ロックはシリアスなキャラクターではなく、コミカルな人物として描かれています。敵なのか味方なのか……予想できない不思議な人物です。


まとめ


「ワイルド・スピード」シリーズ初のスピンオフ作品『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』のネタバレ解説をしてきました。魅力あふれるキャラクターはもちろんのこと、手に汗握るアクション、夢中になるコメディシーンがたっぷりの作品です。これまでのシリーズとは違い、カーアクションよりも肉体のアクションが多い映画ですが、「家族」というテーマは「ワイルド・スピード」シリーズとの繋がりを感じさせます。
まだまだ残された謎もあり、これからのホブスとショウの活躍に注目が集まります!

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