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YouTubeを知らない子供たち〜みんなやっぱ 「エディ」なんだよな part3「最終回」

ということで、エディ・ヴァン・ヘイレンの凄いところを思いつくままに書きとめているのですが、最後はエディの最大の魅力をお話ししたいと思います!!それではいってみよう!

今回の話題はスバリ、エディの演奏力についての話になります。知っている人も多いと思うけど、ほんとエディのライブでの圧倒的な安定感のギタープレイにはいつも惚れ惚れとしてしまいます。タッピングハーモニクス(指板の任意のフレットを右手人差し指で叩いて出すハーモニクス奏法。基本は左手で抑えたフレットの12フレット、7フレット、5フレット上などを叩く)なんていつもいつもあんなに綺麗には出ないもんですよ。

さて、ライブでの完成度の高い演奏はもう周知の事実ですが、実はスタジオ録音(レコード、CDとして残されている作品)でもエディのその圧倒的な演奏力は遺憾無く発揮されているんですよ。その代表作とも言える1978年に発表されたヴァン・ヘイレンのデビューアルバム『炎の導火線』(原題:Van Halen)を詳しく紐解いてみましょう。

このアルバムで僕が一番好きなところはエディのギターの音なんですね。この生々しく、破壊的で、切れ味鋭く、繊細な音色!デビューアルバムにして最高のギターサウンドをエディは聞かせてくれています。これにはこのアルバムのプロデューサーのテッド・テンプルマンの存在を忘れてはいけません。

彼は1977年にウェスト・ハイウッドのクラブでヴァン・ヘイレンのライヴを見るやいなや、その圧倒的なエディのギターテクニックに打ちのめされ、翌日にはレーベルのトップを呼び寄せ、その場でヴァン・ヘイレンと契約させたそうです。それほど衝撃的だったエディのギターサウンドの魅力を100%伝えるためにはどうすれば良いかをテッド・テンプルマンはあれこれ考え抜いたのではと思います。

実はこの1年前、ヴァン・ヘイレンはあのKISSのジーン・シモンズプロデュースの元、レコード会社との契約を進めようとしたのですが、全くうまくいかなかったそうです。その時レコーディングしたデモ音源もいろんな形で聞くことができます。

この1976年音源ではバッキングギターが左右で2本入っていて、ギターソロは真ん中で鳴っています。想像するに少なくともバッキングギター1本とソロは別録音されたものだと思います。この時代ならこの構成で録音することが王道と思われます。が、この音源、確かに全体の音の厚みはあるのですが、何か普通の曲というか、イマイチバンドの魅力が伝わって来ないんですね。もちろんプリプロダクションなので音質のクオリティにも差があるし、一概に比べるべきではないかもしれませんが、これではエディの魅力はなかなか伝わらないのかなと思います。ましてや現代のように多角的に溢れる情報ソースがあるわけでもないので、この音源だけでバンドの魅力を伝えることは困難だったのかなぁ、と思います。

だからこそVAN HALENにとって、テッド・テンプルマンはまさに救世主!よく見つけてくれた。テッドありがとう!と声を大にして言いたいのです。しかも彼はバンドの魅力、本質を鋭く理解していた最重要人物だと思います。最初はクラブでの演奏に圧倒され、エディというギタリストに惚れ込んだところから始まり、その後、契約、早速スタジオでデモを録音したそうです。1日に30曲(その時のバンドの持ち曲全て)録音したとか・・・(マジ?)その作業を通して、このエディだけではないバンドの魅力がどうすれば一番良い形で伝えることができるのかを見つけていったのだと思います。

その答えがデビューアルバム『炎の導火線』(原題:Van Halen)なのです。このアルバムの僕なりの聞きどころはやっぱりエディのギターです。ドラム、ベースは中央で、ギターが左寄りで鳴っているのですが、これらは全曲全て一発録りだそうです。(ヴォーカルも多くの曲で同時に録音したそうです。)つまり、このバンドはエディだけではなく、ドラムのアレックス、ベースのアンソニー、そしてヴォーカルのデイヴも演奏力がいかに高いかの証明だと思います。しかもエディはバッキングだけでなくギターソロも込みで全部一発で弾いています。これは実はできそうでできないですよ。マジで!一度でも自分で曲作って宅録した経験のある人なら分かると思いますが、1曲通して頭から、最後までノーミスで弾くのって相当練習して集中していないと出来ないですよね?しかもソロ込みで!もちろんスタジオミュージシャン的な方なら当たり前に出来るのかもしれませんが、僕みたいな中途半端にギターを弾いてきた人間にはそんな神業は到底できません(泣) だから、今のDAWのような宅録環境にはほんと感謝しかありません。100回チャレンジして1回だけ弾けたフレーズを残すことができるわけですから。まぁ、それはともかく、アルバム『炎の導火線』の3曲目「You Really Got Me」、5曲目「I'm The One」、7曲目「Atomic Punk」、9曲目「Little Dreamer」、11曲目「On Fire」は追加のギタートラックなしのまさに一発演奏となっています!他の曲も必要最小限の追加トラックがほんの部分的に右で鳴っているだけで、基本はドラム、ベース、ギターの一発が曲の軸になっています。この辺りのプロデュース判断もテッド様ありがとう!という言葉しかありません。

またエディは1曲の中でも様々な音色を聴かせてくれます。ヴォリュームを絞ったクリーントーン、フレーズの一部としてかけるフランジャー、ディレイ、フェイザー、これらを演奏しながら瞬時に切り替えて音楽的なアクセントを付けています。

ギターのリフの作り方も非常にバラエティーに富んだアイディアが盛りだくさんです。当時のハードロック系の曲はほぼギターの4〜6弦中心のパワーコードと低音の開放弦の組み合わせという手法が王道だったと思いますが、このアルバムでエディが奏でるリフは単なるパワーコードに止まらず、ローコード(いわゆるフォークギターで使うようなコード)のアルペジオをミュートで弾いてみたり、単音とパワーコードを非常にうまく組み合わせたり、ハーモニクスやアーミングを絡めたフレーズ、ディレイ音もフレーズの一部としてみたり、カッティングノイズにフェイザーをかけてフレーズにしたりと、とにかく音楽的にも、エフェクト的にも音色的にもそれまでに聞いたことのないようなサウンドが、次から次へと飛び出してくるのです。今でこそ当たり前になっているギターの様々な奏法がこのアルバムには詰め込まれているのです。このVAN HALENの登場によって、その後のハードロック、ヘヴィメタルの音楽的な方向性は決定づけられたと言っても過言ではないでしょう。

しかも、そんなテクニック的にも決して簡単ではない曲を頭からエンディングまで難なく弾いてしまうのです。その演奏力、クオリティはちょっと桁違いですね!

このアルバムに関してテッド・テンプルマンもRollingStone誌のインタビューでレコーディングの様子をこう言っています。

『赤いライトが灯るたびに、彼は身を固く してたよ。緊張してたんだろうね。でも、彼がミステイクを出したことは一度もなく、プレイはいつも完璧だった。ほぼ全ての曲で、 彼はギターソロを一発で録った。コード演奏からノンストップでソロに入り、またコードに戻る。ソロをオーバーダビングしたことは 一度もないよ。本当に素晴らしかった。』

またギターの音色についてもテッドはこう語っています。

『彼とのレコーディングは楽で、アンプの前にマイクを立ててやるだ けでよかった。エドはすでに素晴らしいサウンドを作ってたからね。ちょっとイコライザーをかけてやったくらいだよ。』

ライブと変わらない構成で曲を作品に仕上げていくのは、一見簡単な作業のように感じるかもしれませんが、それぞれのパートの演奏力、各楽器の音色など実にダイレクトに作品の仕上がりに影響されるだけに、VAN HALENのバンドとしての演奏力の高さ、出音の質の高さはデビューアルバムから並ではなかったということだと思います。その魅力を本当に理解し、作品に仕上げて行ったテッド・テンプルマンとの出会いがなければ、あの名盤『炎の導火線』は生まれなかったかもしれませんね。


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