SINIC理論 著者:中間真一

 🐸2022年9月30日発行の書籍です。

(p.048)”SINIC”とは何か?
Seed-Innovation and Need-Impetus Cyclic Evolution of technological innovationの頭文字を取ったものである。オムロンでは、これを「サイニック理論」と読んで現在は使っている。
この"SINIC"の意味を日本語で表現すると、「科学が技術の種となり、技術は社会を革新する。そして、社会は技術に新たなニーズを与え、技術はその社会的価値によって、さらなる科学の発展に刺激を与える。そのような、円環的な技術革新の進化」となる。つまり、科学・技術・社会の三者の相互の影響による、技術革新の円環的進化を、未来予測理論として体系化したものである。

🐸他に気になったところをピックアップ。

従来の経済の変数、それは、これまでの社会発展レベルの指標のとおり、お金に換算することができるエコノミック・キャピタルであった。そのことは、当初のSINIC理論が、社会発展レベルの指標を一人当たりGNPとしていることにも合致している。そして、具体的には金融資産と有形資産の二つだけに限られていた。しかし、今後は人間の幸福度や心の成長度に換算される「ヒューマン・ファンダメンタルズ・キャピタル」や、周囲の人や仲間からの共感の質や量に換算することができる「ソーシャルキャピタル」もそれぞれ変数となり、お金で換算しにくい、非財務かつ個人的、主観的な変数を取り入れていく必要に迫られることになる。第3章で説明したSINIC理論アップデートの一つは、まさにそこに注目した修正だった。(略)
共感資本社会としての自律社会の経済概念のアップデートに伴い、ベーシック・インカム等の経済的な生活インフラや、共感価値評価を伴う地域通貨型の取引の導入は、これから加速されていくだろう。ベーシックな経済インフラは、見返りを求めない投資行動として、新たな経済発展のベースをなし、共感価値の評価材としての地域通貨は、主観的な価値基準を組み込んだ交換手段として、なんらかの可視化がされて、社会に実装されていくことになる。

(p.200)ビジョナリーや、スタートアップ経営者は、もちろん自らの未来観を持っている。それでは、なぜSINIC理論に、SINIC理論のどこに共感や関心を持つのかを尋ねると、それは、最適化社会や自律社会のイメージといった未来シナリオへの関心というよりも、未来予測理論の本質的な部分である「理論体系」に向けられていた。第2章で説明した理論の部分である。これが、ビジョナリーの彼らにとって、いかなる価値があるのか。それは、自らの未来観(未来ビジョン)が独りよがりなものではなく、理論的にも成立していて、さらに、その理論とそれに基づくシナリオが、半世紀以上もの間、オムロンの企業活動の中で羅針盤として使われてきたという事実、実績、これが、ビジョナリーやスタートアップ経営者の間に、かなり共通する共感ポイントだったのである。未来シナリオではなく、理論への共感と関心だった。

(p.205)やはり、これからの自律社会は、大都市でダイナミックに、テクノロジー主導で進められる自律社会づくりよりも、中心から遠く離れた周縁部で、これまで周回遅れの欠落や障害と思われていた要素の再評価によって立ち上がってくると考える方が、妥当性の高いものになってくる。そして、周縁の農山村から、中心の大都市に向かって、そのような動きが広がっていく。そこでは、従来の地方社会とは遠い、以下のような新しい特徴も持ち合わせたものとして、共感経済圏を成立させるだろう。
・シェアの文化
・コミュニティの複属化
・インフルエンサーの民主化
そして、そういう価値観やマインドを無理なく持てるのは、まだまだ移動の自由度も持っている若い世代が中心となって高まるはずだ。自律社会は、地方と若い世代、空間的にも人間的にも、今の中心ではなく、今の周縁から立ち上がる。そして、次第に大都市や老若男女を巻き込んで、自律社会の大きな潮流になると予測できる。

🐸自律社会は2025年から2032年。もう直ぐです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?